バイクのエンジンはバルブ駆動形式が違うとどうなる?サイドバルブ、OHV、DOHCなど違いはココ!
公開日:2023.01.24 / 最終更新日:2023.01.24
バルブの駆動方式はエンジンと共に進化してきました。
今回はどのようなバルブ駆動方式があり、それぞれにどんな特徴があるのかを説明することにしましょう。
20世紀中盤までの主流はサイドバルブ
SVは文字通りバルブがシリンダーの横に配置されているので、シリンダーヘッドにあるのはプラグだけ。
その為、一見すると2ストロークエンジンのように見えます。
SVは構造がシンプルで、製造や整備が容易なことから多くのバイクに採用されました。
しかし性能競争が激しくなってくると高回転化に対応できず、またバルブがシリンダーの横にあるので燃焼室の容積が大きくて圧縮比を高く設定できないなどの問題が出てきて(エンジンの出力を上げるには、ある程度圧縮を高くする必要があります)姿を消していくことになりました。
整備性に優れコンパクトなOHV
サイドバルブの欠点を対策して、高出力化する為に登場してきたのがOHV(オーバーヘッド・バルブ)です。
OHVはクランクケースの中にあるカムシャフトがプッシュロッドを押し上げます。
プッシュロッドでロッカーアームの一方が持ち上げられると、反対側がバルブを押し下げる構造です。
バルブを燃焼室の上に配置したことで圧縮比を高くすることができただけでなく、高回転化が可能になり、SVに比べてバワーを飛躍的に高めることができました。
初代のスーパーカブC100など、1960年代くらいまでは多くのエンジンに採用されていたOHVですが、バイクの性能競争が激しくなり、更なる高出力高回転化が求められるようになると重いプッシュロッドが上下運動するOHVでは対応することが難しくなり、より高性能化に対応したOHC(オーバーヘッド・カムシャフト)を採用する車種が増えていきます。
しかし、その後もOHVのバイクは登場していますし、ハーレー・ダビッドソンの空冷エンジンなどは現在もOHVを採用しています。
それはOHVの利点があるからです。
カムシャフトがクランクケース内にあるOHVは、ヘッドをコンパクトにすることが可能で、それによって重心も低くすることができるのです。
例えばVツインの場合、DOHCにするとカムシャフトがヘッドに4本必要になります。
こうなるとエンジンの上側が大きく重くなってしまうのですが、OHVならカムシャフトはクランクケース内の1本だけなので(ハーレーのツインカムは2本)、ヘッドにカムやスプロケットを取り付ける必要がありません。
確かにOHCやDOHCに比べると高回転まで回すことは難しいかもしれませんが、そもそも高回転を狙ったエンジンでなければ大きな問題にはなりません。
また、OHVにはヘッドを簡単に分解することができるので、整備やチューニングが容易だというメリットもあります。
4ストロークエンジンのスタンダードOHC
バイクの性能が向上してくると、OHVよりも更に高性能なバルブ駆動方式が求められるようになりました。
そこで登場したのがOHC(オーバーヘッド・カムシャフト)です。
OHCは、カムシャフトをヘッドのバルブに近い場所に取り付けるのでプッシュロッドが必要ありません。
往復運動するプッシュロッドがなくなったことで、より高回転でもバルブが追従することができるようになりました。
こうした理由から1960年代からOHCを採用するバイクが増え、バイク用エンジンの主流となっていきます。
OHCは、SOHC(シングル・オーバーヘッド・カムシャフト)とも呼ばれ、現在でも多くのバイクに採用されています。
その理由はDOHCよりもシンプルかつ軽量、低重心にすることができ、それなりに高回転、高出力化にも対応できる為です。
部品点数を少なくすることができるのでコストも低く抑えることができます。
このように色々な点でバランスが取れているので、実用車からスポーツバイクなど、様々な車両に搭載されているのです。
高回転高出力化の為に生まれてきたDOHC
DOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)は、OHCから更に一つ進化した機構です。
吸気と排気に独立したカムシャフトを装備しているのでバルブやカム配置の自由度が高くなり、理想的なポート形状や燃焼室形状を追求しやすくなるのが最大のメリットです。
DOHCエンジンの多くは、カムがバルブを直接押す構造になっています。
ロッカーアームが無いと動弁系の重量が軽くなって高回転化が可能になるだけでなく、ロッカーアームの変形がないので正確にバルブを動かすことができます。
最近では、機械効率の向上を狙ってローラーベアリング式ロッカーアームを採用したDOHCも増えてきました。
高性能なスポーツバイクの多くがDOHCを採用していますが、OHVやOHCに比べるとヘッド周辺の部品が増えるのでエンジンのヘッドが重くなり、重心位置が高くなってしまうデメリットもあります。
また、部品点数が増えるので価格も高くなってしまうのは仕方ないところです。
ホンダ独自のユニカム
ホンダが独自に開発したユニカムは、OHCとDOHCのメリットを取り入れた方式だと言えます。
吸気バルブをカムで直接押し、排気バルブはロッカーアームを介して駆動します。
片側のロッカーアームがないので通常のOHCよりも軽量で高回転化が可能。
最近では競技用モトクロッサーからスポーツバイクなど様々な車種に採用されています。
バイクのエンジンはバルブによって特徴が大きく変わる
バルブ駆動方式が、求める性能によって選択されていることがお分かりいただけたでしょうか?
バイクのスペックを見る時は、バルブ駆動方式も合わせて確認すると、そのバイクがどのような考えで設計されているかが分かって、より面白くなるかもしれません。