バイクのエンジンには大きく分けて2ストロークと4ストロークが存在し、エンジンの構造が大きく異なり、出力特性なども違います。具体的にどんな違いがあるか見ていくことにしましょう。

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2ストロークの爆発回数は4ストロークの2倍


現代のバイクのほとんどは4ストロークエンジンを搭載しています。
吸入、圧縮、爆発、排気という4つの行程を1つずつ行っていきます。


これに対して2ストロークではピストンが上昇する時に吸入と圧縮、ピストンが下る時に爆発と排気を行うので工程が2つしかありません。

4ストロークの場合は、クランクシャフトが2回転で一回爆発しますが、2ストロークの場合は毎回爆発することになります。
その為に同じ排気量であれば2ストロークの方がパワーを出すことが出来ます。


4ストロークのエンジンの特性を大きく左右するのはカムシャフトですが、2ストにカムはありません。
シリンダーに開けられたポートの大きさや高さがカムと同じ役割を果たします。

バルブ機構がないので軽量かつシンプルにすることができ、部品点数も少なくなるのでエンジン軽く、バイク自体の価格も比較的安くすることが可能(90年代の2ストローク・レーサーレプリカは最新装備を満載したので高額になってしまいましたが)です。

主流は2ストロークから4ストロークへ


今でこそ新車では4ストロークバイクばかりを目にしますが、日本のバイクメーカーが世界に挑戦するようになった60年代、国産バイクの主流は2ストロークでした。

ホンダ以外のメーカーは2ストロークバイクばかり作っていたのです。


しかし、当時でも大排気量の2ストロークはあまり数が多くありませんでした。
80年代中頃まで小排気量ではビジネスバイクやスクーターまで2ストロークバイクの独断場とも言えるような状態だったのに、なぜ大排気量2ストロークバイクが少なかったのでしょう?

理由の一つは、2ストロークはⅠ気筒あたりの排気量が大きくなりすぎると効率が悪くなること。
そして上級モデルでは静かで煙が出ない4ストロークが好まれた為です。

特に日本では免許制度の関係で大型バイクは高嶺の花。
2ストロークは小排気量車に多かったので、せっかく大型に乗れるのなら、4ストロークに乗りたいという意識が働くライダーも少なくありませんでした。

4ストロークは環境対策で有利


2ストロークが姿を消してしまったのは、主として燃費と排ガスの問題があげられます。
燃焼途中で排気が始まってしまうことから完全燃焼させることが難しく、ピストンやシリンダーの潤滑の為、ガソリンにオイルを混ぜなければならなかったので、排気にはオイルを燃やしたことによる白煙が出てしまいます。

こういった理由から4ストに比べると排気ガス中にHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)が多く含まれていて、厳しくなる排気ガス規制に対応することが出来ず、燃費も良くないことから年々厳しくなる排気ガス対策が難しくなってしまったのです。


対する4ストロークですが、NOx(窒素酸化物)の割合こそ2ストロークに比べて多かったものの、排ガスや燃費に関しては比較的対策が行いやすく、98年から始まった排ガス規制に対しても対応していくことが出来ました。

近年のマシンではインジェクションを使用し緻密に空燃比をコントロールしているので、排気ガスのクリーンさと燃費に関しては、以前の2ストモデルとは比較にならないほど優れているのです。

結局どっちの方が優れているのか?


では仮に排ガスの点を除いたとしたら、2ストロークと4ストロークとどちらのエンジンがバイク用として優れているのでしょう?

これは一概に言うことは出来ません。
4ストロークの扱いやすさ、信頼性、静粛性、燃費性能などは非常に魅力です。


ただ、2ストロークの軽さや瞬発力は4ストロークでは真似することができません。

最新バイクのエンジンは厳しい排ガス規制に対応することが前提になっていることを差し引いて考える必要がありますが、250以下の排気量に関しては、現在のスポーツバイクよりも90年代の2ストロークバイクの方が動力性能に関しては圧倒的に高いことは確かです。


ところが排気量が大きくなってくると2ストロークと4ストロークのパワーの差は縮まります。
例えばストリートバイクで最速のRG500Γ(輸出仕様)は95馬力で156kg(乾燥重量)。


若干排気量は大きくなりますがZX-6Rは126馬力で197kg(車両重量)。
ほぼ同じ排気量ではありませんが、最新の600スーパースポーツであれば当時の2スト500を超えるパワーを発揮していることがわかります。

ちなみにチューニングするとまた少し話が変わってきます。
旧車のレースでは、現在もまだRG500Γをチューニングしてサーキットを走っているライダーがいますが、速いマシンであれば600ccのスーパースポーツを超えられないまでも遜色のないペースで走ることが出来るといいます。

最新マシンが車体や足回り、マネージメントシステムも進化していることを考えると、35年以上昔のマシンがここまでの速さを見せていることは驚きです。

競技モデルでは2ストロークも健在


ストリートマシンからはほぼ姿を消してしまった2ストロークですが、オフロードの競技車両に関してはまだ新車が販売されています。

4ストロークの乗りやすく、トルクのあるエンジンは確かにオフロードでも走りやすいのですが、限界でマシンをコントロールするライダー達にとっては、2ストロークはまだ魅力的な存在であるようです。
走るステージによっては軽量で加速に優れた2ストを4ストで超えることは難しく、また乾いた独特の排気音根強いファンが多いからです。

ただ、2ストロークが時流から外れてしまっているのは確か。
新しいマシンが登場してくることは考えにくいので、現行のマシンは改良されていくかもしれませんが、それもいつか消えていくことになるでしょう。

そして電動化の波が押し寄せてきたら、4ストロークも同じ運命をたどることになるのかもしれません。

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