スポーツ&アウトドア・アパレル事業で知られるゴールドウイン社が、2022年10月7日にスウェーデンの電動バイクメーカーCAKE 0 emission AB(以下、CAKE)と、日本国内における独占的パートナー契約を締結した。

5月25日(木)より自社ECサイトでの電動バイク販売開始を控えるゴールドウイン社に、公式ポップアップショールーム「CAKE Tokyo」にて、バイクの特徴や販売チャネルなど日本での今後の販売戦略を伺った。

バイク未来総研とは

バイク業界のよりよい未来を考え、新しい価値を調査し、分析した内容を広く社会に発信することを目的に発足。国内外のレースで輝かしい成績を挙げ、現在も多方面で活躍する宮城光氏を所長に向かえ、バイクライフの楽しさやバイク王が持つバイクに関する独自データ分析などの情報発信に加え、ライダーやバイク業界がこれから描く「未来」に切り込んだコンテンツを順次発信します。

Kalk(カルク)、Osa(オッサ)、Makka(マッカ)、3つのバリエーションを用意

基本モデルは、オフロードタイプのKalk(カルク)、カスタムパーツ豊富なOsa(オッサ)、シティコミューターのMakka(マッカ)の3タイプ。

『Kalk&(カルク アンド)』:291万5000円(税込)*本体価格

『Osa+(オッサ プラス)』:225万5000円(税込)*本体価格
*Osa+シリーズの販売は2024年以降の予定です。
『Makka range(マッカ レンジ)』:86万9000円(税込)*本体価格

ゴールドウイン事業部 CAKEグループ福田マネージャーに、電動バイクの特徴を伺うと、
「ハンドル周りはガソリンで走るバイクに乗っていた方にとってはまったく違うものに感じられるかもしれませんが、実に操作は簡単です。
ガソリンで走るバイクは、鍵を回しセルを回してエンジンを起動しますが、CAKEはメイン電源のスイッチを押すと、メインパネルに電源が入りますので、続けて暗証番号を入れてロックを解除したらもう走れる状態です。
あとはギアがないオートマなので、アクセルを開けていくともう走ります。エンジンを回して暖気して、という流れは当然ありません。」と話す。

オフロードがベースの『Kalk&(カルク アンド)』は、電源を切る操作も不要。
万が一転倒した時は、右ハンドル近くの赤いロープを手首に巻き付けておけば、ハンドルから手が離れた時にはロープが引っ張られ、自動的にピンが外れて電源が切れるキルスイッチになっているという。
この仕様により、チェーンに巻き込まれるなどの事故を防止できる。

続いて『Osa+(オッサ プラス)』について話を伺った。Osa+(オッサ プラス)は、ライダーのライフスタイルに合わせてカスタムパーツをつけることができる仕様が特徴となっており、また、バッテリーからはUSB接続やシガーソケットを繋ぎ、ポータブル電源として電力供給までできるという。

バッテリーにはUSB端子、タンデムシート部分をカゴ等へパーツ変更が可能

欧州では、リヤカー接続のためのパーツをつなげて重い荷物を積み牽引などにも使用される。
拡張性があるため、様々なパーツを組み合わせ次第で、日本においてもアウトドア、ビジネスシーンなどさまざまなシーンでの活躍に期待が持てそうだ。

続いて、登場するのはシティコミューターの『Makka range(マッカ レンジ)』。
Makka range(マッカ レンジ)は、主要ラインナップの中では唯一、原付免許のみで乗る事ができる。また、主要3タイプいずれも車検を通す必要がなく乗れるのが魅力といえる。
鍵は2種類あり、バッテリー盗難防止のための鍵とメインパネルはカードキーとなっている。メインパネルにサイドスタンドマークがついているときは安全装置が働いてアクセルを開けても動かなくなる、安全設計だという。
パネルでは、ライドモードと呼ばれるそれぞれ加速感が異なるモードを選択でき、R1を選ぶと停止時からの加速が良くなり、R2を選択すると加速が穏やかで安全に乗ることができるそうだ。

また、Kalk&とOsa+に装備されているライドモードは任意で最高速の設定もできる。
3で最高速の90km/h、2で70km/hキロ、1は45km/hまでといった具合だ。慣れるまではこうしたモードを活用して安全に運転し、慣れてきたら電動バイクならではの加速感を楽しむということもできそうだ。

