バイクのエンジンがかからない原因と対処法を徹底解説!
公開日:2023.07.24 / 最終更新日:2023.07.24
最近のバイクは信頼性も高くなりましたが、機械ならトラブルが起こっても不思議ではありません。
そんなときも原因を突き止めて対策すればエンジンはかかるようになるものです。
今回はエンジンがかからないときにチェックするポイントや対処法を徹底解説します。
バイクのエンジンがかからない時にまずチェックするポイント
ツーリング先などで突然エンジンがかからなくなった場合にまず確認する事を解説することにしましょう。
意外に単純なことで解決してしまうかもしれません。
キルスイッチがOFFになっていないか確認する
セルが回るのにエンジンがかからない場合には、まずキルスイッチがOFFになっていないか確認しましょう。
キルスイッチは緊急時、強制的にエンジンを停止させるスイッチで、多くのバイクではハンドルの右側に付いています。
気づかないうちにキルスイッチに触れてオフになっていたり、誰かにスイッチを触られてオフになっている可能性があります。
キルスイッチがオフになったままセルを回し続けるとバッテリー上がりの原因になるので、エンジンがかからない際には最優先でキルスイッチを確認をしましょう。
立ちゴケや転倒をした場合
立ちゴケや転倒した場合、エンジンがかからなくなることがあります。
キャブレター車、インジェクション車それぞれの対処方法について解説します。
キャブレター車
キャブレター車が転倒した場合、キャブレター内のフロートからガソリンが漏れてエンジン内部に流れ込み、ガソリンが濃くなりすぎてエンジンがかからなくなるケースがあります。
そんな時は、バイクを起こしてからしばらくして放置しておくと燃焼室内のガソリンが少しずつ揮発してかかるようになります。
もしプラグを外してみてガソリンで濡れている場合は、プラグをウエスで拭いて乾かしてから取り付けてみてください。
裏技としてスロットルを全開にしてエンジンを始動してみるという方法もあります。
キックやセルくらいの低い回転でスロットルを全開にすると燃料を吸い込みにくくなるので余分なガソリンが排出され、エンジンがかかるようになるのです。
エンジンが始動してそのままにしておくと空気とガソリンの状態が適正になったところで回転が上がりますから、適当なところでスロットルを戻すようにしてください。
この方法は2ストロークや古い4ストローク車に使われている強制開閉式キャブレターには効果的ですが、80年代以降の4ストに使われているCVキャブレターの場合はエンジンの回転数に応じてスロットルの開度が調整されてしまうので、強制開閉キャブレターほどの効果はありません。
インジェクション車
インジェクション車には角度センサーが搭載されており、車体を倒すと角度から転倒を検知して危険防止のために電気系統を強制的に遮断する事があります。
こういう場合はキルスイッチとメインキーをオフにして5分程待ってから、再度オンにしてエンジンがかかるか確認すると良いでしょう。
ガス欠になっていないか確認する
当たり前の事ですが、ガソリンがないとエンジンはかかりません。
燃料計のついている車両であれば燃料計を確認してみましょう。
燃料計のないバイクであれば、タンクキャップを開けて中身をスマホのライトなどで照らして目視で確認してみてください。
ガソリンはタンクの見えない場所に溜まっている可能性もあります。
そんなときは車体を軽く揺らしてみてください。
ガソリンが少しでも残っていればチャプチャプと音がするはずです。
ガス欠になってしまった場合は近隣のガソリンスタンドまでバイクを押していくか、ガソリン携行缶を借りて給油を行います。
近隣にガソリンスタンドが無い場合はレッカーサービスを利用することになります。
フューエルコックの確認
キャブレターモデルのバイクには、タンクからキャブレターにガソリンを流すためのフューエルコック(ガソリンコック・燃料コック)というパーツがあります。
このコックがオフになっているとガソリンが流れないため、タンク内にガソリンがあってもガス欠と同様の状態となります。
フューエルコックがオフになっていないかを確認をしましょう。
フューエルコックがONになっている状態でガス欠になった場合、コックをRES(リザーブ)に切り替えてみてください。
RESは別名予備タン(予備タンク)と言われます。
つまりガス欠になった時用の予備燃料なのです。
切り替えたらキャブに燃料が行き渡るまで少しだけ待ってエンジンをかけます。
予備タンの容量は少ないので、早めにガソリンスタンドを探すようにしてください。
ギアがニュートラルに入っているか確認
車種によってはギアが入っているとエンジンがかからない場合があります。
ギアがニュートラルに入っているか確認してエンジンをかけてみてください。
サイドスタンドが出ているか確認
車種によってはサイドスタンドが出ている状態だとエンジンがかからない場合があります。
こういったマシンでスタンドの根元に泥などが付いたりサビているとサイドスタンドが最後まで上がり切らず、センサーが反応していない可能性もあります。
