「今度の休みは久しぶりに泊まりでツーリングに行こうかな」と天気予報アプリを見ると、目的地の降水確率が50%でなんだか微妙……。そんな経験をしたライダーは多いのではないでしょうか?
ツーリングだけでなく、愛車の洗車や洗濯物を外干しするかどうかを判断するにも重要な判断基準となる降水確率とは、いったいどのような仕組みで発表されているのでしょうか。
またバイクに乗る上で、降水確率をどのように活用すれば良いのでしょうか。

今回は降水確率の定義や雨天の確率が高い場合の準備、ライディングの注意点に関して解説します。

降水確率とは

最低気温と最高気温、晴天か降雨かといった天気予報で必ず付随する情報が「降水確率」です。
一日中晴れる予報なら降水確率0%で、雨が決定している予報なら降水確率100%というのは分かりますが、晴れときどき曇りの予報で10%と30%の時があるのは、考えてみれば不思議な気がします。
そもそも降水確率とは何なのか?どの程度の信頼度があるのでしょうか?

降水確率の定義

気象庁から発表される降水確率は、指定された時間帯に指定された予報区域内で1mm以上の雨が降る確率のことを指しています。
天気予報における降水確率は1980年より発表されており、当初は主要都市に限定されていましたが、現在では全国の天気予報の発表区分と同じ142区域で発表されています。

降水確率は1mm以上の降水の有無の確率を示すもので、その時間帯の降雨が連続的なのか断続的なのか、また降水量がどれだけになるかを示しているわけではありません。

この降水確率を決定する際に参考にするのがデータです。
過去の気象条件や降雨実績などから、同じような条件だとどの程度の確率で雨になるかを予測しています。

確率論なので本来なら1%刻みで発表することもできますが、情報としての分かりやすさから一桁台は四捨五入しています。

例えば降水確率50%であれば、現在と似たような過去の気象条件を照会した時に50%の確率で1mm以上の雨が降ったという実績に基づいて確率を算出しています。

ここで注目しているのは「降るか」「降らないか」であり、時間は問題ではありません。
例えば午前と午後の降水確率が発表されていて午前が20%だった場合、夜中の12時から正午までの12時間のうちの20%分に相当する2時間24分は雨が降るだろうという事ではありません。

似たような100日分の気象データを集めてみたら、1mm以上雨が降った日が20日間あったときに、発表される降水確率は20%となります。
同様に1mm以上の降雨が基準となるため、数分の通り雨であることも、2時間降り続くこともあり得ます。

そのため、ツーリングを計画する際は降水確率と並行して降水量の確認も必要です。

降水確率と降水量の違い

雨が降る確率を示す降水確率に対して、実際に降る雨の量を表すのが降水量です。
降った雨がどこにも流れずその場に溜まった場合の水の深さで、気象台の雨量計などで観測してmm(ミリメートル)で表示します。

気象庁のホームページ内の「雨の強さと降り方」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html)によれば

1時間雨量が
10mm以上20mm未満を「やや強い雨」
20mm以上30mm未満を「強い雨」
30mm以上50mm未満を「激しい雨」
50mm以上80mm未満を「非常に激しい雨」
80mm以上を「猛烈な雨」

と表現し、強い雨では自動車のワイパーを速くしても見えづらく、激しい雨ではハイドロプレーニング現象(高速走行時にタイヤと路面の間に水膜が生じてグリップを失う現象)が発生すると書いてあります。

また歩行時に降水量が1mmなら傘がなくてもやり過ごすことができ、2mmになると傘が必要、5mmになると短時間でも傘が必要で、やや強い雨では傘をさしても地面からの跳ね返りで足元が濡れるようになります。

降水確率の定義でも説明しましたが、降水確率と降水量には関連性がないので、降水確率100%でも降水量は1mmで傘をささなくても済む場合もありますし、逆に降水確率が30%でもバイクの運転が危険な激しい雨(30以上50mm未満)が降ることもあります。

降水確率とは別に今後の降水量を知りたい場合、気象庁の「降水短時間予報(https://www.jma.go.jp/bosai/kaikotan/)」が参考になります。

このページには全国のレーダーとアメダスなどの観測値から作成した降水量分布、15時間先までの降水量分布の予報が掲載されており、アニメーションによってより具体的な降水量の予測が可能です。

