本記事はバイク雑誌『タンデムスタイル』とのコラボ記事です!

本記事の内容はタンデムスタイル 2024年12月号 Vol.269 (2024/10/24発売)の内容の一部を再編集したものです。
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徐々に春が近づいているけど、まだまだ寒い日が続いている。
そん中でも「寒くたってバイクを楽しみたい!」と思っている人も多いだろう。
ただ寒さに耐えてバイクに乗るのは避けてほしい。

寒さに震えて走り続ければ体が硬直して操作性が損なわれ『安全』からかけ離れてしまう。
それだけでなくツラい思いをするのは明らか。寒い時期にライディングを楽しめるどころの話ではない。
それなら乗らなずに冬眠していた方が無難とも言える。

寒い時期にバイクライフを楽しむための方法はいくつがあるが、やはりライディングギア選びにこだわること、そして工夫することだ。
すでにライダーデビューし冬を体験した人もいるだろうが、すでに『自分なりに防寒しているけど、それでもやっぱり冬がキツイ…』という人は装備を見直すことをオススメする。

『電熱ウエアがないとムリなんでしょ?』と思っている人もいるかもしれない。
あれば暖かく快適に走れるが、なくても走ることはできるのだ。その方法を紹介していく。

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レイヤードの基本

バイク以上に過酷な状況にさらされる冬の登山を例に挙げる。
とくに雪に閉ざされるような山を何日もかけて登る本格的な登山になると、服装が生死を分ける重要なファクターになってくる。
寒さだけでなく、冷えの原因になる発汗の対策を講じなければならないからだ。
その方法が『レイヤード(重ね着)』で、汗を発散させつつ温かい空気をため込むこと。

基本は三つのレイヤードになり、肌に近い順番から『ベースレイヤー』『ミドルレイヤー』『アウターレイヤー』と重ねていく。
このレイヤードのメリットはそれぞれに役割を分担させ効率をよくしているため、ムダにいろいろと重ねずに動きやすさを損なわず、スマートなシルエットをたもてること。
このレイヤードを基本にして、それぞれの中で性能のいい物を組み合わせれば、寒い時期でも十分にバイクライフを楽しめる装備となるわけだ。

ただし、いくらレイヤードを忠実に守って、高性能なウエアを着たとしてもすべてを台なしにしてしまう恐ろしいモノがある。
それは『走行風』だ。
バイクで走り出せば、ライダーは走行風にさらされる。
冬の冷たい走行風が、ライディングギアのすき間から侵入したら…?
レイヤードのポイントにひとつは温かい空気をため込むことにあるが、走行風が入り込むとそれを台なしにしてしまうのだ。
ところが走行風を受け続けながら前に進んでいくのがバイクという乗り物の運命。
これをいかにクリアするかも、寒い時期に快適なライディングを楽しめる/楽しめないの分かれ目になるのだ。

温かい空気をライディングギアの内側にためて、それを逃さないこと。
この二つのポイントをしっかりと押さえれば、寒い時期でも快適にライディングを楽しむことができるのだ。

ベースレイヤー

肌に触れるアンダーウエアは、汗で生地が濡れると『冷え』の原因になってしまう。
そのため吸汗速乾の素材であることが望ましい。
これに加えて保温性の高い素材を選ぶと効果はより高くなるぞ

ミッドレイヤー

体温で服と服の間の空気が温められる。
この空気は動かない空気『デッドエア』と呼ばれているが、この温められた空気を逃さずとどめておくのがポイント。
中間着であるミッドレイヤーがその役割を担うわけだ

アウターレイヤー

たとえばウール素材のアウターだと走行風を通してしまう。
するとせっかくのデッドエアが冷えてしまうことに…。
そこで走行風を通さない『防風素材』であることがアウターレイヤーの基本になる。

発熱系インナーは避けよう

冬用アンダーウエアはさまざまなメーカーからリリースされているが、中には『発熱』をうたうモノもある。
これは汗などの水分を吸収することで発熱するタイプだが、実はバイク乗車時に発熱の効果を実感するのは難しいところ。

また降車時に汗をかき速乾性が追いつかず、逆に汗冷えすることも十分考えられる。
そのためバイクに乗るときは発熱ではなく、保温と速乾性をうたうアンダーウエアを選ぶことをオススメする。
発熱系を否定するのではなく、状況を考えて選ぶ必要があると思うのだ。