サイドスタンドの状態を確認し、サイドスタンドが完全にたたまれた状態でエンジンをかけるようにしてください。
バッテリー上がり
セルモーターを回す際には大きな電気を使用するため、バッテリーの電圧が下がるとエンジンをかけることができなくなります。
バッテリー上がりの特徴として、
・セルモーターが回らず無音
・セルの回りが弱かったり、「ジジジ」「カチカチ」といった音がしてエンジン始動できない
・ヘッドライトなどのランプ類がいつもより暗い
などが挙げられます。
このような症状が確認できる場合、まずはバッテリー関係の不具合を疑うと良いでしょう。
電圧計やテスターを使用して確認すると正確です。
バッテリーが正常であればエンジン停止時で12V〜13Vの電圧があるはずです。
セルの回り方が弱い場合、キャブレター車であれば押しがけでエンジンをかけることができる可能性があります。
インジェクション車は押しがけでのエンジン始動は困難と考えて良いでしょう。
押しがけはギアを2速か3速に入れてクラッチを切り、バイクを押してスピードついたらクラッチを離すというやり方です。
慣れていたら1人でもできますが、初めてのときやバイクが大きい場合は2人以上でやったほうがベター。
ただし、バックトルクリミッターやスリッパークラッチがついている車両は、押しがけしてもクラッチが滑ってしまってエンジンをかけることはできません。
そういったバイクの場合は、バッテリースターターやブースターケーブルを使用したジャンプスタートでエンジンをかけることになります。
一度上がってしまったバッテリーは放電の具合によって性能が大幅に低下することもあり、完全に放電してしまった場合は再充電しても使うことができません。
再充電をしたら電圧を確認し、十分な電圧まで上がらないようであればバッテリー交換をする必要があります。
ヒューズ切れの確認
バイクには電子部品や回路を保護するためのヒューズが搭載されています。
想定以上の強い電気が流れた時、ヒューズが切れることでそれ以上の電気が流れないようにして電子部品を守るのです。
ヒューズが切れるとその回路は電気が流れなくなります。
エンジンに関係した回路でヒューズが切れると、エンジンは始動できません。
もしも電気系がまったく反応しない場合は、ヒューズが切れている可能性があります。
多くのバイクはシート下やサイドカバーにヒューズボックスがあるため、切れているヒューズがないか確認します。
ヒューズは透明で内部が見えるようになっているので、もしも切れていたら同じアンペア数のヒューズに交換してください。
ヒューズが切れていないのに電気系がまったく反応しない場合は、断線かバッテリー端子が緩んだりしている可能性もあります。
チョークを引いていない
基本的にキャブレター式のバイクの場合、エンジンが冷えているとかかりにくいのでチョークを引いて始動するのが正規のやり方です。
特に寒い時期はチョークを引いていないとエンジンがかかりにくくなります。
エンジン始動時にはチョークを引くようにしましょう。
バイクのエンジンがかからない原因
ここまでは比較的単純な要因でエンジンがかからなくなった場合について説明してきました。
しかしバイク自体の不調でエンジンがかからない場合もあります。
そんなときに良くあるケースを紹介することにしましょう。
ガソリンの劣化
ガソリンは長時間経つと劣化してしまい、目詰まりを起こしエンジンがかからなくなることがあります。
タンク内にサビが発生している場合にも同様な事が起こるケースがあります。
もしも古いガソリンが入っていてエンジンがかからない場合は、一度全て抜いて新しく入れなおしてみてください。
自分で入れ替えに自信がない場合は、最寄りのガソリンスタンドで対応してもらえるか確認すると良いでしょう。
スパークプラグの状態
スパークプラグの不調で火花が飛ばなくなるとエンジンはかかりません。
プラグレンチを使用してプラグを外し、プラグの先端を車体の金属部分に当ててセルを回す事で火花が飛んでいるか確認することができます。
この際に直接プラグに触れていると感電するため、プラグキャップを持って作業します。
ガソリンでプラグが濡れていてもエンジンはかかりません。
プラグを外してみて、ガソリンで濡れていたらウエス等でガソリンを拭き取って乾かしてください。
速乾性のパーツクリーナー等を使用してプラグを乾かしても良いでしょう。
ちなみにプラグのトラブルが疑われる場合は、迷わず新品に交換することをオススメします。
エンジン内部にガソリンが溜まっているような状態だと何度乾かしてもプラグが濡れてしまいます。
そんなときはプラグを外した状態でキック、またはセルを回してやるとガソリンがプラグ穴から放出されます。
液体の状態のガソリンが勢いよく出てきたときに火花が飛ぶと危険なので、キルスイッチはオフにしたいところ。
もしもキルスイッチをオンにしたままセルを回すのであれば、プラグをプラグキャップから外しておくようにしてください。
