ネイキッドブームを切り拓いた新風
ポストレプリカを担った西からの風
レーサーレプリカブームが飽和点に達した’80年代後半。ハイスペックだが、高額で前傾姿勢の強いレプリカに対し、新たなカテゴリーのバイクを期待する声が高まっていた。これに応える形で、カワサキが1989年4月に発売したモデルがZEPHYR=ゼファー(400)である。リーズナブルな価格をはじめ、流行に左右されない造形美と、安楽なポジション、急かされない特性の空冷エンジンを採用する、まさに等身大のバイクで、瞬く間に大ヒットモデルとなった。
その人気は凄まじく、1990年末までに2万台超を販売。他メーカーもZEPHYRに続けと、丸目1灯&リヤ2本ショックのネイキッドを立て続けにリリースするほどだった。カワサキも人気に応え、翌年にはZEPHYR750、1992年には1100を登場させている。
そして1996年、400がフルモデルチェンジを果たし、ZEPHYR χ(カイ)に生まれ変わった。外観のイメージは変わらないが、空冷ユニットの内部パーツを大幅に改良。バルブ数を2→4に変更し、カワサキ空冷直4初の4バルブモデルとなった。馬力は7psアップでライバルと並ぶ53psに到達し、パワフルな走りも手に入れた。
登場2年目の1997年型で、早くも足まわりを熟成。以降もマイチェンを繰り返すが、2009年に惜しまれつつ20年の歴史に幕を下ろした。
ネイキッドブームの立役者となり、その後も常に高い人気を維持し続けたZEPHYR。「西風」を意味する車名のとおり、まさに新風を巻き起こした名車である。
型式、年式ごとの特長
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1989~1995 ZEPHYR(400)
往年のZを思わせるスタイルと空冷2バルブ46psで’89年にデビュー。同時期に存在したスポーティなネイキッドに対し、スペックでは劣るも、普遍的なデザインとメカニズムが特徴だった。エンジンはGPz400Fがベースで、低中回転では扱いやすく、回せば鋭さを見せる特性。新設計の車体による大らかなテイストも持ち味だ。発売当初から入手困難になるほどの人気で、’92年までベストセラーに君臨した。1991年型でメッキ仕上げの砲弾型メーターを採用。1993年型でMFバッテリーなどを搭載している。
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1996~2000 ZEPHYR χ
ZEPHYRを基に心臓部を徹底的に改良。ピストンやクランクシャフトを刷新したほか、スロットルポジションセンサー付きのキャブレターなどで、46psから53psにパワーアップを果たした。走りは、力強さが増し、先代と乗り比べると別物の印象を受ける。また、外装はイメージを継承するが、テールカウルなどの造形がシャープになった。なお車名のχは、「無限の可能性」を示すギリシャ文字であり、「改」の意味も持つ。
1997年には、フロントに対向4ポットキャリパーを備え、Fフォークもφ38→41mmに大径化。ラジアルタイヤやリヤ17インチの採用など、足回りを中心に多数の変更を受けた。 -
2001~2008 ZEPHYR χ
2001年型で、排気ガス規制に対応し、KCA(排出ガス再燃焼システム)とパイプ触媒を組み合わせたKLEENを搭載。乾燥重量は183→186kgとなった。さらに2003年型ではサイレンサーの内部構造を変更し、騒音規制に対応。フロントブレーキキャリパーを異径4ポットとして制動力を向上させた。
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2009 ZEPHYR χ
排ガス規制が一段と強化され、ついに生産終了が決定。2009年4月、ファイナルエディションがリリースされた。Z1/2を彷彿とさせる「火の玉カラー」を、キャンディカラーの高品質塗装で再現したほか、きめ細かい上質なシート表皮、ゴールドのエンブレムなどの特別装備も施される。1979年のZ400FXから続いたカワサキ伝統の空冷4発も、これでラストモデルとなった。
主要諸元
[]内は2001~
全長(mm) | 2,085 |
全幅(mm) | 745 |
全高(mm) | 1,095 |
シート高(mm) | 775 |
軸距(mm) | 1,440 |
乾燥重量(kg) | 183 [186] |
エンジン | 空冷4スト並列4気筒 |
排気量(cc) | 399 |
最高出力 | 53ps/11,000rpm [53ps/11,500rpm] |
最大トルク | 3.6kg-m/9,500rpm [3.6kg-m/9,000rpm] |
タイヤ | F=120/70ZR17 R=150/70ZR17 |
※1997~2008モデル