ほとんどのバイクには、フロントのサスペンションにフロントフォークが採用されています。
路面のショックを吸収するだけでなく、バイクのハンドリングにも大きく影響する重要なパーツです。
しかし一口にフロントフォークと言ってもデザインや性能は様々。
どのようなものがあり、それぞれどんな特徴を持っているのか。
また普段どんなことに気をつけなければならないのかなど、ここで説明することにしましょう。

フロントフォークとは

フロントフォークは、インナーとアウターのパイプがスライドしてショックを吸収するサスペンションで、この構造のことをテレスコピックタイプと呼びます。

実はこのテレスコピックタイプのフロントフォークは、何十年もバイクのサスペンションとして使われ続けています。
それは量産車向けとして総合的に考えた場合、フロントフォークを超えるメカニズムが登場してきていないからです。

フロントフォークとは

フロントフォークは、フロントタイヤやホイールを左右から挟みこんで固定しているサスペンションです。
食事で使うフォークと同じ様に、二股になった構造のものをフォークと呼びます。
リアのサスペンションと違い、フロントはサスペンション機構だけでなく、ステアリングとしての機能を持たせないといけないので、あまり自由に設計することができません。
これまでテレスコピックタイプのフロントフォークが主流であり続けているのは、こういった理由があるからです。

フロントフォークの役割

フロントフォークには路面からの衝撃をクッションのように吸収し、バイクの乗り心地や快適性を向上させる役割があります。
また、リアのサスペンションと組み合わされることで、クルージング、減速、加速時など、様々な状態で車体の姿勢を適正に保つ役割があり、安定性やハンドリングにも大きく関係しています。

フロントフォークの仕組み

テレスコピックタイプのフロントフォークは、一般的にオイルダンパーとスプリングが組み合わされています。
インナーチューブ(内側の細いパイプ)が伸縮して振動や衝撃を吸収する仕組みです。

バネだけを使った場合、バネが縮むと同じくらいの勢いで跳ね返されてしまうことになります。
また、大きな衝撃があると何度も上下に揺れてしまって車体が安定しません。

そこでオイルダンパーによって、振動や衝撃を吸収します。
オイルダンパーは、オリフィスという細い通路をオイルが通り抜ける抵抗によって(ダンピングや減衰と呼ばれます)、緩やかに振動を吸収します。
乗り心地を良くするのであればダンパーはある程度柔らかくしておきたいところですが、大きなショックが入った時や急ブレーキなどでは、硬くしたほうが良い場合もあります。
状況によって求められる硬さが変わるので、オイルダンパーにはバイクの用途などによって、様々なメカニズムが採用されています。

正立フロントフォークと倒立フロントフォークの違い

前述したようにテレスコピックタイプのフロントフォークの基本システムは長年変わっていません。
しかし、その中でも性能を向上させるために進化していて、色々な形や機構が生まれてきました。

テレスコピックタイプのフロントフォークには2種類あります。
一つはインナーチューブ(細いパイプ)が上にあり、アウターチューブ(太いパイプ)が下にある正立フロントフォーク。

その逆でインナーチューブが下にあり、アウターチューブが上にあるものが倒立フロントフォークです。

正立フォークの特徴

正立フォークは、多くのバイクに採用されている、最も一般的なフロントフォークです。
コスト、性能、重量などのバランスが取れたサスペンションです。
フロントフォークは車体とのバランスが重要なため、しなやかなフレームのバイクには、正立フォークが組み合わされることが普通です。
また、スポーツバイクでもハンドリングやフィーリングを考え、敢えて正立フォークを採用している場合もあります。

倒立フォークの特徴


倒立フロントフォークは、競技用車両からフィードバックされた技術で、走行性能が高いバイクに採用されることが多いサスペンションです。
太いアウターチューブを頑丈なステムでガッチリと固定するので、強度や剛性が正立フォークより高いのが特徴。
走りを追求したバイクのために開発された倒立フォークは、内部のオイルダンパーなどにも高性能なものを使用することが多く、そのような場合は価格も高価になります。
ただし、量産車の中には、イメージだけを優先した倒立フォークもあり、こういったものは安価で、特に高性能というわけではありません。

フロントフォークのメンテナンス


フロントフォークは常に動き続けているので内部が摩耗し、オイルも汚れてきます。
本来の性能を発揮させ続けるためには、定期的なメンテナンスが必要です。

フロントフォークのオーバーホール


フォークオイルは、エンジンオイルと同様に使い続けると古くなり、劣化して粘度が低下します。
劣化が進むと衝撃や振動が多くなって乗り心地に影響します。
車種や使い方によって異なりますが、ストリートバイクであれば最低でも5,000km〜10,000kmを目安にフォークオイルを交換しておきたいところ。
ちなみにフォークオイルには様々な粘度(硬さ)があり、変更することでフォークの特性を変えることもできます。
ただし、硬いオイルは走っていると早いタイミングで柔らかくなってくる傾向にあります。

フロントフォーク下にあるドレンボルトを使えば、フロントフォークを取り外すことなくオイルを抜くことができ、フークのトップキャップ(蓋)を外せばオイルを入れることもできます。
ただ、このやり方ではオイルを完全に抜くことができず、フォークのオイル量も細かく調整することが難しくなるので、バイクショップなどでオイル交換をする場合は、フロントフォークを分解するやり方がほとんどです。
ここまでがフォークのオイル交換ですが、オーバーホールになると内容が少し変わります。
オーバーホールは新車時の性能に戻す作業なので、メタル(擦れ合う部分)などの交換や曲がりの確認などの作業なども必要です。

ダストシール交換


フロントフォーク内部にゴミが入らないようにしているのがダストシールと呼ばれるカバーです。
ゴムで出来ているので、長年使っていると劣化してひび割れ、内部にあるオイルシールに砂やほこりが入り込んだりする可能性があり、正立フォークの場合は雨水が入り込んで内部のパーツがサビてしまう場合もあります。
オイルシールに砂などを噛み込むと、オイル漏れにつながります。
そのため、ダストシールにひび割れや亀裂などを発見したら早めの交換が必要です。
ダストシールを交換する場合、フロントタイヤやフェンダーなども外し、フロントフォークを車体から取り外す必要があります。
更に倒立フォークでは、フォーク自体を分解しないとダストシールを交換することができません。

フロントフォークのオイル漏れ


オイルシールはゴムで出てきているので長く使っているとリップという部分が減ってきますし、異物の噛み込みなどで傷がついてしまうこともあります。
オイルシールからオイル漏れを起こしている場合、オイルシールの交換が必要です。


ただし、インナーチューブにサビが出ていると、オイルシールを交換してもサビによってすぐ傷がついてしまうので、オイルシールを交換しただけではオイル漏れは止まりません。
飛び石などでインナーチューブに傷が入っている場合も同様です。
こういった場合はインナーチューブの交換が必要になります。
古いバイクでインナーチューブが欠品になっているものなどは、インナーチューブだけを加工業者に持ち込み、再メッキを施すことになります。

いずれの修理もフロントフォークの分解が必要です。
ところがフロントフォークは特殊工具がないと分解することができません。
また、フロントフォークの構造によっては、分解や組み立てにも、専門知識や経験が必要になるとこがあります。
整備に自身がない場合は、バイクショップなどに相談するのが安心でしょう。

重要なフロントフォーク


バイク本来の楽しさを味わうのであれば、フロントフォークが正常に機能していることが絶対条件です。
錆の発生やゴミの噛み込みを防止するためにも日頃からの清掃を忘れず、傷などがついていないか普段から目視で点検することをオススメします。

筆者プロフィール

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