服装選びのポイント

レイヤードの基本については説明したが、ここからは『ジャケット(アウター)』『パンツ』『グローブ』『フットウエア』『ヘルメット』『その他』とパートごとに説明していく。
これからライディングギアを選ぶ際の参考にしてほしい。

ジャケット(アウター)

バイクに乗るとき、一般アパレルの革ジャンやアウトドアブランドのマウンテンパーカーを着ている人も見受けられる。
防風効果という面では一定のレベルは満たしているが、やはりバイクにまたがったとき背中が出てしまったり、袖の長さが足りなかったりという事態になりやすい。

一方、ライディングギアメーカーのアウタージャケットは乗車姿勢をとったときにフィットするデザインであったり、プロテクション効果、防風効果などを考慮している。
そのためバイク専用のライディングジャケットをオススメするわけだ。
ナイロンやフェイクレザー、レザーなど素材はさまざまだが『冬用』をうたっているモノを選べば間違いはない。

なお、アウターのサイズは注意すること。
中に数枚着込むことを想定しておかないと、動きづらかったり、アウタージャケットを着れない、なんてことになりかねないからだ。

パンツ

『冬用』をうたうパンツをリリースしているメーカーもあるので、それを選ぶのもあり。
もしくはスリーシーズン用をメインにして、寒い時期はアンダーパンツを履く。
それでも寒さに耐えられない場合はオーバーパンツを履くのも方法の一つ。
なお、乗車したときに裾がずり上がってしまって足首が見えるようなパンツは避けること。そこから走行風が侵入してしまうからだ。

グローブ

体は末端から冷えていく。手もその一つだ。
冷たい走行風にさらされ続けると、アクセル・ブレーキ・クラッチ・ハンドルの操作がおぼつかなくなってしまう。
すると操作ミスを起こし、転倒や事故に結びつくのは想像に難くない。

ライディングギアメーカーの多くは『春夏秋』 用のスリーシーズンタイプと『冬』用 のグローブをラインナップしていることが多い。
使う期間が短いが、冬も積極的に乗るならば、冬用グローブを購入しよう。

ただし、スリーシーズンタイプと比べ、その構造上、どうしても操作性が落ちるのは否めない。
そのためスリーシーズン用グローブにインナーグローブを組み合わせるという方法もありだ。

フットウェア

手と同様、足も冷えやすい部位である。
走行風がパンツの裾から侵入しないようにするのも重要だが、フットウエアが走行風を通さないモノにするのも冬のライディングではキモになる。

普段の生活を送るうえではあまり気にならないが、バイクに乗るとものすごく影響を受けるからだ。
逆に夏は走行風を通さないと蒸れる。

そのため、バイクに乗るならば、暖かい時期用と寒い時期用のフットウエアを用意するといい。
なお、転倒時に脱げないよう、どちらもハイカットタイプを選ぶことをオススメする。
また寒い時期は厚手のソックスやアンクルウオーマーを組み合わせるなら、それに応じたフットウエアのサイズを選ぶこと。

ヘルメット

バイクに乗るうえで必要不可欠なアイテムが『ヘルメット』だ。
冬にライディングを楽しむライダーは、ヘルメットにもこだわってほしい。

結論から言うと、冬場はフルフェイスヘルメットが一番。
オープンフェイスヘルメットやジェットヘルメットなどは、冷たい走行風の影響をモロに受ける。
またフルフェイスヘルメットと言っても機能に差があり、とくに着目すべきは走 風を取り入れるベンチレーションだ。
暖かい時期はベンチレーション全開でも、寒い時期は状況に応じて調整しよう。

その他

頭・手・足以外にもあるとより快適にすごせるアイテムもあるので紹介しておこう。
冬の走行風がお腹にあたるのも体を冷やしてしまう。それに対して腹巻きを使うのが有効。
『カッコ悪い…』とバカにしちゃいけない。古くから日本人に愛用されてきたのには理由がある。
お腹まわりを温めると抜群に暖か いだけじゃなく、腰痛改善や便秘解消など二次的な効果も期待できる。
ライディングギアメーカーからもラインナップされていたりもするのだ。

