無料で使うならコレ!? バイクでナビアプリを使ってみた
公開日:2018.09.12 / 最終更新日:2023.02.17
バイク運転時の必須装備となりつつあるのが、スマートフォンによるナビアプリです。そこで今回は、無料で使えるナビアプリ3種のルート案内を実行し、実際に走行してみたインプレッションをお届けします。
ナビゲーションの実力、地図や案内の特性、その違いを知る!
今回紹介する無料ナビアプリは次の3つです。どれもダウンロード、利用ともに基本無料で行うことができ、比較的メジャーなものばかりです。3つとも無料とは思えないほど多機能なので、ここではバイク運転時のナビ機能を中心に、主な特徴を紹介します。なお、今回のインプレッションでは、iPhone7をバイクに固定して実際に走行しました。
1.Googleマップ(グーグルマップ)
Google社がPCおよびモバイル向けに提供している世界対応の地図です。ナビ機能は「Googleマップナビ」と呼ばれています。カーナビゲーションのほか電車・バス等の乗り換え、徒歩でのナビゲーションにも対応しています。ナビゲーション専門のアプリではないのですが、Googleマップの圧倒的なシェアも手伝ってか、多くの人が利用しています。
【Good!!】経路は複数提示される
目的地までのルート案内は、自動車モードを使います。経路は複数表示されるので、自分で選んで出発します。渋滞状況も踏まえたルート表示がわかりやすく、目的地までの距離と必要な時間が提示されます。また、走行中に渋滞状況が変わった時は、ルート変更を薦めてくれます。
【Good!!】マイマップの共有もできる!
出発地から目的地までの間に立ち寄る経由地の複数追加(右キャプチャの○A・○B)や高速・有料道路・フェリーの使用可否なども選択でき、長距離ツーリングでの利用に便利です。Googleマップに経由地を地点登録(マイプレイス)しておき、マイマップとしてルートを作り、ツーリングメンバーに共有しておくこともできます。これならツーリング途中ではぐれてしまっても先の経由地で合流できるので安心です。
【Bad…】狭い山道や農道への案内に注意!
曲がるべき交差点で曲がり損ねるなど、ルートを間違った時のリルート案内は素早いのですが、もともと経路の設定に「幹線道路優先」といった機能がないので、狭い山道や細い住宅地、田んぼのあぜ道のような農道にジグザグに案内されることもあり注意が必要です。幹線道路優先はカーナビでは基本的な機能なので改良が待たれます。
【使い勝手】文字は少し小さ目で慣れが必要
Googleマップナビの案内画面は少し独特です。まずナビゲーションの基本機能である地図の縮尺変更をするための「+」「-」ボタンがありません。縮尺変更のためには2本の指でピンチイン・アウトする必要があり、グローブをはめたライダーには難易度が高いと言えます。
また、経路を示す矢印や数字が小さく、交差点名や道路名などもグラフィック処理されていないため、とても簡素です。道路のレーン表示もとてもわかりにくいものです。走行中に一瞬で判別するには慣れが必要なので、インカムなどで音声案内を聞いたほうがよいでしょう。
2.Yahoo! カーナビ(ヤフー カーナビ)
ヤフー社が無料で提供する本格的なカーナビアプリ。地図アプリがナビ機能を提供するのではなく、あくまでカーナビであることから、画面構成も見やすく、使い勝手に優れています。JARTICの道路交通情報とGPSによるプローブデータを用いた渋滞情報を無料で提供し、データ更新料も一切不要とあって、今後確実にシェアを延ばしていくと思われます。なお、利用にはYahoo! JAPAN IDでのログインが必要です。
【Good!!】なんたって使いやすい!
当たり前ですが、純然たるカーナビなのでとても使いやすいのが特徴です。画面のレイアウト、表示内容も本当に欲しい情報ばかり。特に、走っている道路の最高速度標識や数百メートル先にある交差点のレーン案内は知らない土地を走る時にとても安心です(右キャプチャ)。矢印や数字、文字も大きめで、交差点などのグラフィックも日本人には見慣れたもの。今までクルマのカーナビを使っていた方も満足できるレベルです。
【Good!!】安全運転に役立つ情報!
Yahoo! カーナビの特徴のひとつに安全運転支援機能があります。先に挙げた標識アイコン(最高速度、ゾーン30、一時停止、踏切あり等、交通事故多発箇所)表示機能のほか、スピードが出やすい区間に近づくと画面上に「SLOW」アイコンを出したりナレーターの音声で注意喚起してくれます。また、「運転力診断」機能が備わっていて、運転後に自分の運転傾向の結果を見ることもできます。こうした機能は他のアプリにはない魅力的なものです。
【Bad…】しいて挙げるならば…
無料アプリであることを考えれば、正直不満はありません。市販のカーナビには及ばないまでも、自車アイコンの色を変える、表示店舗を決めるなど細かな設定もできます。要望としては、経由地の追加もできる「ルート設定」をメニューの並びではなくトップ画面に表示してほしいこと、さらにはルート設定の際に、国道や県道など幹線道路優先を加えてほしいこと、検索できるスポットを増やしてほしいことくらいです。
【使い勝手】カーナビとして不満なし。
ルート案内が目的のカーナビとして見れば、不満はありません。とても使い勝手の良いアプリで、ライダーにもオススメできます。正直、インカムがいらないほど見やすい画面表示ですが、逆光時や画面の反射を考え、インカムを使用したほうが安全でしょう。地図の縮尺変更はピンチイン・アウトのほか画面上の「+」「-」ボタンでもでき、グローブをはめていても押しやすい大きさでした。
また、高速道路で標示される、いわゆるカーナビ然とした画面、サービスエリアのコンビニやファーストフードまで表示してくれる機能には安心感があります。80km/h規制などの標識もしっかりその都度切り替わっていて、これには関心しました。80km/hの規制区間になったことに気付かずにスピードオーバーで一発免停!なんてことも防いでくれるでしょう。
3.MAPS.ME(マップス ミー)
オランダのMy.com B.V.社が提供しているオフライン地図とナビゲーションの無料アプリ。オフラインの地図データをあらかじめ端末にダウンロードしておけば、ナビゲーション機能を利用することができます。表示される地図は、地図のWikipediaとも言われる「OpenStreetMap」です。毎日、何百万人もが利用するオープンソースのマップです。海外では旅行者からとても支持されているアプリです。
【Good!!】「圏外」でもナビゲーションできる!!
