バイクの未来に切り込んでいくコンテンツを発信する『バイク未来総研』。
今回は、オートバイ誌編集長対談シリーズ第四弾、BikeJIN盛編集長にお話を伺いました。宮城 光所長よりインタビューしましたのでそちらの様子をどうぞ!


左:盛編集長 右:宮城 光所長

バイク未来総研とは

バイク業界のよりよい未来を考え、新しい価値を調査し、分析した内容を広く社会に発信することを目的に発足。国内外のレースで輝かしい成績を挙げ、現在も多方面で活躍する宮城光氏を所長に迎え、バイクライフの楽しさやバイク王が持つバイクに関する独自データ分析などの情報発信に加え、ライダーやバイク業界がこれから描く「未来」に切り込んだコンテンツを順次発信します。

BikeJINという雑誌のつくり方

宮城:最近、蝶ネクタイはしていないのですか(笑)
盛:たまに付けています(笑)

宮城:今日、蝶ネクタイしてきてくれるのかなと楽しみにしていたのに(笑)
盛:今日付けるか、一瞬迷ったんですけど誰も覚えてないと思ってヤメました(笑)

宮城:いや、覚えていますよ。色々なおしゃれな蝶ネクタイをするのが盛編集長じゃないですか(笑)バイクに乗る人には見えないですよね。
盛:最初、バイトからバイクの世界に入ったのですが、その頃プライベートで蝶ネクタイにハマっていたというのもありまして、「蝶ネクタイの奴」で覚えてくれればいいかなという軽い感じでした。

宮城:自分の中では、蝶ネクタイのブームのヤマは越えた感じですか。
盛:そうですね。

宮城:もう編集長になっちゃいましたしね(笑)
盛:そうです(笑)

宮城:そんなBikeJINの編集部は、毎月、全国のツーリングの情報が載っているので毎日大変じゃないですか。
盛:そうですね。ツーリングメインの雑誌ですから日本中飛び回っていることが多いです。

宮城:そうですよね。行かないと取材にならないですよね。
盛:雑誌の特徴にもなるのですが、自分達でツーリングに実際に行くんです。他の雑誌さんだとライターさんやタレントの方に出ていただいているという事も多いと思うのですが、
我々は自分達の足で行きます。ですから、顔も覚えてもらえますし、実際に自分が感じた目線で書けるということにも繋がっています。

宮城:自分達で行って自分達で書いている訳ですから責任も重大ですね。そこはこだわりなのですか。
盛:そうですね。伝統もありますし、昔からこのスタイルを貫いています。

宮城:BikeJINはバイクの名を借りた、もはや旅の雑誌ですよね。
盛:はい。全バイク誌の中で一番「バイクが乗っていない雑誌」ではないでしょうか(笑)

宮城:(雑誌を見ながら)このコンテンツは全然バイク出てないですしね。自分達が行った場所に読者の人も行ってもらいたいという気持ちはあるのですか。
盛:自分たちが行くエリアというのは楽しいと思うのでぜひ行ってもらいたいですね。

宮城:バイクって若い時はよいですが、目的がなくブラブラするのってなかなかできなくなってくるじゃないですか。
盛:計画を立てないとなかなか遠出はできないですよね。
宮城:BikeJINという雑誌はその目的と場所を提案している訳ですね。

盛:はい。免許を取ってバイクを買って、その次に役に立つものを提案したいと思っていますが、たまに「バイクを持ってないけど、ツーリングに行った感覚になれるので読んでいます」という人もいて、そういうのを聞くと嬉しいですね。
宮城:グーグルアースで現地に行った感覚になれるようなものなのでしょうね。

盛:雪国の人はバイクに乗れない時期が結構あって、その間は雑誌で行った感覚になるというのも聞きます。
宮城:なるほど。いい仕事していますね(笑)

盛:そうですね。この雑誌の見せ方というのは変わってないですし、これからも自分たちがまず楽しみながらその楽しさを読者の皆さんに届けたいですね。
宮城:僕なんて家族に「ここ行きたいからBikeJINを見といて」と話すように使っていますよ。
盛:(笑)。ありがとうございます。

バイクへの接し方が今と昔では違う?

