今月のフィーチャーバイク

RG400Γ

RG400Γ

随一の再現度を誇る
破格のWGPレプリカ

RG400Γ

1974年から世界グランプリの500ccクラスに参戦を開始したスズキ。ワークスマシンとして「レーサー・オブ・グランプリ」を意味するRG500を投入し、76年から7年連続でメーカーズタイトル、計4回のライダーズタイトル獲得という偉業を成し遂げた。当初からスクエア4気筒を搭載するRG500は、RGA、RGBと熟成を重ね、81年にはRG-Γに進化。マルコ・ルッキネリらが81~82年に連続でタイトルを奪取し、83年をもってワークス参戦は休止となった。
その熱が冷めやらぬ84年秋、ケルンショーで市販公道モデルのRG500Γが発表。WGPマシンのフルコピーと言えるパッケージに、当時のライダーは大きな衝撃を受けた。ロータリーディスクバルブの2ストローク水冷スクエア4気筒をはじめ、ボア56×ストローク50.6mm、軸間距離に至るまでGPマシンと同一。排気デバイスのSAECや、アルミフレームの形状もレーサーと同様だ。
「WGP500マシンのレプリカ」と言えば、前年に登場したヤマハのRZV500R(https://www.8190.jp/bikelifelab/news/feature-bike/yamaha/rzv500r/)が存在するが、レプリカ度はガンマの方がより忠実。これは、WGPレーサーの設計者である横内悦夫氏ら開発陣が、市販版のΓも手掛けた影響が大きい。
日本国内には、免許事情に合わせたスケールダウン版、「RG400Γ」を85年2月に発売。同4月に500がリリースされた。400ガンマは、500のストロークはそのままにボアを50mmに縮小し、397cc化。最高出力は、自主規制上限の59ps(500は64ps)を発生した。一方、500の海外フルパワー仕様は95psをマーク。リッター換算で200psに迫り、当時としては破格のポテンシャルが窺える。

走りは、大型2ストレプリカの中では扱いやすい部類だ。ハンドルは、レプリカとしてはやや高め。エンジンは軽快に回転が上昇し、低中速域で粘りがある。高回転域の加速はまさに圧巻ながら、パワーバンド内のレスポンスは意外にも従順だ。ただしフロントの動きが軽快ゆえに、接地感を失いやすいなどのクセがあるとの声も。とはいえ、唯一無二の甲高いサウンドを聞きながら、バリー・シーンらWGPライダーの気分を味わえるのは無上の贅沢である。
まさに、レース全盛という時代背景と、設計者のロマンが詰まった破格の1台。400、500ともに2ストビッグレプリカとしては、好調な販売台数を記録ながら、わずか2年で生産終了しており、現在では実に貴重なマシンとなる。WGP500レーサーに忠実なマシンを公道で操る。――そんな途方もない夢を叶えてくれる1台だ。

  • RG400Γ

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型式、年式ごとの特長

1985~1986

レーサーレプリカブームの先駆けとなったRG250Γの成功を受けて’85年にデビュー。各シリンダーが四角形に並ぶスクエア4は、市販車では例を見ない独自のエンジンレイアウトで、両サイドに専用のミクニ製キャブレターを配置。エアクリーナーをボックス形状のステアリングヘッド内に収め、横幅を抑えるなど現代的な機構を採用する。また、左右一体のクランクシャフトやカセット式ミッションもWGPマシン譲りのメカだ。
車体も豪華で、約9kgまでに軽量化されたMR-ALBOXフレーム、減衰力を自動可変させるポジティブダンピングフォーク、リンクを用いたフルフローター式のリヤサスなど、最新鋭のメカをふんだんに奢った。
外観は、迫力ある4本出しチャンバーが最大の特徴。ナックルガードが際立つアッパーカウルなどフォルムもGPマシンに瓜二つだ。初代の400は、500に採用されたアンダーカウルとシートカバーがオプション設定。86年型で、フルカウルとアンダーカウルレス仕様が用意された。
全長(mm) 2,100
全幅(mm) 695
全高(mm) 1,185
シート高(mm) 770
軸距(mm) 1,425
車重(kg) 153(乾燥)
エンジン 水冷2ストスクエア4気筒
排気量(cc) 397
最高出力 59ps/9000rpm
最大トルク 4.9kg-m/8500rpm
燃料タンク容量(L) 22
タイヤ (前)100/90-16 (後)120/90-17

筆者プロフィール

沼尾宏明

1995年から2輪雑誌編集部に勤務し、後にフリーランスとして独立。
モットーは締め切り前納品で、旧車から最新の法改正、用品に至るまでジャンルを問わず幅広いバイク関連の知識を持つ。
1年半に及ぶユーラシア大陸横断という異色の経験もアリ。
1971年生まれ。