バイクの未来に切り込んでいくコンテンツを発信する『バイク未来総研』。
今回、バイク未来総研では、東京ビッグサイトで開催された『ジャパンモビリティショー』で、aidea、カワサキ、ホンダ、ヤマハ、スズキの順でブリーフィングを訪れ、電動バイクに注目し、今後のモビリティ動向について取材を行いました。

また、ホンダブースには独自取材を実施。出展した電動バイク「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」のコンセプトや今後のバッテリーのインフラなどについて宮城光所長が取材を行いましたのでお楽しみに!

ブリーフィングレポート

aidea

登壇した池田元英社長

同社では商業車に特化しラストワンマイルのソリューションを提供しようとしている2019年に立ち上げた勢いのあるベンチャー企業で、主にデリバリーの分野のモビリティに特化している。
2019年に同社を立ち上げ、特に力を入れているのは屋根付き3輪で、業界として手薄になっている部分を埋めていきたいという。

現在では、玄関前までお客様まで荷物を直接届けられるようなロボットも制作もしているとのことで夢のある話だ。最終的にお客様にお届けするラストワンマイルを手掛け、その分野の自動化を目指している同社に期待だ。

バイクとしては、今回、コンセプトカーとして出展したAAクーペに注目した。

AAクーペは、荷台と屋根がついた3輪EVであるAAカーゴの派生モデルで、二人乗りもできるようになり、アーバンコミューターとして活用しやすくなったとのことだ。

商業車ではなく、個人として使用できる同社はじめての車両でこれからは車両とロボットを総合し総称してモビリティというかたちとなるが、このモビリティをしっかりと作っていくとともに、エネルギー問題を解消していきたいと池田社長は語る。

展示している車両はエネルギー業界とモビリティをつなぐひとつの糸口だと考え、ロボットは玄関前までお届けできるようなラストワンマイルを完成させたいとのことだ。

カワサキ

新しい企業ロゴを背に登壇する伊藤 浩社長

2024年がカワサキモーターズサイクル事業70周年で、その70周年の節目に、カワサキレッドを一新したという。同じく2024年にセールスブブランド50周年、ニンジャブランド40周年、メグロブランド50周年を迎え、出展テーマとなっている「伝統と革新」に則り、今回具現化した2台の電動バイクを披露した。
量産モデルとして、カワサキ初の電動モーターサイクルとなる、「ニンジャe-1」とハイブリッドモデル「ニンジャ7ハイブリッド」だ。

Ninja e-1
Ninja 7 Hybrid


電動モデルであっても「面白くなくてはカワサキではない」と語る石井社長。
電動ならではの加速感を楽しめ、100%電動で最高出力9kWのモーターと軽量フレームにより、優れた加速と軽快で面白いハンドリングを実現できるという。日本での発売を予定し、詳細は決定次第お知らせするとのことだ。

ホンダ

多くのプレス関係者に囲まれる三部 敏宏社長

モビリティメーカーとして様々な価値を提供し75年、創業以来「夢」を原動力に誰もが夢ではないかと思うことに挑戦してきた、と最初に語る三部社長。
「ひとりひとりの社員の夢が人を動かし、人々の心を動かすという多くの人の夢の実現を後押しすることで未来に向けて皆さんの夢が広がっていく、このような想いを抱いている。」と続ける。
ホンダブースのテーマは、「Honda Dream Loop」。
我々が夢をかたちにしたモビリティから、未来に向けて多くの人の夢がループする、広がっていくという事を現わしたという。

夢をかたちにしたモビリティとは、時間や空間などの制約の解放をし人の能力と可能性を拡張していくものであり、ホンダが創業以来提供してきた本質的な価値であり、これからも提供していきたいという。
自由に移動できる喜びを体現するホンダのバイク、「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」については最後にインタビューを掲載していますのでお楽しみに!

ヤマハ発動機

あいさつをする日高祥博社長

「新型コロナウイルスを経て『人はもっと幸せになれる』という長期ビジョンを2019年から発信したが、一方でパンデミッグにより不自由という制限を強いられ、人が人らしさを失いかけていた時期を経て、会えなかった人に会えるようになる、行けなかったところに行けるようになる、この当たり前を取り戻しつつある今、『人はもっと幸せになれる』ことを一層強く感じている。」と話す日高社長。

ヤマハ発動機では「生きる」を感じることができるようにモビリティの存在をさらに際立たせ拡張していきたいという。

電動バイクとしては、モビリティに知能化技術を融合させた実験モデル「MOTOROiD2 モトロイド ツー)」に注目した。

MOTOROiD2

ダンサーがMOTOROiD2の前で合図すると電源が入りダンサーの横を自動走行するパフォーマンスも行われた。未来を模した衣装を纏ってのダンスパフォーマンスは未来のモビリティの姿をヤマハ発動機として示した。

スズキ

登壇する鈴木俊宏社長

創業者である鈴木道夫氏が、「母を楽にしてあげたい」という原動力からスタートしたスズキ。
今回のモビリティショーのテーマを「世界中に、ワクワクの、アンサーを。」とし、
カーボンニュートラルの実現は新しいモビリティへの挑戦する上で欠かせないとし、
次々と具体的な取り組みの内容を提示した。

一方で、スズキらしい小型一人乗りの電動モビリティを多く提示されていた。
走行テスト済みであったり実用性が高いと感じられるモデルの展示が多く、本当に近い将来に乗ることができるような、まさに「ワクワク感」をくすぐる車両がブースの大半を占めた。

eチョイノリ

中でも、懐かしの2003年発売のスクーター、チョイノリに電動ユニットを組み合わせたEVスクーター、「eチョイノリ」に目が留まる。
幅広いユーザーに向けて開発されたモデルとのことで、かわいい見た目の車体は、男女問わず受け入れられそうだ。
また、用途としても通勤・通学・コンビニへなど近くへの買い物など気軽に使えそうなモデルだ。

独自取材!ホンダが描く電動バイクの未来

SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)

最後にホンダが今回出展した「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」のコンセプトと電動バイクのバッテリーの未来についてインタビューを行いましたのでその様子をどうぞ!