宮城:もうバイクを使った旅行雑誌ですからそういう使い方になってきますよ(笑)BikeJINを読んでいる読者層はどういう層が多いのですか。
盛:日本のバイク人口の分布と同じような層だと思います。50代が多くて男女比8:2くらいで、現在売れているメーカーや車種順にニーズがあって、という事ですね。

宮城:若い人が250ccのスーパースポーツで、ナビマウントを付けていたり、大きいハードケースなどを付けていたりするのは僕らの世代からするとスーパースポーツに乗る上のカスタムとしてそのような発想にならないのですが、これはバイクの使い方が変わってきているという事なのでしょうか。
盛:きっかけはツーリングのためにバイクは買ってはいるけど、まずはビジュアルから選んでいるという事だと思います。

宮城:なるほど。用途としてはツーリングでビジュアル重視という事ですね。僕らの世代だとバイクは用途別に別れていて、スーパースポーツ、ツーリングバイク、アメリカン、オフロード、スクーターなど分けていますよ。
盛:若い人はそういう発想ではないと思います。ツーリングもするし通勤もするし、生活に降りてきていると思いますね。

宮城:そうすると、スーパースポーツのバイクに乗っているからといってMotoGPのファンという訳ではないのですね。
盛:そうですね。それぞれバイクにも顔があって、それぞれルックスがいいじゃないですか。バイクのコンセプトやメーカーが好きという人ももちろん多いと思うのですが、
一目ぼれのような、第一印象のルックスを気に入るという点が大きいのではないでしょうか。

宮城:なるほど、それを楽しんでいるのですね。僕らの時代は400ccのスポーツバイクを買ったら六甲山に行って朝から夜まで走り回ってフラフラになっていましたよ。そんな面倒くさい事はしないのですね。
盛:そうですね、しないのではないですか(笑)

宮城:バイクへの接し方がソフトですよね。今は楽しむものが多くあって、多様性の時代にあってバイクはその中の選択肢のひとつということですか。
盛:そうですね。バイクのスポーツタイプだからといって、走りにライフスタイル全体が染まるというより、時には足として使い、時にはツーリングに使い、時には鑑賞するなど
バイクへの接し方も多様性が出てきているように思います。

BikeJINコンテンツについて

宮城:話変わりまして、BikeJINの雑誌として読者が一番反応する内容ってどのようなコンテンツでしょうか。
盛:やはりツーリングに行く場所、ですね。あとはライテク系ですね。

宮城:ツーリングですとついつい休む事を忘れて夢中になったりしますから、走行距離に合わせたライテクも必要ですね。
盛:ツーリングならではの乗り方があった上で、基本的なライディングスクールでやるような、ブレーキのかけ方などのライテクですね。
働いている人だと月1回乗るか乗らないかという人も多い。そうなると、いざツーリングに行く前に予習・復習をするという感じですね。

宮城:なるほど。ツーリングに行く場所を探しつつ、いざ乗る際に注意することを頭に入れて、ということですね。僕は結構セキュリティグッズやツーリングバッグとかBikeJINを見てよく参考にしていますよ。(BikeJINは)実用的で長く使えて良い物を知っているなという印象です。
盛:ありがとうございます。本当によいと思っているものを掲載しているのでそのように言っていただけて嬉しく思います。

電動バイクについて

宮城:電動バイクについて、感じることはありますか。
盛:何年かはまだまだガソリンエンジンのバイクが主流なのでは、と思います。インフラやバッテリーが今のバイク並みのインフラや航続距離になれば全然アリだと思います。

宮城:航続距離が長い電動バイクは出てきていますよ。
盛:インフラがまだもう少し先で、さらに充電で待たされるという問題が待ち受けている気がしています(笑)

宮城:確かにそうですね。ガソリンなら5分で済むところを、雨の日、高速のパーキングの雨宿りをするところがない端の方で、カッパ着てひたすら待つというのが想像できますね。
盛:(笑)そこが改善出来たら乗りたいという人は多いですよね。インフラが整うほどに競争も起きて、そうした不便さ解消にも競争が起きてどんどん便利になる。そうすると利用する人も一気に増えますよね。

盛編集長の出発点と編集部について

宮城:元々は雑誌を作りたくてこの業界に入ったのですか。
盛:出版社で働きたかったんですよね。その中のくくりとして雑誌があったという感じです。
別の業種で働いていたのですが、一回くらい出版社を経験したいなと思いまして。そんな時にBikeJINが募集していたのでタイミング良く入った感じです。なんとなくなんですが、バイク持って免許も持っていたから、「なら入れるじゃん」と思った感じです(笑)。ほかの人と違うのはバイク大好きだから入った、という事ではなかった点ですね。