MAPS.MEなどオフライン地図の強みは、何と言ってもインターネット圏外でも使える点です。上記2つのアプリはネット環境でなければ地図すら表示できません。登録しておいたスポットもルートも全て無駄になってしまいます。
一方、MAPS.MEならば登録地点などの情報はオフライン地図上に残っているので、圏外になっても登録スポット間のルーティングが可能です。ツーリングの途中で、山岳ワインディングや林道、へき地を走る予定なら、あらかじめ該当エリアの地図をダウンロードし、立ち寄りスポット等を登録しておけば、GPSナビゲーションによりルートを間違うことはありません。
下のキャプチャは、奥多摩周遊道路です。左の写真は圏外になった時のGoogleマップ、右はMAPS.MEです。あのツーリングのメッカ、奥多摩でさえも圏外は多々あります。出発前に東京都や山梨県、神奈川県などの地図をダウンロードしておけば、圏外になっても安心です。
【Bad…】国内対応できていないのが厳しい!
MAPS.MEは海外製アプリなので、国内対応しきれていない点が難点です。なお、今回のテストでは画面左上に表示されるはずの「交通状況」が利用できませんでした。JARTICの渋滞情報には対応していないようですし、プローブデータが取れるのかも不明です。
ただ、ナビゲーション機能の基本とも言える、一般道と高速道の優先選択、一方通行への進入禁止などに対応できていないようですので、距離や時間を含め、ルーティングに正確性がありません。日本の交通環境や法規走行では、正直厳しい印象です。国内利用に関しては、ナビゲーション機能はおまけと考え、あくまでもオフライン地図として「万が一の安心」のためにインストールしておくのが良いかもしれません。
また、該当エリアの地図をダウンロードしておかないと検索にも出てこないので注意が必要です。さらに、地図上に登録されている道やスポットも数年単位で古いものが残っていることが指摘されています。「OpenStreetMap」なので、誰かが更新しなければ古いままなのです。ちなみに、筆者の自宅近くの蕎麦店も、数年前にリニューアルしたのですが、店名がチェーン店時代の古いままで掲載されていました。
【使い勝手】シンプルで使いやすいが…
操作性はとてもシンプルで、交通状況が出ていなくてもルーティング経路自体に問題はありません。街道名がやたらと出ている点は、このアプリの特徴と言えます。アプリ上での検索もBooking.comやUBERと提携するなど、全く使えないわけではありません。ただし、$表示を見ると、やはり海外製であることを感じます。いろいろと検索したところ、スポット登録件数が多いとは言えないので、検索からのルーティングは微妙です。
やはり、海外や離島を旅行するときや、ネット環境がダウンするような災害時に備えてインストールし、地図をダウンロードしておくのが良いと思います。ちなみに、Googleマップにも本来オフライン機能が備わっているのですが、日本国内では使えない仕様となっているので、オフライン地図としてのMAPS.MEの優位性はしばらく続きそうです。
なお、画面左下に速度表示がありますが、ワンテンポ遅れて表示される感じです。バイクのスピードメーターと見比べると誤差は5km/h以内に収まっていたので、自転車などで使用した際、目安にはなりそうです。
ナビゲーションの実力、地図や案内の特性、その違いを知る!
3つのアプリで同じルートを検索してみました。東京都稲城市の公園から多摩川を橋で渡り、小金井公園までの約11kmです。検索タイミングに数分間の誤差はありますが、ほぼ影響はないと考えます。
まず、Googleマップは複数のルート候補を提示しています。Yahoo!カーナビはGoogleマップの最速ルートより「6分遅いルート」を提示しています。逆にGoogleマップが6分早い理由は、多摩川を渡るのに稲城大橋を利用しているからです。稲城大橋は中央道・新宿方面のみに接続していますが、2010年に東京都道路公社が解散ののち無料開放されました。こうした微妙な扱いの元有料道路をしっかり活用したGoogleマップは、各種スポットの検索や交通情報も含め、“情報に強い”という印象を受けました。
MAPS.MEは必要な時間を「13分」と提示しており、普通に考えて有りえませんから、ナビ機能としては落第です。ただし、経路自体に大きな問題はありませんから、到達時間を気にしなければ有効です。インターネットがダウンした災害時や海外旅行時にも経路を示してくれるのですから、やはりインストールはしておきたいですね。
いかがでしたか? 今回は無料アプリにこだわってみました。筆者の結論としては、「3つともインストールしておきたい」です。普通に街中で使うならGoogleマップ、高速道路を経由するならYahoo!カーナビ、林道ツーリングや山岳ルートならMAPS.MEであらかじめ準備しておくといった具合です。皆さんもぜひ試してみてください!