古いバイクでプラグに火が飛ばないときは、プラグキャップを取り付けているコードがボロボロになっていることもあります。
プラグキャップを手で軽く引っ張って(強く引っ張らないこと)、簡単にコードから抜けてしまうようであれば、中の芯線が見えるまでプラグコードを少しカットしてプラグキャップをねじ込んでみると良いでしょう。
吸気系
空気を取り込むことができないとエンジンはかかりません。
始動できなくなるくらいまでエアクリーナーが汚れることはほとんどありませんが、意外に多いのがウエスなどでエアクリーナーの空気取り入れ口を塞いでしまっている状態。
シート下にウエスなどを入れていると、エアクリーナーを塞いでしまうことがあるので注意が必要です。
また、空気の量が多すぎてもエンジンはかからなくなります。
インシュレーターに大きな亀裂が入っていたり、取り付けボルトが緩んでいないか確認してみてください。
排気系
排気ができないとエンジンは不調になったり、かからなくなってしまいます。
4ストロークのバイクでマフラーが詰まることはほとんどありませんが、2ストロークのバイクはカーボンが内部に溜まって詰まってしまうことがあります。
特に古いバイクの場合は要注意。
昔のオイルは、カーボンが溜まりやすかったのでマフラー内部が詰まっている可能性もあります。
酷い詰まりは入口側に発生することが多いので、エンジンから取り外してエキパイの中を確認してみてください。
キャブレターの状態
キャブレター車の場合、キャブレターが詰まることでエンジンがかからなくなることがあります。
特に多いのは、長期間放置したことからキャブレター内部で緑青と呼ばれる錆が発生したり、ガソリンが劣化したタール状の成分が溜まってしまっている状態です。
キャブレターの詰まりを解消するためには、キャブレターを分解し、燃料が流れるジェット類の詰まりを取り除く必要があります。
またキャブレターほどではありませんが、インジェクションのバイクでも長期間放置しておくとガソリンが劣化してインジェクターが詰まってしまうことがあります。
電気系統の異常
燃料ポンプやイグニッション、イグナイターなど電気系統で異常が出てもエンジンはかからなくなります。
電子部品を使っていない旧車であれば整備することで復活させることができる場合もありますが、ブラックボックスになっていて内部が確認できないパーツは交換するしかありません。
コンピュータの故障
コンピューターやイグナイターが壊れた場合、確認するのは難しいものです。
もしも友人で同じバイクに乗っている人がいるとしたら、交換させてもらって確かめるのが手っ取り早いのですが、それが難しい場合はバイクショップに依頼するのが無難。
特に最近のバイクの電気系統は知識がないまま手を入れるのが難しいものもあります。
ちなみに80年代のバイクの中にはイグナイターが壊れやすいと言われているものもあります。
「調子よく走っていたのに、突然エンジンがかからなくなった」というような場合は、イグナイターに問題があるかもしれません。
エンジンがかからないトラブルを防止するためには?
エンジンがかからなくなるトラブルは極力避けたいもの。
そのためには、どんなことに気をつけていれば良いのでしょう?
定期的にバイクに乗る
エンジンがかからないというトラブルは、長期間乗っていなかったバイクを再び乗り始めようとしたときに多く見られます。
可能であれば放置はせず、最低でも2週間に1度、30分以上乗ることをオススメします。
梅雨、真夏、冬などで長期乗らない場合は、予めバイクからバッテリーを取り外し、バッテリーを充電しておくとトラブルのリスクを軽減できます。
予め数ヶ月以上乗らない事が分かっている場合、ガソリンに劣化防止剤を入れておくのも良いでしょう。
キャブレターのバイクであれば、キャブレターのドレンボルトからガソリンを抜いておく方法も有効です。
また燃料コックがあるバイクの場合、OFFの位置があったら必ずOFFにしておいてください。
定期的なメンテナンスを行う
バイクには多くの消耗品が使われており、スパークプラグやエアクリーナーなど車両の外側から簡単に確認ができないパーツもあります。
パーツには寿命があるため、交換の目安を把握して常に良好な状態を維持しておきたいもの。
車検の無い250cc以下のバイクは、定期的に法定12ヶ月点検や24ヶ月点検を受けると安心です。
ロードサービス付きの任意保険への加入
トラブルの防止とは異なりますが、万が一に備えてロードサービス付きの任意保険へ加入すると安心。
エンジンが始動しないトラブルだけでなく、様々な事態に対処することができます。
エンジンがかからない場合は必ず理由がある
エンジンがかからなくなってしまうと「どこか故障してしまったのでは…」と焦ってしまうかもしれませんが、単純な理由でエンジンがかからない可能性もあります。
まずは落ち着いて冷静にバイクの状態を確認してみてください。
普段からメンテナンスをしておけば防げるトラブルもたくさんあるはずです。
そしてもし、自分で対応することに不安がある場合は、信頼のおけるバイクショップに相談する事をオススメします。