左:栗木さん 右:後藤さん

宮城所長(以下、宮城):本田技研の開発に携わる後藤さんと栗木さんにお話を伺いたいと思います。見た目からスタイリッシュでカッコいいですね。まずは特長を教えてください。

後藤:原付二種相当のパーソナル向けの電動スクーターという事でシートの下にHonda Mobile Power Pack e(モバイルパワーパックイー)というバッテリーを2つ搭載しております。

宮城:それでは、早速バッテリーを見せていただけますか。
後藤:開けます。レバーを前に倒すとバッテリーが取り出せるようになっています。

宮城:2つのこのバッテリーは、2つ搭載するのは何か理由があるのでしょうか。
後藤:はい。原付二種相当の出力を得る事と、使い勝手に合わせた航続距離を確保するために2個搭載しております。

宮城:多くの皆さんは充電時間やどのくらいの距離が走れて平均して何キロくらいの速度で走れるのか、そのあたりが気になっていると思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
後藤:ご家庭で専用充電器を使って充電でき、その場合はフル充電で6時間程度となっております。コンセプトモデルになりますので、現段階では航続距離、最高速度ははっきりとはお答えできかねます。バッテリーステーションの場合は急速充電のシステムもホンダの方で準備しております。

宮城:わかりました。後ほど詳しくバッテリーステーションのことも含めて伺いたいと思います。栗木さんにもお話を伺います。あらためて今回の「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」の、文字通りコンセプトについて伺えますか。

栗木:シンプルのS、クリーンのC、が文字通りのデザインコンセプトとなっております。ただシンプルなだけでなく、モビリティとしての動的な要素を入れつつお客様の足つき性が良くなるような造形表現となっています。
宮城:スクーターのデザインというと出尽くした感があったと思いましたが、シンプルかつオシャレでキレイですね。
栗木、後藤:ありがとうございます。

宮城:今後、どういう方に「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」を乗ってほしいですか。
栗木:普段私は通勤にスクーターを使っているのですが、生活の足として適していると思いますのでぜひそのように電動であっても身近な乗り物として使っていただきたいと思っています。
今、市販化に向けて開発を進めておりますのでもう少々お待ちください。

宮城:楽しみに待っています。続いてバッテリーのインフラ周りについて小山さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
小山:こちらこそよろしくお願いいたします。まず、電動バイクで気になってくるのが充電時間と航続距離になると思いますが、その制約からの解放というのがバッテリーステーションになります。ガソリン車でいうガソリンスタンドのようなところが気軽に使えるイメージです。

宮城:一般のエンドユーザーが使用していて充電がなくなり、さあ交換しようというときにいくらくらいかかるのか、気になってくるところだと思うのですが。
小山:まだ明言できないところはあるのですが、ガソリン車と比べて高いとなるとユーザー様はついてこないと思っておりますので、ガソリン車と同等、もしくは低く設定できるよう頑張るというのを目標にしたいとは思っております。
宮城:大きめのステーションになりますので、設置するには場所やコストなどもかかってくるのではないでしょうか。
小山:バッテリーの全情報を吸い取ってクラウドで管理を行うことでメンテナンスにかかる全体費用を抑えていくという事、あとはバッテリー内部にファンがついているのですが、熱を持った状態で充電していくことでの劣化を防いで結果として寿命が延びていきます。
ステーション運営側のコスト負担を抑えられるように工夫を施しております。
宮城:それは朗報ですね!


小山:あとは海外だと壊れるという話も聞こえてくるのですが、ホンダの品質として壊れにくい設計をしております。このスロットの中も雨水が入りにくい仕様になっています。
屋外でも設置可能です。

宮城:台風が来ても大丈夫ですか。
小山:はい。台風でも大丈夫です!

宮城:それはすごいですね。電気系で暴風、防水というのは大変ですよね。
小山:壊れてしまうと交換費用がかかってしまいます。トータルで抑えていき、コストを減らしていくという考えです。

宮城:あとは自宅で充電できるのか伺いたいのですが。
小山:自宅での充電器もホンダでは開発しております。こちらは放電もできる機能がありまして、USB接続もできますし、家庭用電源としてお使いいただけます。

宮城:キャンプなんかにも使えますね。皆さんが当たり前のように使っていくようになるまであと何年くらいかかりますか。
小山:個人的な意見にはなってくるのですが、こうしたバッテリーが深く浸透して、バッテリーがガソリンのように使われだすのは5~10年先かなという感じはしています。今の動きとしては他の二輪メーカー様とコンソーシアムを組みなるべくユーザーのためにバッテリー規格を統一していきましょうと働きかけています。色々な会社の電池がいろいろなものに使えるというところを目指しています。

宮城:さきほどヤマハブースを見ていたのですが、あの電動バイクも似たバッテリーだったのですが、こちらのMobile Power Pack e(モバイルパワーパックイー)を使用しているのですか。
小山:おっしゃる通りです。手を結び業界として電動モビリティを盛り上げていけたと思います。

宮城:地球にやさしく人にもやさしいモビリティが当たり前に使えるようになるよう期待しております。本日はありがとうございました。

筆者プロフィール

宮城光

1962年生まれ。2輪・4輪において輝かしい実績を持つレーサーとして名を馳せ、現在ではモータージャーナリストとしてMotoGPの解説など多方面で活躍中。2022年、バイク未来総研所長就任。