ホンダ CB400SF -ネイキッドブームを軌道に乗せた、プロジェクトBIG-1-
公開日:2022.11.25 / 最終更新日:2024.08.17
ネイキッドバイクブームの中登場したCB400SF
1980年代のレプリカブームが飽和状態になりつつあった時に、突如として現れこれまでの性能至上主義をひっくり返したのは、カワサキの「ゼファー」。
カウルのない、スタンダードな佇まいをした、必ずしも高性能でなくても「オートバイらしいオートバイ」を世は求めていたのだろう。
しかしこれを追うように1992年に登場したホンダの「CB400スーパーフォア」こそが、後追いではあるが、1990年代、2000年代を席巻したネイキッドブームの中心にいたモデルであり、名車ということに誰も異論はあるまい。
CB400SFの登場背景
1980年代からのいわゆる「バイクバブル世代」でも、そして今のライダーまで、ほぼ誰でもスーフォアの愛称で親しまれたCB400SFは知っているはずだ。
30年間も現役を続けてきた長寿モデルであることに加え、教習所で使われたこともあり、知っているだけでなく普通二輪免許以上を取得しているライダーにとっては「乗ったことがある」バイクとしてもチャンピオンかもしれない。
そんなスーパーフォアが生まれる前には、CB-1というネイキッドモデルがあった。ゼファーがネイキッドという提案をしたかのように語られることが多いが、実はこのCB-1、そしてスズキのバンディット400もまた同時期に登場しており、各社共に「レプリカの次の提案」を模索していたのが伺える。
ただCB-1、そしてバンディットもレプリカの強心臓を搭載しモダンなフレームワークをしていたこともあり、ゼファーほどクラシック/スタンダードへと割り切っていなかったゆえにか、ゼファーほどのインパクトを世に残さなかったのかもしれない。
CBR400RRのカムギアトレインエンジンとモノショック、横に見えているフレームなどが今で言うストリートファイター的であったCB-1から、ゼファーを見つつ「やはりダブルクレードルのフレームに2本ショックという王道かつ堂々としたスタイルが求められているのだろう」と92年にビビッドなイエローカラーも設定し登場したのが初代CB400SFである。
1000cc版とも共通するセクシー&ワイルドというBIG-1コンセプトにより、グラマーでボリューミーなスタイリング、丸ライト、砲弾型メーター、鉄フレーム、2本ショックと王道の構成をしながら、エンジンはCB-1をベースとしつつカム駆動をチェーン化し、高回転域性能よりも常用域のトルク感を重視した、ゼファーショックに対するホンダのホンキの回答だったのだ。
CB400SF NC31
ゼファーが出てわずか3年ほど、CB-1からこのスーパーフォアに繋げ、かつ初期型から高い完成度を提供できたのはさすがホンダ。
ビビッドなイエローも設定され新製品の登場を強く印象付けた。
V-TECは搭載せず、タイヤもバイアス設定など今となっては旧く感じる部分もあるが、実は素直でNC31ならではの魅力が確かにある。ここから20年続くネイキッドブームを引っ張っていく存在に。
CB400SF NC31 スペック | |
発売年 | 1992年 |
全長 | 2085mm |
全幅 | 735mm |
全高 | 1080mm |
ホイールベース | 1455mm |
シート高 | 770mm |
車両重量 | 192kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 11000rpm |
最大トルク | 3.7kgf・m / 10000rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 18L |
振り返るとすでに30年前の話になっているが、30年前の登場時からスーパーフォアは高い完成度を誇り、乗り味、信頼性といった意味でも隙のない造りとなっていた。
第一世代と言える、登場から1999年初頭までを担ったのは、NC31の形式で呼ばれるモデル。
これは後年ではスーパーフォアの代名詞ともなっていったバルブ休止機構「HYPER V-TEC」を搭載しないことが特徴だ。
また細身のバイアスタイヤを備える足周りや、昔ながらの三角形状のサイドカバー/ボリュームたっぷりのテールカウルなどが今となっては旧車感を出している。
CB400SF NC31
CB400SF Ver.R
これまたビビッドカラーのオレンジでデビューしたバージョンRは、出力等数値上はベースモデルと変わらないものの、より高回転域が元気な設定となりサイレンサー別体の排気系を備えるなどスポーティ版として登場。
センタースタンドを省いたり、よりスポーティな銘柄のバイアスタイヤを装着したりするなど、アクティブな層にアピールした。
ただ当時はビキニカウルが不評だったようで丸ライト化する人も多かった。
ところが今は逆にこのカウルに価値が生まれ、綺麗なフルノーマルのバージョンRはもちろん、カウル単体でも高値取引されることも。
写真のブラックはむしろ珍しいかもしれない。
CB400SF Ver.R スペック | |
発売年 | 1995年 |
全長 | 2080mm |
全幅 | 720mm |
全高 | 1125mm |
ホイールベース | 1450mm |
シート高 | 775mm |
車両重量 | 195kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 12000rpm |
最大トルク | 3.7kgf・m / 10000rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 18L |