また、冬は あまり雨が降らないけれど、レインウエアも携行しよう。
万一降ったとき、ウエアが濡れると悲惨だし、そうでないときも防寒ウエアとして使用できるからだ。

状況に合わせて調整しよう

寒い時期でも走る時間や場所によって、感じる寒さは違ってくる。
また、ツーリング先で徒歩をともうなう観光をする場合には、バイクに乗る服装のままだと汗をかくことも。
状況に合わせて、自分で調整するのも寒い時期にバイクライフを楽しむうえでのポイントになる。
なお、ウエアを脱いだり着たりするときに収納するためのトップケースやシートバッグなどがあれば重宝するぞ。

電熱ウェアという選択肢

かつてはライディングギア以外の防寒グッズとして『カイロ』が重宝された時代もあった。
しかし、技術の進歩とともに電熱ウェアが登場。
今も日常生活やバイクに乗る際、カイロを活用するライダーもいるが、電熱ウエアの価格・選択肢・使い勝手の変化により、こちらを活用するライダーが増えている。

とくに電熱ウェアは効率のいいポイントを温めてくれる。それも使うライダーが増えている要素のひとつだ。
また重ね着する枚数も抑えられ、不要なときは電源をオフにすればいい点も電熱ウェアのメリットである。

モバイルバッテリーを使うタイプ

スマートフォンやタブレットが普及し、それらを充電するためのモバイルバッテリーの価格もこなれてきた。
その影響もあるのだろう。
電熱ウエアが登場した当初は、車体のバッテリーから電源をとるタイプが多かったが、モバイルバッテリーから電源を取るタイプが増え、今では電熱ウエアの主 流になっている。
モバイルバッテリーの容量は限られているが、何個か携行していれば1日くらいはもつ。
乗るバイクも選ばないし、バイクから離れても使えることも、普及の要因の一つになっている。

メリット

・バイクから離れても使える
・バイクを選ばない
・車体に手を加える必要がない

デメリット

・モバイルバッテリーが荷物になる
・モバイルバッテリーの種類が多いので、選ぶのに悩んでしまう

車体から電源をとるタイプ

バイクに取り付けられているバッテリーと電熱ウエアを接続することで機能するタイプ。
電熱ウエア登場初期はこのタイプが主流だったが、現在選択肢は減っている。
車体とウエアを接続するハーネスを組み込む手間はあるが、モバイルバッテリータイプのように残量を気にせず使えることが魅力の一つ。
比較的早く温まるというのも特徴だ。

ただ基本的に12Vバッテリーを搭載するモデルが対象で、バッテリー容量によっては使えないこともあるので、自車の仕様を把握したうえで選ぶこと。
また、バイクから離れれば当然使えない。

メリット

・安定した電力供給
・温まるのが早い

デメリット

・バイクから離れると使えない
・ハーネスの装着が面倒
・バイクを複数台する人には不利

まとめ

寒い時期は、走行風が入ってこないようにしつつ、レイヤードを駆使してデッドエアを逃さないようにするのがポイント。
資金に余裕があれば電熱ウエアを活用すれば、寒さに負けることなくバイクライフを楽しむことができるのだ。
これから暖かくなってくるが、いずれまた冬がやってくる。
寒い時期にバイクライフを楽しむうえで、ライディングウエアで対策を講じることを覚えておいてほしい。

筆者プロフィール

タンデムスタイル×BikeLifeLab

バイク用語で“タンデム”というと、おもに“二人乗り”を指します。
“じゃ、タンデムスタイルは二人乗り専門の媒体なんだ!”と思った方、残念ですがそれは間違いです。
もちろん二人乗りのことも取り上げていますが、それだけじゃありません。
“タンデム”という言葉には、“読者と編集部をつなぐ”“読者同士の輪が広がる”“みんなで楽しく”などという、むしろ象徴的な意味を持たせているんです。
内容は、バイク歴がまったくない人、バイクのことなんて何も知らないよというビギナーにもわかりやすく、楽しめるをこころがけています。「今までのバイク雑誌はムズカシすぎて読めなかった」という人にもご好評いただいています。
ビギナーは、何をするにせよ“やり方がわからない”という場面によく遭遇します。『タンデムスタイル』には、そんなビギナーが知りたいハウツーがギッシリ!
そして、バイクを使ったさまざまな楽しみ方を紹介しているので、自分に合った
“バイクライフ”を見付けるにもピッタリのメディアなんです。