宮城:面白いですね。
盛:BikeJIN自体も、メカニックも詳しくてバイクの歴史や車体なんかも詳しい人ばかりではなくて、色々な趣味や嗜好性があってその中の一つにバイクがあるという感じですね。
宮城:そのスタンスが人生楽しいものにしようという雰囲気が雑誌に出ていいのでしょうね。

宮城:その時はもうバイクの免許は持っていたのですか。
盛:SR400に乗りたくて中型免許を取りまして、その後大型免許を取りました。

宮城:BikeJINに入り編集長になられたということですが、今編集部は何人体制ですか。
盛:僕含めて4人ですね。

宮城:出張は多いですか。
盛:そうですね。BikeJINでは外注しないでほぼすべてツーリング先も自分達で行っています。でもそれが一番楽しくもありますね。

宮城:バイクに乗りたくて走りたい人からすると堪らない仕事ですよね。
盛:そうですね。色々と満足していますね。僕は子供や家族がいますのでそちらに割く時間もあって、本当に一人のプライベートな時間はあまりないですが、仕事で好きなバイクに乗れますので。いい仕事ですよね(笑)。

宮城:雑誌作りで最もこだわっているところはどこですか。
盛:ツーリングスポットについては、実際我々が行き先やスケジュールを決めて、ツーリングに行くという、ライダーと同じことをやっています。
一人のライダーとして走って本当に知りたかったことや良いと感じたものを確かめてそのまま伝えていますので、自信を持ってお勧めできるコンテンツです。

宮城:そうですね。先にツーリングに実際に行っている訳ですからね。
盛:そうです。ライダーとしてツーリングに行ってみて、そのリアルを伝えることを心がけています。

宮城:その量も多いですよね。1回の雑誌に1コンテンツだけじゃなくて圧倒的に多いですよね。
盛:大変ですけど頑張っています。ぜひツーリングの参考にしていただければと思います。

コロナ禍での変化

宮城:コロナ前とコロナ禍中、バイクに関して感じたことはありましたか。
盛:一人で移動する手段として、時代にマッチしてバイクの魅力が再認識された時期だったと感じましたね。

宮城:僕もそのように感じますね。乗る人も増えたり、SNSでバイクをアップする人も増えたりとツールとして使用する人が増えたという話はよく聞きます。
その他、バイクに関するトピックスで気になることなどありますか。
盛:電動バイクというのがいつかは爆発的にブームとなるので、情報を常に追っているというのと、ブームになったキャンプツーリングですね。

宮城:ソロキャンプはバイクに乗るという遊びとバイクに乗る遊びがくっついた訳ですか。
盛:そうですね。

宮城:個人的に昔はキャンプというと山に籠るイメージでしますが、今はちょっとオシャレなアウトドアになってきてますよね。
盛:キャンプツーリングは行っても楽しいし、移動も楽しいですし、家出てから帰るまですべて楽しみたいという方には最適な組み合わせなのではないでしょうか。
これが車だと移動は移動で別物になりやすいと思います。

宮城:キャンプツーリングとなると、バイクはどんなバイクがいいのですか。僕なんかだとアドベンチャーがいいのではと思ってしまうのですが。
盛:もちろんアドベンチャーでもよいと思います。これはマチマチで、キャンプを好きな人ならオフロードバイクになるかもしれないですね。
バイク好きがキャンプに行ってみようかとなれば、キャンプへ行くに足る性能さえ満たしていれば普段乗っている自分が好きなバイクになる訳です。
宮城:キャンプに行くにはこのバイクじゃなきゃダメっていうのが今はなくて、好きなバイクで楽しめばいいという多様性が見られますね。

BikeJINという雑誌の在り方

最後にBikeJINの今後の展望やチャレンジしたいことがあれば教えてください。
盛:BikeJINは読者の皆さんに近い存在と思っているので、その距離感を維持しつつ、誌面からの情報はもちろん、主催イベントなどのコンテンツを通して、その人のバイクライフを有意義なものにするきっかけであり続けたいと思っています。
バイク趣味の土台としてツーリングがあり、そこから林道にハマる人やサーキットにハマる人、キャンプにハマる人など、その先は分岐していく人も多いと思うのですが、BikeJINはそのすべての分岐の入口に常にいたいと思っています。
宮城:これからも人に寄り添って楽しい雑誌を作っていってください。本日はどうもありがとうございました。

筆者プロフィール

宮城光

1962年生まれ。2輪・4輪において輝かしい実績を持つレーサーとして名を馳せ、現在ではモータージャーナリストとしてMotoGPの解説など多方面で活躍中。2022年、バイク未来総研所長就任。