ボアアップのボアとはピストンの直径を意味しています。
つまりボアアップは、大きなピストンを使って排気量を拡大するチューニングのことです。

いったいどんな作業が必要で、どんな効果があるのか。
ここではボアアップに関して説明することにしましょう。

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パワーを上げるのに最も効果的なボアアップ

「排気量アップに勝るチューニングなし」という言葉があります。
エンジンのパワーを上げるのなら、排気量アップが最も効果的だということです。
排気量アップの方法にはボアアップとストロークアップがありますが、最も良く使われるのがボアアップです。

ボアアップの効果は排気量を大きくするだけではありません。
バイク用のボアアップピストンは圧縮比も上がるものがほとんど。
排気量と圧縮比の両方が上がることで、とてもパンチのあるエンジンになるのです。

ボーリング加工でピックボアピストンを入れる


出典:井上ボーリング https://www.ibg.co.jp/
大きなピストンを使う為にはシリンダースリーブも広げる必要があります。
良く用いられるのは、内燃機屋さんでスリーブの内径を広げてもらう方法です。
ただし、純正のスリーブを削る量には限界があります。

大きなボアのピストンを入れる場合は一度シリンダーからスリーブを抜き取ってからシリンダーを削り、ボアアップ用のスリーブをシリンダーにセットした状態でピストンに合わせてボーリングする作業が必要になります。

昔のエンジンは鋳鉄スリーブを使っていたのでボーリングが比較的簡単でしたが、最近のエンジンはメッキシリンダーが増えました。
メッキシリンダーは削るとメッキがなくなってしまうので、ボーリングをしてボアアップすることは基本的にあまり行いませんが、ボーリングしてから再メッキしたり、新たにスリーブを入れてメッキするという方法を取る場合もあります。

加工不要のボアアップキットもある


出典 デイトナ https://www.daytona.co.jp/

ボアアップ用のシリンダーとピストンがキットで販売されているものもあります。
これなら部品を組み替えるだけでボアアップができます。
つまり車種や目的、求める排気量などによってボアアップには様々なやり方があるのです。

ボアアップは吸排気もセットで考えたい


出典 デイトナ https://www.daytona.co.jp/
ボアアップした場合には吸気、排気が増大します。
せっかく排気量が大きくなっても吸気系、排気系が抵抗になってしまうと性能が発揮できなくなってしまうので、車種によっては排気量に応じた吸排気システムの変更が必要になることもあります。

また、ピストンが大きく、重くなって圧縮が高くなると高回転は回りにくくなる方向になります。
つまりボアアップしただけだとバランスが崩れ、低中速トルクは大きくなったものの高回転まで回らないというエンジンになってしまう可能性もあるのです。

確実にパワーアップさせるならフルセットも


ボアアップして確実にパワーを上げたいというのであれば、すべてがパッケージになっているキットを使えば失敗がありません。
ただし、こういったキットは一部の車種でしか設定がないのが悩ましいところ。
もしも愛車にチューニングパッケージの設定がないのであれば、パーツ同士のマッチングを考えてセレクトし、エンジン各部を確認しながら組み立てていく必要があります。


出典 デイトナ https://www.daytona.co.jp/

ボアアップは、チューニングの手法の一つであり、エンジンのパワーを引き出すのであれば吸排気、カムシャフト、圧縮比など、多くの要素を総合的に考えなければなりません。
専門知識が必要となるので、自信がない場合は専門ショップに依頼することをオススメします。

2ストはボアアップできるの?

ちなみに2ストのボアアップの場合は4ストと少し事情が違ってきます。
理由は2ストのシリンダーにポートがたくさんあって、これが4ストのカムの役目を果たしているから。
ポートは斜めに開いているので、ボーリングして大きなピストンを入れるとポート位置が変化し、エンジンの特性が変わってしまいます。
だから2ストはボアアップせずにチューニングするケースが多かったのです。


出典 デイトナ https://www.daytona.co.jp/

2ストでも車種によってはシリンダー、ピストン、ヘッドがセットになったボアアップキットがあり、簡単に組み込みができてハイパワー化が可能だったりします。
人気の車種であれば国内はもとより、海外でもキットが発売されていたりするので、探してみるのも面白いかもしれません。

ボアアップで耐久性は低下するの?

耐久性・信頼性に関しては使用するパーツや組み立て方などによって変化するので一概に決めることはできませんが、チューニング度合いの高くないものであれば、耐久性が確保されているものが多いはずです。
中にはノーマルに匹敵する耐久性を持っていると言われているパーツもありますが、それでもノーマルよりも耐久性が大幅に向上することはないと考えた方が良いでしょう。
純正ピストンを流用したボアアップでもパワーが上がれば、どこかに負担がかかる可能性があります。
ボアアップに限らず、チューニングエンジンは、メンテナンスサイクルをしっかりと設定し、好調を維持するものだという割り切りが必要になります。
それがチューニングエンジンの楽しみ方なのです。

ボアアップは、メカニズムがシンプルな昔のバイクには多く使われましたが、色々と複雑になってきた最近のバイクでは減りつつあります。
逆に言えば、チューニングに向いた車種を中古で購入し、エンジンのオーバーホールを兼ねてボアアップなどのチューニングを楽しむという方法もありでしょう。
ボアアップしてパワーを引き出したマシンには、完成された最新マシンとはまったく違った楽しさがあります。

ボアアップなどのチューニングメニューを考えてから、ベースマシンを物色する。
それも中古車選びの楽しみ方の一つかもしれません。

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