降水確率が0%でも雨が降ることもある

降水確率は通常、1日に3回発表されて翌日24時までの6時間刻みの予報となります。
その時点で地元やツーリング先の降水確率が0%であれば、雨の確率は限りなく低いと考えるのが一般的でしょう。

しかし近年、特に夏場において線状降水帯と呼ばれる「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水を伴う雨域」(気象庁ホームページ・天気予報等で用いる用語から抜粋)が突然の大雨をもたらす場合があります。

その場合、複数の基準を満たした時点で気象庁から「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されますが、線状降水帯はあまりに突然発生するため通常の天気予報の降水確率では予測できず、天気予報の降水確率は低いのに局地的には土砂降りになるということもあります。

また線状降水帯ほどではなくとも、大気の状況が不安定な夏場は積乱雲が発生しやすく、30ん~1時間程度の単位で強い雨が降ることもあります。
そのため、降水確率がゼロだから絶対に雨は降らないと思い込まないようにしましょう。

ツーリングと降水確率

何ヶ月も前から準備をして温泉宿の予約もしたのだから、降水確率が60%でもとりあえず出発したい積極派や、降水確率50%だと出かけるのに躊躇する慎重派など、降水確率から受ける印象は人それぞれです。
結果的に降水量1mm程度でほんの少しだけ路面が濡れる程度だったら幸運ですが、それでも晴れの日と雨の日では路面の状態やライダーの緊張感が異なり、雨が降れば当然リスクが高まります。
せっかく楽しみにしていたツーリングでも、降水確率によっては潔く諦める決断力も必要です。

雨天走行は危険性が高い

ツーリングに限らず通勤や通学であっても、バイクにとって雨天走行は晴天時にも増して危険で注意が必要です。
降水量1~2mmのシトシト雨ならまだ大丈夫と思い込んでいるかも知れませんが、雨の降り始めは路面の砂やホコリが浮きやすく、しっかり降った後よりむしろ滑りやすいこともあります。

金属製のマンホールやキャッツアイと呼ばれる道路鋲などは、より一層滑りやすくなり、横断歩道や車線のペイントも雨水が混ざった浮き砂がスリップの要因となります。

バイクのコンディションも重要です。
まだスリップサインが出てないからといっても、新品タイヤと溝が減ったタイヤではトレッド面の排水能力に違いが出ます。

乾いた路面と雨に濡れた路面では摩擦係数が異なり、当然ですが濡れた路面ではブレーキも効きづらくなります。
ABS装着車であってもタイヤのグリップを超えて制動することはできないため、雨天路面によりロックするまでの時間や距離が短くなるので、結果的に制動距離は長くなります。

ライダーの体調の変化にも注意が必要です。
レインウェアがないと雨によって体温が奪われて身体の柔軟性が低下するため、とっさの際の動作が遅れる原因となり、レイングローブでなければ指先がこわばりブレーキやクラッチレバーのデリケートな操作が難しくなる場合もあります。

冬場であればヘルメットのシールドが曇りやすくなり、シールドに付着した雨水によって視界が遮られたり、対向車のヘッドライトで幻惑されることもあります。
雨天走行にはこうしたネガティブ要素しかないので、可能であれば避けた方が良いでしょう。

降水確率が何%までならツーリングに行ける?

現時点で雨が降っていなくても、降水確率を見ればこの先の天候変化は予測できます。そのために6時間先の予報があるわけです。

経験則的に言えば、天候の変化は偏西風の影響を受けて西から東に移り変わるパターンが多く、西から徐々に崩れて雨となり、回復する際もまた西から回復していきます。

時間を追うごとに降水確率が20%→60%→80%と上がっていく局面では、晴れ男としての自信があったとしても、客観的なデータとしては天候が回復する期待は薄いと言わざるを得ません。

逆に今晩は60%でも明日の出発時は40%で目的地は20%だったとしたら、走行中に天候が回復してくる最高のパターンかも知れません。

不幸にしてツーリングの予定が天気の下り坂とシンクロしてしまった場合、前日までに「中止確率」を決めておくと良いでしょう。
天気予報は多少怪しくてもしても、走り出せば何とかなるかもと淡い期待を寄せたくなる気持ちは理解できますが、気象庁によれば天気予報の精度(適中率)は全国対象の年平均で83%と高精度で、発表される降水確率の信ぴょう性はかなり高いと言えます。