また、回生ブレーキと呼ばれる、電動バイクの運動エネルギーを電気に変えて再利用する仕組みがあり、その強弱も調整できるため行先や用途に合わせて様々なブレーキモードを使い分けるのも電動バイクならでは、と福田マネージャーは話す。

キッズ向けのラインナップも充実

大人だけでなく、子供用には1歳半から4歳程度を対象としたバランスバイクや、3歳半から7歳程度を対象としたキッズ向けマウンテンバイク、電動で走るモデルまで揃っており、「子供の頃から軽くて扱いやすいCAKEに慣れ親しんでいっていただきたい」と福田マネージャーは笑顔で話す。

キッズ向けバランスバイク『Tripp(トゥリップ)』:47,300円(税込)
キッズ向けマウンテンバイク『Trapp(トゥラップ)』:83,600円(税込)
キッズ向け電動バイク『Trull(トゥルール)』:726,000円(税込)

CAKEシリーズで大型バイクは出る?

中型免許や原付免許で乗ることができるCAKE。今後、大型バイクの開発予定等伺うと、コンセプトは地球にやさしいこと、モーターが静か、そして軽くて扱いやすいという点がこだわっているポイントのため、現在は取り回しがしやすい原付から中型のモデルに注力しているとのことだ。
車重は原付免許で走れるMakka range(マッカ レンジ)で70kg程度、Kalk(カルク)をベースにしたものは保安部品をつけても79kg程度しかない。その特長を最大に活かしたラインナップということのようだ。

電動バイクならではの加速感とは?

電動バイクの経験がない人からすると、どのような乗り心地なのかわからない。従来のガソリンで走るバイクと走行感の何が違うのか聞くと、
「ガソリンエンジンは回転数が上がって加速しますが、モーターの場合はアクセルを開けると一気に力がモーターにかかるので加速が良いのです。
車重も軽いのでスタートダッジュがよく、モーターならではの加速感を味わえます。また、クラッチがないので、アクセル次第で加速、減速ができますので、試乗された方はそれが楽しいと言っていただけています。」と話す。

電動バイクの充電方法、アフターサービス、補償は?

充電方法について聞くと、100ボルトの電源、つまりスマホと同じように家庭のコンセントから充電できるとのことだ。出先での充電切れなども気になるが、通常のコンセントを貸してもらえるところで充電もできるが、並行してインフラ整備も検討しており、充電できるサービスポイントとの提携など将来的には様々な所で充電できる体制を整えたいという。
「アフターサービスについては、出張対応か茨城県土浦市の整備工場(サービスセンター)にお持ちいただいて対応していく」と話す。
今後については、主要都市にサービスセンターを構築し、最寄りのセンターで対応ができるように準備中とのことだ。
これまでのガソリンで走るバイクだとエンジンの調子等を考えなくてはいけないが、そもそも電動バイクはエンジンがなくシンプルな作りになっているので、パーツの交換対応になるケースが大半だと福田マネージャーは話す。

ゴールドウイン事業部 CAKEグループ福田マネージャー

ほかにガソリンで走るバイクの場合は、エンジンの振動によって車両故障に繋がることもあるが、エンジンがないため振動があまりないのも電動バイクの特徴で、それも故障のリスクを減らす要因になっているという。

補償期間については24か月であるが、耐久性の高いバッテリーを使用しているので、残量がすぐ無くなるという事が近々で起こることはないとのことだ。

クリーンでサステナブルな電動バイクとは?

クリーンでサステナブルな電動バイク、とされるCAKE。どのような点が環境配慮に繋がるのか伺った。

福田マネージャー:「パーツは廃棄する時点でどうするか考えるのではなく、どのような合金を使うか、リサイクルをどのように行っていくかのを考えた上で設計を始めています。
パーツをリサイクルとして溶かす場合、配合比率が明確でなければアルミのみしか再生できない場合もありますが、CAKEであれば配合比率が決まっており、合金の配分も定まっているため、リサイクル効率も非常に高いと言えます。また、走行中のCO2排出量はゼロですので、地球にやさしいクリーンなバイクです。」

