花粉症ライダー必見!バイクの花粉対策について解説!
公開日:2025.02.23 / 最終更新日:2025.02.23
「スギ」や「ヒノキ」という単語を聴いただけで目がかゆくなるというライダーもいるほどに、毎年春先になるとクローズアップされるのが花粉症です。
自分に合った市販薬を利用したり、医療機関を受診したり、季節性のものだからと我慢したりと対処方法は人それぞれですが、目がショボショボとしたりくしゃみを連発するとバイクの運転に影響し、時には危険につながることもあります。
また、「去年は症状が出なかったから」と楽観している人も、突然花粉症デビューする可能性もあります。
ここでは花粉症がライディングにもたらす影響や、有効な対策方法を解説します。
花粉が及ぼす影響

直接的に生命に影響するリスクが低いこともあり、日本における花粉症の患者数は正確に分かっていないようです。
しかし、環境省発行の花粉症環境保健マニュアル2022によれば2019年の花粉症有病率は42.5%とのことで、国民のおよそ2人に1人が発症している国民病と言っても過言ではない厄介な存在です。
スギやヒノキなど春に飛散する花粉の量は、前年の6月から秋にかけての日照時間や気温が大きく影響します。
すなわち前年の梅雨が短く気温が高い夏であれば、翌春の花粉飛散量は多いと予測されます。
日本気象協会の「2025年 春の花粉飛散予測(第3報)」(https://tenki.jp/pollen/expectation/)によれば、早いところではスギ花粉のピークは2月下旬から始まり、ヒノキ花粉は3月中旬から4月上旬にピークを迎えるとのこと。
また、飛散量は広い範囲で例年より多く、近畿や四国地方では例年の2倍以上となるところもあるそうです。
花粉症ライダーにとってまさに大変な時季となりますが、ここで改めて花粉がバイクのライディングに及ぼす影響について考察してみましょう。
運転に集中しにくくなる
鼻水が止めどなく流れ続けたり目がかゆくてショボショボしていても、ライディング中にティッシュで鼻をかんだり目薬を点眼することはできません。
こうした花粉症の症状はライダーの集中力や注意力を鈍らせる原因となります。
花粉症につきものであるくしゃみは、呼吸の際に鼻から吸い込んだ花粉を強制的に排出する行為で、意識とは別に行われます。
くしゃみが出る時は、その直前に息を大きく吸い込む動作を伴います。
交差点を通過する際やコーナリング中に「ハ~、ハ~、ハックション!!」と2~3度息を吸い込むだけで周囲への気遣いが低下し、くしゃみの瞬間には目を閉じてしまうため視界が遮られてしまいます。
1回のくしゃみでまぶたを閉じている時間は0.5秒と言われており、60km/hで走行していればその間に約8mも進んでしまいます。
花粉症にともなうこうした症状すべてが、安全運転に欠かせない集中力を減退させる要因となります。
視界が悪くなる
花粉で目がかゆい、ずっと涙がにじんで目がかすむようだと当然視界が悪くなります。
すると前方やバックミラーの確認、目視確認すべき周囲への注意が疎かになるリスクがあります。
それが道路標識や停止線の見逃しにつながったり、信号機を見落とす原因にもなりかねません。
雨天走行時にヘルメットのシールドに付着する水滴や、冬場にシールドの内側が曇ることで視界の悪さを実感することがあるように、目のかゆみやチクチク、ゴロゴロとした痛みや涙も視界を妨げ判断力の低下につながることを理解しておきましょう。
普段以上に安全運転を心がける必要がある
ライディングに集中できず視界が悪くなるほどの症状であれば、ライディングを控えた方が無難です。
しかし、日本人の半数が花粉症持ちで、なおかつその期間が数ヶ月に及ぶとなれば、症状が出ているとしてもバイクに乗ることがあるかもしれません。
くしゃみが出そうになるたびに路肩に寄せて一時停止するのは、重症度の高い花粉症ライダーにとっては現実的ではないかもしれません。
くしゃみをすると同時に目をつぶってしまう反射的な動作があり、走行中のバイクはその間も進んでしまうことは知っておくのは重要です。くしゃみと同時に上半身に余計な力が加わって、ハンドル操作を誤ってしまう危険性もあります。
こうした花粉症ならではの動作があることを前提に、普段よりも車間距離を多く取り速度も控えめに、普段よりもより一層安全運転を心がけたいものです。
空気中を漂う花粉の分布にはムラがあるので、突然強く花粉に反応して涙腺崩壊状態になったような場合は、無理に走行を続けず安全な場所に停車して鼻をかんだり、目の周りを拭いて症状が落ち着くのを待つのも良策です。
ライダーにおすすめの花粉対策

スギの花粉1個の直径は30㎛程度で、肉眼で見える限界とされる約200㎛よりはるかに小さなサイズです。
