バイクの未来に切り込んでいくコンテンツを発信する『バイク未来総研』。

今回は、1月26日(金)より100%電力で動く特定小型原付「e-FREE 01」の販売を開始したバイク王で電動モビリティに関する取り組みを進める電動モビリティ普及推進室 高須室長にお話をうかがいました。

株式会社バイク王&カンパニー 電動モビリティ普及推進室 高須 雅也 室長

バイク未来総研とは

バイク業界のよりよい未来を考え、新しい価値を調査し、分析した内容を広く社会に発信することを目的に発足。
国内外のレースで輝かしい成績を挙げ、現在も多方面で活躍する宮城光氏を所長に迎え、バイクライフの楽しさやバイク王が持つバイクに関する独自データ分析などの情報発信に加え、ライダーやバイク業界がこれから描く「未来」に切り込んだコンテンツを順次発信します。

バイク王がなぜ電動モビリティを?電動モビリティ普及推進室設立の背景は?

―電動モビリティ普及推進室はどのような組織なのでしょうか。

高須室長(以下、高須)「主には電動モビリティに関するマーケティングリサーチを目的に、2022年12月に設立されました。」

―電動モビリティ普及推進室設立の背景を教えてください。

高須「当社は1994年にバイク王の前身となるメージャーオート有限会社を設立いたしました。当時はまだバイク市場の二次流通環境が整っておらず、残念ながら一部でバイクの不法投棄・路上放置が社会問題となっていました。当社はバイクのリユース事業を通じてこうした社会の問題を解決することを目指し、ライダーにとってより良いバイク環境を整えていく事を信念とし事業を拡大してきました。

現在は環境問題において脱炭素の動きが加速しており、日本でも2030年代半ばにはすべての自動車・バイクを電動化に、といった目標が掲げられ、2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%削減の高みに向けて挑戦を続けることが政府から発表されるなど、脱炭素問題は新たなフェーズを迎えています。

バイク業界においても新型モデルの開発・販売など電動化の動きが本格化していますが、大型バイクの電動化については開発コストや充電インフラの課題もあり、短期的には小型のモビリティから電動化が進むと予測しています。

当社は買取・販売を中心に、整備やレンタル、パーツ販売など、バイクライフに関わるサービスを全国規模で展開しており、脱炭素という社会課題の解決に向け、電動モビリティを普及させていくうえで我々がすべきこと・できることは何か、またそれらをどうしたらビジネスとして確立できるか、といった事を調査・検討するために、組織が設立されました。

二輪の保有台数は四輪と比較すると約1/6ほどですが、二輪保有台数のうち約4割は原付1種で、原付2種まで含めると二輪保有台数の約6割を占め、単純計算でユーザー数は500~600万人と推定されます。

小型モビリティは日常の移動手段として非常に身近な乗り物であり、そういったところから多くの方に電動モビリティに触れていただく機会を増やしていけたらと思っています。」

電動モビリティ普及に必要な事は?

―電動モビリティを普及させるために、どのような活動をされているのでしょうか。

高須「組織立ち上げ後に、電動モビリティの普及状況や、普及に向けた取り組み、課題などについて調査したところ、先ほど申し上げた通り日本国内においては小型のモビリティから普及が進むと考え、充電インフラや電動モビリティの取り扱いに関する具体的な検討やマーケット調査を進めました。

その中で、昨年7月の道路交通法改正に伴い、特定小型原付のカテゴリーが新設された事を受け、9月にお取引先の一つである教習所と連携して、特定小型原付を含む電動モビリティの試乗会を、教習所のイベントで開催しました。

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第28回KORIワンデースクールで特定小型原付(電動キックボード等)の試乗会を開催しました。

お子様からシニアの方まで多くの方が集まる地域のイベントだったのですが、3時間で120名以上の方に試乗いただくなど、関心度の高さを感じました。

試乗後のアンケートでは『楽しい・面白い』『快適」というお声がある一方で、『交通ルールが分からない』『事故などが不安』といったお声もありました。

イベントの中で、地域の警察署が作成した特定小型原付に関する交通ルールをまとめたチラシを来場者に向けて配布するなどの取り組みを実施しましたが、電動モビリティの普及には、多くの方に体験していただく機会を増やすと共に、そうした交通安全啓発活動を行い、交通事故を一件でも減らしていく事が非常に大切だと考えています。」