斬新なデザインにかける想い

従来のバイクとは一線を画す、近未来的な印象を受けるCAKEシリーズのデザインについて聞くと、
「創業者であるステファン・イッターボーン(Stefan Ytterborn)は二輪業界出身という訳でもありません。現在の3つのラインナップの通り、柔軟にお客様のニーズ、シーン、用途に合わせて対応していこうという動きがあるため、将来的にどのようなデザインが出てくるのか、我々も楽しみです。」
と福田マネージャーは話してくれた。

CAKEシリーズの価格や販売戦略について

続いて、ゴールドウイン事業部マーケティンググループ伊藤さんにCAKEシリーズのマーケティングの側面からお話を伺った。
まずは気になる価格設定について。
伊藤さん:「まず、製造過程においては、工程から逆算してCO2を排出しないように製造されるため、今までのバイク生産とは異なる工程が発生します。また、CO2をできるだけ排出しないという点だけではなく、パーツ一つ一つから、高性能・高機能を求めて設計・製造されています。
基本的にはCAKE社で設計し、外部ブランドのパーツをこだわりをもって使用していますので、価格に見合った耐久性や高スペックを実現できています更に掘り下げて言及するならば、従来のガソリン車の販売価格には反映されていなかった環境負荷コストがあります。
ガソリン車から排出されるCO2は地球環境そのものが負担しオフセットしてくれていましたが、CAKEが目指すのは環境に負荷をかけずにオフセットできるクリーンでサステナブルな状態です。それを達成するためには製造工程はもちろんですが、それ以外にも環境配慮設計としているため、最終的にそれが価格にも反映されています。
最初に地球環境にとってやさしくつくっていくことが重要で、そのコンセプトをお客様に理解していただける事が多く、感謝しています。」

と話す。良いものであることは重要だが、バックボーンにある背景やコンセプトに共感していただくことが重要とのことだ。

ゴールドウイン事業部 マーケティンググループ 伊藤さん

続けて販売戦略について伺った。
伊藤さん:「当面は自社EC販売のみでと考えています。日本初の公式ポップアップショールームである「CAKE Tokyo」はもちろん、地方においては、当社が行っている自然環境と共創していく事業等とのコラボレーションで、お取り組み先に展示させていただいたり、当社の全国直営店などでCAKEの紹介や、展示車両の試乗なども順次行っていきます。
東京では当社で展開する「THE NORTH FACE 昭島アウトドアヴィレッジ」で5月19日より6月6日まで期間限定でCAKEを展示し、このような展示を全国の直営店で順次行っていきます。
また、イメージ戦略が重要だと捉えておりますので、SNSではインスタグラムなど展開していきたいと思っています。」

ゴールドウイン社のアウトドア事業と電動バイクは親和性も高く、多くのユーザーの興味を惹きそうだ。

“地球との遊び道具”がCAKE

アウトドア事業を展開するゴールドウイン社としてCAKEに共感できるポイントは、「エンジン音がしないことで、自然との一体感を感じられる」ことだと伊藤さんは話す。
伊藤さん:「CO2を排出しないという環境配慮はもちろんですが、アウトドア事業を展開する私どもがCAKEに共感するのは、エンジン音がしないことです。音がしない状態で自然の中を走れば、たとえば水の音、風の音も感じられます。
CAKE創業者のステファン・イッターボーン(Stefan Ytterborn)も自然と一体になって走るその体験が電動バイク事業の展開に至った原点でしたので、“地球との遊び道具”として電動バイクを取り入れるという事に賛同いただいた方がヨーロッパでは多くいらっしゃいました。日本でもそのようなところを期待しています。
そして、全世界の課題である環境配慮という点で、個人的にはEVが持っているポテンシャルは非常に大きいと思っています。
自社で展開しているアウトドア事業、アパレル事業とのシナジー効果も期待していますし、社会変革のきっかけになればと思っています。」と締めくくった。

なんとマラソンの先導車を務めたこともあるというCAKE。環境にも人にもやさしいバイク、それがCAKEだ。

ショールーム「CAKE Tokyo」ではCAKE製品を展示するほか、試乗会も実施しており、WEBより試乗申し込みが可能。

▼試乗会予約について
https://goldwin.ridecake.jp/test-ride/

写真:(C) CAKE 0 emission AB

筆者プロフィール

宮城光

1962年生まれ。2輪・4輪において輝かしい実績を持つレーサーとして名を馳せ、現在ではモータージャーナリストとしてMotoGPの解説など多方面で活躍中。2022年、バイク未来総研所長就任。