しかし、花粉症と長くつきあっているライダーの中には、花粉に敏感すぎるため「飛んでいる花粉が見える」という人もいます。
スギ林の近くを走ると、大量に漂う花粉によってそのあたりの景色が黄色く霞んで見えることもあります。
日本では、第二次世界大戦後に荒廃した山地の復旧や、高度経済成長における木材需要の増大に応えるためにスギやヒノキの植林を推進しました。
スギは樹齢25年から30年を迎える頃から多くの雌花をつけ花粉を飛ばすようになるため、1970年代以降に花粉症というアレルギー症状が顕在化したとされています。
つまり私たちライダーは、多かれ少なかれ花粉の影響を受けざるを得ないのです。
同じ量の花粉を浴びてもアレルギー症状を発症する人と平気な人がいるのは、体の中に入った花粉に対するアレルギー素因の有無や、アレルギー反応を示す抗体が作られるまでの期間の違いによる個人差ですが、すでに花粉症の症状があるライダーはできるだけ症状が重くならないよう、以下のような対策を行うと良いでしょう。
花粉の飛散量が多い日のツーリングを避ける
花粉が飛散する時期、テレビやインターネットの天気予報では花粉飛散量の予測も発表されています。
これは1㎠あたりに落下する花粉数を元にしたダーラム法という観測方法を用いた場合
「少ない」 10個未満
「やや多い」 10~30個未満
「多い」 30~50個未満
「非常に多い」 50個以上
となっており、「少ない」と「非常に多い」では飛散量に5~数十倍以上の差があることが分かります。
花粉の飛散量が多い日には
・晴れて気温の高い日
・空気が乾燥して風が強い日
・雨の翌日
・気温の高い日が2~3日続いた後
などの特徴もあります。
三寒四温による気温変化や春一番による強風など、冬の終わりから春にかけては上記のような天候条件が重なります。
そのためツーリングを計画する場合は、当日だけでなく数日前からの天候の変化や花粉飛散量予測などの情報を活用し、明らかに飛散量が多いと思われる場合は予定を変更するという判断も必要です。
花粉の飛散の多い時間帯を避ける
スギが開花するのは太陽が昇り気温が上昇する朝から午前中で、郊外にある場合が多い植林地や山から昼過ぎには都市部へと飛散します。
午後になると猛威を振るった花粉はいったん落ち着きますが、夕方に再び増加します。
これは気温の低下によって上空を浮遊していた花粉が降りてきたり、空気の対流によっていったんは地表に落ちた花粉が舞い上がるためです。
こうした時間的な特性があるため、午前と夕方に発生する2回のピークを避けることで症状を軽減して走行できることが期待できます。
山方面のツーリングを控える
先に述べた通り、スギやヒノキの植林は第二次世界大戦後の国策として推進された事業です。
ですから、山方面にツーリングに出かけることは花粉の発生源に向かっていくようなもので、花粉症の症状をさらにエスカレートさせる結果となります。
オンロード車でもオフロード車でも、ワインディングや林道などの山地はツーリングの定番コースですが、関東地方でスギやヒノキの花粉に反応するライダーは6月頃までは山に向かうのは避けた方が良いでしょう。
花粉の薬を飲む
一度花粉に反応してしまうと、程度の差はあっても症状が消えてなくなることはほぼ期待できません。
鼻水が流れ続けたり目がかゆくて仕方がない時には、医師から処方された薬を飲んだり、薬局で販売されている市販薬を利用して症状を軽減することは、生活の質を保つためにも有効です。
花粉症の症状を緩和する市販薬は数多くありますが、副作用として眠気や倦怠感、集中力や判断力の低下、吐き気や腹痛が現れる場合もあります。
ライダーにとっては、運転前の服用が可能か否かの確認は特に重要です。
症状を抑えるのに効果的で相性が良いと感じる薬でも、使用上の注意をよく読んで乗り物の運転を控えるよう注意書きのあるものは服用しないようにしましょう。
心配であれば、医師や薬剤師に相談の上、運転時に使用可能な薬を選ぶようにしましょう。
目薬・点鼻薬を携帯する
目や鼻や口から体内に花粉が入ると、体内で花粉に対抗するための抗体が作られ、繰り返し花粉を取り入れて充分な量になると花粉症の症状が出現します。
その時には体内にすでに抗体が存在しているため、根本的な対策としては内服薬が有効です。
しかし、眼球がチクチクする、鼻がムズムズする症状に対して素早く効果を得たい場合には、目薬や点鼻薬を使用することで症状を軽減できることもあります。
目薬であれば眼球に触れている花粉を洗い流す効果が期待でき、点鼻薬には鼻腔内の花粉を洗浄しつつ鼻粘膜の消炎効果により症状が緩和することもあります。
どちらも辛い症状の軽減効果は比較的短時間で現れるため、ツーリング時は携行して途中の休憩時などに使用すると良いでしょう。