その上で数字をどう評価するかは個人の判断によるところですが、目安として40%までなら用心のためレインウェアなどの雨装備を携行し、60%なら中止するぐらいの基準を設けておくと良いでしょう。

一番マズいのは、降水確率が上昇する中でノーガードで出発してしまうパターンです。
雨でもツーリングを決行する覚悟があるなら、相応の準備は不可欠であると肝に銘じておきましょう。

山にツーリングに行く際は注意

関東地方なら箱根、関西地方なら六甲に代表されるように、都会の喧噪を離れて自然やワインディングを満喫できる山地とツーリングの相性は抜群です。
箱根の大観山展望台は週末ごとに多くのライダーが訪れる関東を代表するツーリングスポットです。

東京から高速道路や有料道路をつないで一気に標高1,000mまで駆け上がるのは爽快ですが、山の天気は複雑で変わりやすいことも知っておくことが必要です。

さまざまなデータがありますが、気象庁のホームページでは高度が100m上がるにつれて気温は0.5~1℃低下するという気温の減率に関する説明があります。
また麓では晴れているのに山を登るにつれて霧が発生して路面が濡れていることもあります。

晴れていても標高が上がれば気温が下がり、地形などの要因で広域の天気予報と実際の天候が異なることもあるのが山の天気なので、出発時点では降水確率が低くても念のためにレインウェアを持参すると良いでしょう。
また、レインウェアは山頂部の気温が想像以上に低かった時の防寒着として使える利点もあります。

雨雲レーダー搭載アプリを使用するのがオススメ

スマートフォン登場以前と以降でライダーやツーリングの常識は一変しました。今では多くのバイクユーザーが愛車にスマホホルダーとUSB電源を取り付けて、いつでもどこでも最新の情報を手に入れることができます。

GPSを使った地図アプリはもちろんですが、同じくGPSで現在位置を反映させた雨雲レーダー搭載の天気予報アプリを使えば、これから向かうツーリング先の天気が一目で分かります。

自宅を出発した時は雲ひとつない青空だったのに、ツーリングルートを進むにつれて鉛色の雲がどんより立ちこめてきたら、休憩時にアプリを開いて向かう先の雨雲状況を確認して、雨に降られそうなら臨機応変にコースを変更するのがおすすめです。

急激な天候変化によって重大なアクシデントに遭遇しかねないキャンプツーリングの場合、天気予報アプリの重要性はより一層アップします。
また日帰りツーリングなら、予定を途中で切り上げて早めに帰宅するのも賢明です。

降水確率を考慮したプランでツーリングを楽しもう!

自宅の周辺や通勤・通学で走り慣れたルートでさえ、雨天時の走行には普段より気を遣わなければならないのに、初めてツーリングで出かける先となればできるだけ雨は避けたいものです。

PCやスマホで全国各地の降水確率が簡単に分かるようになり、さらにリアルタイムの降雨状況や今後の雨雲の行方をスマートフォンで知ることができる今、ツーリングに活用しない手はありません。

降水確率と降水量の違いを理解し、降水確率が高くても降水量が少なく小雨程度で済む場合と、降水確率が低くても降水量が多く土砂降りになる可能性があることを知っておくことも、ツーリングの予定を立てる際には重要で、不安を払拭するには念のためレインウェアを持参することも有効です。

降水確率の精度が80%を超え、15時間も先の降水量も予測できるのなら、どうやら雨が降りそうなのにわざわざ出かけるのはデメリットはあってもメリットは何一つないと言っても良いでしょう。

「とりあえず出発すれば後は何とかなるだろう」ではなく、ツーリングのリスクをなるべく軽減するためにも計画段階で降水確率の確認を習慣づけておきましょう。

筆者プロフィール

栗田晃

バイク雑誌編集・制作・写真撮影・動画撮影・web媒体での記事執筆などを行うフリーランスライター。現在はサンデーメカニック向けのバイクいじり雑誌「モトメカニック」の編集スタッフとして活動中。1976年式カワサキKZ900LTDをはじめ絶版車を数台所有する一方で、現行車にも興味津々。