始めから空冷ゼファーに比べれば元気な動力性能を持っていたスーパーフォアだが、95年にはPGM-IGを搭載したスポーティバージョンの「CB400スーパーフォア バージョンR」も投入された。
排気系はサイレンサー別体の新しいものとなり、エンジンはより高回転域にエキサイティングさを持たせた他、フレームはダウンチューブを繋げるパイプが追加され剛性を向上、タイヤもバイアスタイプながらスタンダードモデルよりもスポーティな銘柄が投入され、ブレーキパッドまで専用となっていた。
そしてオレンジのイメージカラーと量産車初のマルチリフレクターヘッドライトを内蔵したビキニカウルが特徴であったが、当時はこれが広く受け入れられる土壌ができていなかったようで丸ライト化されたモデルも多かった。
しかし今ではこのカウル付のバージョンRが高値取引されているのだから面白い。
CB400SF Ver.R
CB400SF Ver.S
バージョンRをベースに丸ライト化したのがバージョンS。限定色のホワイトも人気となった。
97年にはテール周りを中心にフェイスリフトを受け、スタリングもモダナイズ。98年にはクリーム色をベースに赤いラインの入ったホンダ50周年記念車が登場。
オリジナルカラーの他、ブレンボキャリパーが標準装備されるなどホンダとしては珍しい装備もあった。
写真はバージョンSの前期型で、立体エンブレムなどワンランク上の装備も魅力。
CB400SF Ver.S スペック | |
発売年 | 1996年 |
全長 | 2080mm |
全幅 | 720mm |
全高 | 1080mm |
ホイールベース | 1450mm |
シート高 | 775mm |
車両重量 | 194kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 12000rpm |
最大トルク | 3.7kgf・m / 10000rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 18L |
ビキニカウルの不評もあり翌年には内容はRと同様ながら丸ライトで、ブレーキも対向4ポッドキャリパーにグレードアップした「バージョンS」も登場、1年後にはテールカウルがスマートになるなど細部がアップデートされ、さらに98年にはホンダ50周年記念車が登場しNC31型の集大成となった。
今となっては中古車としてもかなり旧い部類になってしまったNC31だが、V-TECを搭載しないシンプルな構成をしたエンジンは、実はV-TEC搭載モデル以上に丈夫であることでも知られる。
バイク便ではむしろNC31型が好まれ、走行距離はメーター5周、50万キロを超えるものもあるほどその丈夫さには定評がある。
スーパーカブに続き、このスーパーフォア、そしてVT系が、信頼性に定評のあるホンダの中でも特に頑丈なエンジンと言えるだろう。
なお90年代という古い年式、V-TEC未搭載、バイアスタイヤなどと聞くと乗り味も古くささをイメージするかもしれないが、決してそんなことはない。
細身のバイアスタイヤはむしろ軽快な運動性を持っていて、車体の各パーツはグラマラスながら乗ると重心が高めに感じられ、かなり軽量でヒラヒラしているその運動性は前後18インチホイールだった初代CB1000SFとも共通性が感じられる。
またV-TEC搭載モデルはアクセル微開領域では確かにトルク感を持っているものの、常時4バルブ稼働のNC31はアクセル開度によっては低回転域でもV-TEC以上の力強さが確かにある。
今になって思えば、V-TECが搭載されたのは様々な規制対応といった大人の事情があったのでは? などと思ったりもしてしまうぐらい、NC31エンジンは素直でパワフルで味わいのあるものなのだ。
今では一時期の捨て値ではなく、しっかりと中古車価格がつくようになってきたNC31型。買って損はない、これぞホンダらしい名車という機種である。
CB400SF Ver.S
CB400SF Ver.S 50周年カラー
CB400SF NC39 最も大きな変更
1999年にはエンジンにHYPER V-TECを搭載。低回転域では2バルブ、高回転域では4バルブとバルブ稼働本数を切り替えることでトルクフルさと低燃費を追求。
車体も低重心化すると共にラジアルタイヤを標準装備するなど大幅な変更を受けた。
CB400SF NC39 スペック | |
発売年 | 1999年 |
全長 | 2050mm |
全幅 | 725mm |
全高 | 1070mm |
ホイールベース | 1415mm |
シート高 | 760mm |
車両重量 | 188kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 11000rpm |
最大トルク | 3.9kgf・m / 9500rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 18L |
この後もスーパーフォアは進化・変更を重ねていくのだが、この99年のモデルチェンジが最も大きなものだっただろう。
その後のスーパーフォアの代名詞、またホンダの技術のアピールともなるHYPER V-TEC機構が搭載されたのだ。
これは低回転域(6750RPM以下)では2バルブが稼働し、それ以上になると4バルブ化するというもので、しかも単純に2バルブが低回転域で休止するだけでなく、休止するバルブと常時稼働のバルブではカムプロフィールも違うという、新機能搭載として様々なチャレンジが行われている。
これにより燃費は6.6%向上し、「低回転域と高回転域のトルクフルな走りを実現」と謳われた。一方で同時に二次空気導入装置も設定され、同年10月に導入された新たな排ガス規制に対応するためのV-TEC導入という側面もあるだろう。