生活を見直す
アレルギー症状のひとつである花粉症は、体内に入った花粉に対する抗体を作る免疫反応が過剰になって発症すると言われています。
免疫反応自体は体にとって必要不可欠ですが、過剰に反応させないためには睡眠をはじめとして生活のリズムを正して、適度な運動や食事に気をつけて免疫機能を正常に保つようにしましょう。
喫煙や飲酒も鼻の粘膜を正常に保つために避けた方が良いでしょう。
ヘルメットによる花粉対策
空気中に無数に花粉が舞っている中をシールドのないハーフタイプやジェットタイプのヘルメットで走行するのは無謀でしかなく、その結果鼻水ダラダラ、目にゴロゴロと違和感が生じるのは自業自得です。
花粉を取り込まないという観点では、ヘルメットはフルフェイス一択と言って良いでしょう。
鼻や口を覆うことができるスポーツマスクを併用すれば、プロテクト効果はさらにアップします。
花粉予防効果と利便性の両立を求めるなら、ジェットヘルメットと同様に容易に着脱でき、走行時は顔全面をカバーできるシステムヘルメットも良いでしょう。
メガネとマスクの着用
花粉との接触機会を減らすために、メガネやマスクを着用するのは有効です。
いつもメガネを着用しているライダーは、裸眼ライダーに対してそれだけでも花粉削減効果があり、顔の形状に密着するスポーツグラスを使用すればさらに花粉との接触を避けられます。
普段はコンタクトレンズを使用しているライダーも、花粉が飛散している時期はメガネをかけた方が花粉ブロックには有効です。
また、上のヘルメット選びでも触れましたが、鼻と口をカバーできるマスクを着用することで、ライディング中のくしゃみや鼻水を軽減できます。
この場合、呼吸によってシールドの内側が曇りやすくなるため、あらかじめ曇り止めを塗布しておくと良いでしょう。
ウェアやグローブの素材
ライディング時に着用するウェアの素材によっても、花粉の影響を和らげることができます。
目や鼻や口以外の部分から花粉が体内に入ることはありませんが、バイクを降りた際にウェア表面の花粉を簡単に払い落とすことができれば、ヘルメットを脱いだ際に吸い込む量が減少し、室内に持ち込む花粉を減らすことができます。
ポリエステルやナイロン素材は表面が滑らかなので花粉が滑り落ちやすいのに対して、フリース素材やウールは生地に絡まりやすいため付着してしまい、脱衣する際に舞い上がった花粉を吸い込むリスクが高まるため注意が必要です。
電車通勤や通学のため駅前の駐輪場までの短距離移動であっても、花粉が付着しづらい素材のウェアやグローブを着用することで、降車後のくしゃみを減らすことが期待できます。
ライダーにとって辛い花粉症。複数の手段を組み合わせてを乗り切ろう
花粉症は老若男女を問わず国民の半数が発症しているといわれる非常にポピュラーな病気です。
病気というほどのことはないし……と軽く見られることもありますが、アレルギー性疾患のひとつです。
その代表は春先のスギとヒノキですが、実際には一年を通して様々な植物の花粉が飛散しており、それぞれの花粉に対してアレルギー反応が異なるため、年間を通した対策が必要です。
世間的にスギやヒノキの流行が終わった後も鼻水が流れたり目の痒さが続くようなら、病院の耳鼻咽喉科やアレルギー科を受診して、どの花粉に反応する体質なのかを把握することも、花粉症対策のためには有効です。
スギでもヒノキでも、ある花粉に対する抗体が一度できてしまうと、翌年以降もその花粉に反応すると発症してしまいます。
そのため花粉が飛散し始めた時点でなるべく早期から対策を行うことでその年の発症時期を遅らせ、症状を緩和できる可能性があります。
これには花粉が多く飛散している日にはツーリングに出かけない、ヘルメットやウェアなどのライディングギアで花粉の侵入や付着を防ぐといった対策と、市販薬や処方薬による対策を組み合わせて対処することが重要です。
鼻水とくしゃみも数ヶ月我慢すれば終わるからと、花粉の季節をノーガードで乗り切ろうというのはリスクを伴う発想です。
ライディング中にくしゃみを連発すれば、その間に何度も目を閉じることになりますし、くしゃみのタイミングを自分でコントロールすることはできません。
集中力や一瞬の判断力の低下が危険なアクシデントを招くリスクもあります。
一方で、薬を服用する場合もバイクライディングに悪影響のないものを選択しなくてはなりません。
薬に関しては専門家の知識が必要になるので、医師や薬剤師に相談してベストな薬を選択しましょう。
花粉症との付き合いが長いライダーにとっては「ああ、また今年もこの季節か……」と憂鬱な気分になると思いますが、安全で楽しくライディングできるよう適切な対策を実践することをおすすめします。