―電動モビリティ普及推進室を立ち上げてから苦労したことはありますか。

高須「まずは社内で電動モビリティの存在感を大きくしていく事に力を注いでいます。当社は年間10万台以上のバイクを取り扱っていますが、ほぼガソリン車両になるため、社員もまだまだ電動車両を取り扱う事が少ないのが現状です。少しずつ導入店舗を増やしたり、営業部署に理解を得られるよう掛け合ったり、社内報で取り上げてもらうよう広報に掛け合ったり・・・そんな毎日です(笑)」

販売好調な電動モビリティ。普及に必要な事は?

―自転車タイプの電動モビリティ『e-FREE 01』を販売して1週間が経ちました(取材時点)お客様の反応はいかがでしょうか。

高須「本日もwebメディアより『e-FRREE 01』の取材をお受けしたのですが、大変多くのメディアに取り上げていただけて、多くのお客様からお問い合わせがありました。

カラーバリエーションはサテンブラック/グレージュ/コーラルブルーの3色(2024年2月現在)
e-FREE 01特設ページはこちら https://www.8190.jp/lp/e-free/

バイク王世田谷本店、バイク王GLOBO蘇我店、e-bike uenoの3店舗で販売を開始しましたが、大変良い売れ行きだと報告も入ってきています。
ご購入いただいたお客様からは、やはり免許が不要で便利だという点、漕がずに進むので楽だという点、自転車と同じ扱いで道路を走れる点がよいというお声を頂戴しています。
ちょうど自転車と原付バイクの良いとこ取りをしたようなモビリティですので、それらのニーズにマッチしているのだと思います。」

世田谷本店にて。電動モビリティ『e-FREE01』のメディア取材を受ける高須室長

―今後の電動モビリティ普及推進室の展望をお聞かせください。

高須「e-FREE 01のほか、1月より順次販売を開始しているのは電動バイク(原動機付自転車)の『GOCCIA 【GEV600】』と、キックボードタイプの特定小型原付『YADEA KS6 PRO』です。

もう少しスピードとパワーがほしいという事であれば電動バイク、気軽にスポーツ感覚で乗りたいという方であれば、キックボードタイプの特定小型原付というかたちで、多種多様なお客様のニーズにお応えできるように進めています。

これから各メーカーから魅力的な電動モビリティが次々と発表されていくと思います。
お客様のニーズをしっかりとキャッチしてラインナップを充実させていくと同時に、販売事業者の責任として交通安全啓発活動にも力を入れ、電動モビリティの普及を通して脱炭素という環境課題にも少なからず貢献していけたらと考えています。」

電動バイク「GOCCIA 【GEV600】」

■サイズ:全長:1720mm/全幅:690mm
■車両重量:56kg
■走行可能距離(エコモード)::70km※1 
■最高速度:50km/h ※法定速度遵守
■充電時間:6~8時間
■カラー:ライトブルー×グレー /ディープブルー×アイボリー/メタルグレー×ピンク/レッド×ホワイト/ホワイト×ホワイト/ブラック×グレー
■価格:229,000円(税込)
■販売ページ: https://e-819.jp/collections/e-kickboard-lite/products/yadea-ks6-pro
※1一充電走行距離は30km/h定地走行、乗員50kg、バッテリー新品、気温15℃、無風の条件下、ECOモードでの当社テスト数値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。

電動キックボード 「YADEA KS6 PRO」

■サイズ:全長:1192mm/全幅:520mm
■車両重量:22kg
■走行可能距離:60km※2
■最高速度
:20km/h 特定小型モード ※2
:6km/h 特例特定小型モード ※2
■充電時間:5~6時間
■カラー:ブラック
■価格:198,000円(税込)
■販売ページ: https://e-819.jp/products/goccia-gev600
※2 最大航続距離は実験による理論値です。路面状況や環境により異なります。

▼文中取材シーンのメディア掲載記事はこちら
ホントに便利? 特定小型原付「e-FREE 01」にスクーター未経験者が乗る!

筆者プロフィール

宮城光

1962年生まれ。2輪・4輪において輝かしい実績を持つレーサーとして名を馳せ、現在ではモータージャーナリストとしてMotoGPの解説など多方面で活躍中。2022年、バイク未来総研所長就任。