バイク乗りなら知っておきたい雨の日の注意点とは?
公開日:2018.04.18 / 最終更新日:2023.02.23
梅雨や秋雨など雨の季節はもちろんのこと、ゲリラ豪雨など天候の急変に備える意味でも雨対策は欠かせません。雨天走行の基本的な注意点からタイヤ、トラクションコントロール、ABSまで知識とノウハウをご紹介します。
1.「バイクで雨天走行」の基本的な注意点とは?
バイクに乗るなら雨天走行を考えないわけにはいきません。街中でもレインウェアを携帯する、シールドにはっ水コートや曇り止めを施しクリアな視界を確保するといった基本的な準備のほか、よく言われるように、路面が濡れた状況では、急な操作(急ハンドル、急加速、急ブレーキ)をしないことが第一です。
なお、レインウェアの選び方やシールドの雨対策などに関しては、下記にまとめてあるのでご覧ください。
● 悪天候でのライディング!そんなときの注意点は?
● 梅雨入り前に揃えたいレインウェア。その選び方とは?
● クリアな視界でストレスフリーな運転を
雨天走行での基本的な注意点
① スリップの原因となる急な操作をしない
急ハンドルおよび急な体重移動(急な荷重・抜重)、急加速、急ブレーキ(ブレーキ操作および急なエンジンブレーキ)は厳禁です。バイクのタイヤの接地面積は前後それぞれ名刺1枚分程度と言われています。このわずかなスペースで雨水を排水しながら路面をグリップしているため、ちょっとした急な操作でグリップを失いやすく、スリップしやすいのです。また、急ブレーキを回避するため、いつもより早めのブレーキも必要です。
② 速度を下げ、路面の危険に目を凝らす
雨天走行で大切なことは、路面の危険をいち早く見つけ、走行ラインを変えて避けることです。そのためには、いつもより速度を下げ、車間距離も多く取る必要があります。濡れた路面の危険の代表格と言えば、横断歩道や道路標示の白線・黄線(文字)、マンホールやジョイント部のような鋼材部分といった摩擦の少ない部分です。こうした路面を通過する時は速度を下げ、なるべく車体を立てた状態で通過します。
③ 水たまりの通過ではアクセル操作に気をつける
雨天だからと言ってアクセルを全閉状態で走ることは危険です。アクセルを全閉にしてしまうとリヤタイヤにトルクが伝わりません。タイヤの溝が減っている時、タイヤの空気圧が低い時、走行速度が高い状態で水たまりに突っ込んでしまうとハイドロプレーニング現象(リヤタイヤが浮く)を起こしハンドルが振られる恐れがあります。アクセル操作はパーシャル(わずかに開けている状態)+αの一定開度を保ちながらリヤタイヤにわずかにトルクをかけた状態で、なるべく車体を立てたまま通過しましょう。
2.雨天走行のリスクを低減してくれるバイクの装備
ここでは、雨天走行時の危険に備えた車体の装備をご紹介します。トラクションコントロールを装備するなど濡れた路面でも滑りにくいバイク、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)装備によりタイヤがロックしないバイクなど電子制御デバイスの進化と共に実用性が高まった先進装備のほか、最も身近でダイレクトに実感できるタイヤ選びも雨天対策として有効です。
1.タイヤ
雨天走行に適したタイヤとはどんなタイヤでしょうか。DUNLOPモーターサイクルタイヤ部の深澤さんに聞きました。
① タイヤの溝が多ければ多いほど排水性は上がる
ただし、溝が多くなると路面との設置面積が少なくなり、乾いた路面でのグリップでは不利になります。
② シリカが多く配合されたタイヤの方が有利
タイヤに含まれる様々な配合剤のうちシリカ(二酸化ケイ素)という物質は、発熱の抑制やウェット路面での摩擦力の向上に効果を発揮します。
③ ラジアルとバイアスではそれほどの差は出ない
同一パターン、同サイズのものがないため参考意見となりますが、①のパターンや②の配合剤ほどには両方に差は出ないとのことです。
なお、深澤さんにDUNLOPのおすすめパターンを聞いてみました。
● SPORTMAX ROADSMARTⅢ
ラジアルタイヤラインナップの中で最もツーリングに向いたタイヤです。大型の車両で長距離のツーリングに使用することを想定しており、ロングライフや衝撃吸収性に加え、高いウェットグリップにより雨天でのツーリングも安心して走れます。
● SPORTMAX GPR300
シティユースからツーリングまでを想定したツーリングラジアルタイヤで、街中での軽快性を考慮しており、十分なウェット性能も確保しています。サイズラインナップも250ccから大型車両まで幅広くラインナップしており、日々の通勤や通学にもおすすめです。
2.電子制御デバイス
雨天走行が怖いのは、濡れた路面でタイヤが滑るからですが、その原因は、アクセル操作やブレーキ操作、荷重の掛け方など、人間側にあることがほとんどです。その人間側の操作ミスを補ってくれるのが電子制御デバイスです。特に、必要以上のパワーが路面に伝わりスリップすることを防いでくれるトラクションコントロールシステム、急制動時などでタイヤのロックを防いでくれるABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は、濡れた路面などの低摩擦路でバイクの挙動を安定させてくれます。
① ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)
急ブレーキをかけた時や滑りやすい路面で強くブレーキをかけてしまった時などに作動し、タイヤがロックすることを防ぐための装置。「タイヤがロック→スリップ→転倒」といった危険を防いでくれます。ただし、砂利道や未舗装路、新雪路などでは制動距離が長くなる傾向があります。
通常は前後輪ともに装備されますが、排気量の小さなスクーター等では前輪のみに装備した1チャンネルABSもあります。ABSは世界的に装着義務化の傾向にあり、国内でも新型車は2018年10月から、継続生産車も2021年10月から装着が義務化されます(※125ccクラス以下はCBSでも可)。
② CBS(コンバインド・ブレーキ・システム)
前輪または後輪のブレーキをかけると、もう一方もバランスよく自動でブレーキをかけてくれる前・後輪連動のブレーキシステムです。小さなスクーターでは、急制動時につい左ブレーキレバーをわしづかみにしてリヤタイヤがロック、転倒につながることへの対策として採用されています。また、スーパースポーツバイクに採用されることもあり、急制動時のピッチングを抑制するなど、速く走らせるうえでも安定した挙動を実現しています。Hondaでは、CBSとABSを組み合わせた「コンバインドABS」「電子制御式コンバインドABS(写真は、ゴールドウイング ツアー)」もスポーツバイクを中心に採用されています。
③ トラクションコントロールシステム
発進時や加速時にアクセルを開けた時、そのトルクが強すぎた場合はホイールスピンにつながり危険です。その際に、トルクをカットしたり弱めたりしてタイヤの横滑りを防ぐのがトラクションコントロールの目的です。近年では、エンジンパワーを抑え気味にするなど出力特性と組み合わせることで、走行モードに「レイン(雨天走行)」モードを設定する車両(写真は、ヤマハMT-10 SP ABS)も増えています。
いかがでしたか。運転技術やそのための知識はもちろんのこと、タイヤや電子制御デバイスに気をつかうことで雨天の走行も安心して楽しめるようになりますよ!