バイクの未来に切り込んでいくコンテンツを発信する『バイク未来総研』。
今回は、「日本自動車輸入組合(JAIA)」が主催するメディア向けの試乗会が2024年4月10日〜13日の3日間、大磯ロングビーチで行われましたので、バイク未来総研として参加してきました!
この試乗会はJAIA加盟メーカーがこの日のために話題・新車のモデルを揃え、メディアに向けて輸入バイクの理解を深める事を目的に行われており、今年で9回目を迎えた試乗会。
宮城 光所長が厳選した5台を乗り比べ、乗車後にインプレッションを語っていきますのでお楽しみに!

バイク未来総研とは

バイク業界のよりよい未来を考え、新しい価値を調査し、分析した内容を広く社会に発信することを目的に発足。
国内外のレースで輝かしい成績を挙げ、現在も多方面で活躍する宮城光氏を所長に迎え、バイクライフの楽しさやバイク王が持つバイクに関する独自データ分析などの情報発信に加え、ライダーやバイク業界がこれから描く「未来」に切り込んだコンテンツを順次発信します。

インディアンモーターサイクル「FTR SPORTS」

1台目に試乗したのはインディアンモーターサイクルの「FTR SPORTS」。
インディアンはアメリカ初のモーターサイクルカンパニーであり、FTRシリーズはアメリカで人気のフラットトラックレースのレーサーレプリカ。
「FTRスポーツ」は、2023年に発売されたモデルで、パワフルな高回転型水冷アメリカンVツインエンジンを搭載している。
RIDE COMMAND搭載の4インチタッチスクリーンは、Bluetoothテザリングが可能でクラストップレベルの機能的なデザインとなっている。
インディアン担当者の方に話を聞くと、とにかく取り回しが楽だとのこと。その秘密は重心の低さにあるという。
「このシェイプを保ちつつ、バッテリーとかレギュレーターを前に持ってきて、中に隠すのが普通であるコンピューター等、外に出しました。
そのため結果的に上に重いものが何もなく、重心が下がって取り回しがすごく楽になるため、走行中も安定します。」と語る。

シート805mm 筆者身長176cm

インディアンモーターサイクル「FTR SPORTS」宮城所長試乗&インプレッション

宮城所長「面白いです。エンジンがやっぱり気持ちいいですよね。レスポンスもいいですし、そのエンジンの鼓動感が抜群にいいです。
スーパースポーツを乗りこなしてきた人たちがこのバイクにシフトしている事も多いのではないかと思う。
見た目はしっかりとしていますが乗り心地はイメージと全く違ってエンジンも扱いやすいですね。スポーツ性能を残しながら、最新の機能もあり、新しい息吹も感じられます。サーキットでタイムを詰めるというよりも、とにかく乗って気持ちいいバイクです。」

▼インディアン「FTR SPORTS」
https://www.indianmotorcycle.co.jp/2023/ftr-sport/

トライアンフ「Daytona660」

2台目は660cc並列3気筒エンジンを搭載した、トライアンフの新型「デイトナ660」。
スーパースポーツではなく、扱いやすいロードスポーツタイプとなっており、2010年代半ばにラインナップされていたデイトナシリーズ以来の登場である。

トライアンフ担当者の方に話を伺うと「価格はかなり頑張りました」とのこと。
メーカー希望小売価格はデイトナ675R(‘2014)の158万5000円から今回のデイトナ660では108万5000円へと50万円もリーズナブルになり、ストリートメインの幅広いユーザー層へのアプローチを感じられる。

シート810mm 筆者身長176cm

トライアンフ「Daytona660」宮城所長試乗&インプレッション

宮城所長「流行のミドルクラスで、108万円からという圧倒的なコストパフォーマンスは素晴らしいと思います。トライアンフの3気筒は以前より定評もあるし、パルス感も感じられ、高速巡行もとても気持ちいい。
右、左に軽いしフレームもスチール鋼管製でしなりがあってしなやかに走れて安定性があると感じました。前傾姿勢もストリートレベルにゆるやかになり、高速道路の巡航も疲れることなく乗る事ができ、どんなユーザーでも気持ちよく快適に走れるのではないでしょうか。」

▼トライアンフDaytona660
https://www.triumphmotorcycles.jp/bikes/sport/daytona-660

ドゥカティ「Scrambler Icon」

3台目はドゥカティ「Scrambler Icon」。
スクランブラーはオフロードモデルがメインストリームであったが、近年ではファッション性を兼ね備えたモデルが出てきているのも特徴だ。

ドゥカティScrambler Iconの2023年モデルは、軽量化・電子制御化が主な変更点である。
目立つところではヘッドライトやウインカーなどをフルLED化、メーターも4.3インチTFTインストルメントパネルへ、エンジン、フレームの素材や形状も見直され4キロの軽量化に成功し、また、スロットルを電子制御化したことでライディングモードの変更が可能となった。

シート795mm 筆者身長176cm

ドゥカティ「Scrambler Icon」宮城所長試乗&インプレッション

宮城所長「新モデルとなって、よりエンジンが洗礼された感じがしますね。
ドライバビリティが良く、スロットルワークに対して忠実にエンジンがついてくるというのは非常にいい。
旧型に比べてサスペンションの作動感も上がっていますし、全てでアップデートされています。
高速巡航80kmでエンジン回転数の3500回転で走りましたが、L型2気筒のエンジンの良い特性を活かしながらよく走ってくれました。
ハンドルが高くて大きいので押し引きがすごく楽で、800ccですが大型免許の入門ライダーからベテランまで満足してもらえるバイクだと思います。」

▼ドウカティ「Scrambler」
https://www.ducati.com/jp/ja/bikes/scrambler

ピアッジオグループジャパン「Vespa GTV 300」

4台目はピアッジオグループジャパンの「Vespa GTV 300」。
ベスパ史上最高となる23.8馬力のエンジンを搭載し、取り回し角度が広く小回りがきくのはやはりベスパと言える。

メーカーの方に話を伺うと、「鉄製のボディはしっかりとしていて振動が少なく乗りやすいモデルです。
GTSというモデルをベースに70年くらい前のVESPAのデザインを採用していて、フェンダーにヘッドライトが付いています。
ハンドルがむき出しになっているこのスタイルを現代に復刻させて、なおかつスポーティーなデザインに仕上げているモデルです。」とのことだ。

シート790mm 筆者身長176cm

「VespaGTV 300」宮城所長試乗&インプレッション

宮城所長「モノコックフレームはしっかりしていて、水冷エンジン単気筒300ccは本当によく走ってくれます。スクーターというポジションですが、直進安定性は抜群です。
実は以前にVespaのGTV300をテストコースで走行した事もありますが、130kmでの巡航も可能でしたので高速道路での移動も十分に可能とする魅力があります。
パワーが加わったことで街乗りだけではなく、遠出にも使える、新しいタイプのスクーターになったと思います。」

ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN 450」

ラストの5台目はロイヤルエンフィールドのHIMALAYAN 450。
ロイヤルエンフィールド初の452ccの水冷エンジン「シェルパ 450」を搭載し、倒立式フロントフォーク、スロットルの電子制御化、「Tripper Dash」フルマップナビゲーション TFTディスプレイなどの新機能を搭載しているのが大きな特徴だ。
グーグルマップとのコラボレーションにより、フルマップナビゲーションを備えた『Tripper Dash』を初めて採用している。

シート825mm 筆者身長176cm

ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN 450」試乗&インプレッション

宮城所長「4ストロークの新型水冷エンジンは非常に鼓動感があって楽しく、乗っていてもライブ感がある面白いエンジンだなと思いました。
サスペンションの1Gストロークもたっぷり取っているので、圧縮性が良くなっているのではないかと思います。

メーター周りでは、液晶メーターがフルカラーTFTで非常に綺麗です。
また、左スイッチでは、例えばヘッドライトのハイロースイッチにパッシングスイッチ、右側のキルスイッチ、エンジンスタートスイッチを配置している操作性の良さは今までと違う発想のデザインで好感が持てました。

▼ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN 450」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000073382.html

JAIA試乗会を終えて

トップにご紹介したインディアンFTRこそ、インディアン社のトップモデルであり他比較対象車両は各メーカーの最新技術搭載車両がライバルとなる。
このセグメントを選ぶユーザーの多くは経験値豊かなライダーで、そう言った意味での厳しい目を持っているからこその作り込みを感じる仕上がりで、国産SSからの乗り換えに十分対応出来ると感じた。

一方、面白く感じたのは販売価格をより現実的に纏めた車両も多く、海外メーカーの涙ぐましい努力も感じずにはいられなかった。
トライアンフやロイヤルエンフィールドは車両性能を遥かに凌駕したユーザーに優しい販売価格の設定で合ったと考る。

また、ベスパも伝統のスチールモノコックボディー継承し、ブランディングヴァリューを決して落とさないコストをかけながらの適切な価格設定に好感がもてる。

少し残念であったのは、為替レートに飲み込まれるスクランブラーの価格上昇で、初期モデルがコストパフォーマンスに優れていたからこそ、少々残念な気がした事は否めない。
とは言え、全体を通して海外製品のコストバランスが良く、今後の輸入バイクの動向に期待したい。

筆者プロフィール

宮城光

1962年生まれ。2輪・4輪において輝かしい実績を持つレーサーとして名を馳せ、現在ではモータージャーナリストとしてMotoGPの解説など多方面で活躍中。2022年、バイク未来総研所長就任。