NC39へのモデルチェンジで注目されるのはこのV-TEC搭載であることが多いが、実はそれ以上に車体の進化が目覚ましい。
NC31比でずいぶんと「低く」なったような印象を受けるが、実際にエンジン搭載位置は10mm下げられ、ホイールベースも35mm短くなるなど、コンパクト化・低重心化が進められている。またタイヤがラジアル化したのだが、フロントに120/60ZR17という扁平タイヤを採用したのもポイントだろう。かつてホンダはCBR600Fなどでもこの60扁平タイヤを使ってきたが、低重心のNC39型スーパーフォアで軽快な運動性を持たせたのはこのタイヤサイズが一つのキモとなっていると感じる。なお前後サスペンションもグレードアップされ、ラジアルタイヤのしなやかさと相まってモダンな乗り味へと進化したのだった。
このNC39初期に乗ると、車体の進化が最も気づくところで、NC31に比べるとコンパクトで低重心なのがよくわかる。
NC31が持っていた高い重心位置から細いタイヤに乗せてスイっと寝かせるというよりも、路面に張り付いてラジアルタイヤの安心感に包まれてコロリコロリと切り返す感じがあり、最近のモデルで言えばNC750シリーズのような、低重心で地に足がついた乗り味になった。
それでいてスポーツ性そのものは確かに向上しているのだから、良く言われる「スーパーフォアは誰でも速く走らせられる」というのも解らなくもない。
そんな評判は少し遊びが残されていたNC31よりも、スキのないこのNC39から現実になったように思う。
ただこの言い方は時として「~だからツマラナイ」と続くことがあるのに対しては異を唱えたい。「速く走らせられる」のではなく「速く走らせられやすい」のであって、表面的な乗りやすさや速さの先を求めた時には、しっかりともう一つ先のレベルでのスポーツ性も持っているのである。
なおエンジンについてはアクセル微開領域では確かに「アクセルぜんぜん開けていないのにスルスルと進む!」感覚があり、400ccという排気量以上の頼もしさがあるが、トルク感に慣れてきて低回転域でもアクセルを大きめに開けるようになると、逆にもどかしく感じることもあった。「早く6750RPMに到達しないかな」と待ってしまうような場面もあり、ついつい低いギアにシフトダウンしてしまうこともあるだろう。
またこのNC39初期は2バルブから4バルブに切り替わる時の演出が強めにされていて、6750RPMで排気音も「フォーン」から「カーン!」へと変化するし加速感もそこに明らかな段差(?)がある。
V-TECを感じるという意味では面白いし特に社外マフラーが装着されていれば音の変化もより楽しめるが、実はかなり行き来することの多い6750RPMという回転帯でこの「段差」と日々付き合うのは……好みが分かれるかもしれない。
CB400SF NC39
CB400SF SPECⅡ&SPECⅢ HYPER V-TECの熟成
HIPER V-TECは02年にSPEC IIへ、そして間髪入れず03年末にはSPEC IIIへと熟成していった。
CB400SF SPECⅡ
CB400SF NC39 SPECⅡ スペック | |
発売年 | 2002年 |
全長 | 2050mm |
全幅 | 725mm |
全高 | 1070mm |
ホイールベース | 1410mm |
シート高 | 760mm |
車両重量 | 189kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 11000rpm |
最大トルク | 3.9kgf・m / 9500rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 18L |
SPEC IIでは2バルブから4バルブへの切り替えタイミングを従来の6750RPMから6300RPMへと落とされたのが主な変更。
前述したように4バルブへと切り替わるまでのもどかしさを感じたライダーが多かったと思われるのと、「高回転域まで使う機会の少ないビギナーでも4バルブ領域を体感しやすくする」ための変更とされた。
より日常的にバルブ可動本数切り替えが起きるようになったためか、切り替え時の動力的ショックはSPEC I比で和らいだ印象もあるが、切り替え時の吸排気音の演出はむしろ追及され、切り替え時の音圧の変化をライダーに届けるためにエアクリーナーケースの剛性や排気系を見直している。
車体面は基本的に先代から引き継ぎ、コンパクトで低重心、付き合いやすくもスポーティな走りにも対応する懐深き構成が引き継がれた他、盗難防止機構HISSが搭載された。
ところがSPEC IIで切り替え回転数が落とされたことで、高速巡行時に4バルブで走っていることが多くなり、燃費面及び静寂性の面でこれまでになかった要望が出たのだろう、すぐ後に出たSPEC IIIでは6速に入っている時のみ、切り替えタイミングを従来の6750RPMへと戻されたのだった。
CB400SF NC39 SPECⅡ
CB400SF SPECⅢ
CB400SF NC39 SPECⅡ スペック | |
発売年 | 2003年 |
全長 | 2050mm |
全幅 | 725mm |
全高 | 1070mm |
ホイールベース | 1410mm |
シート高 | 760mm |
車両重量 | 189kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 11000rpm |
最大トルク | 3.9kgf・m / 9500rpm |
燃料供給方式 | キャブレター |
燃料タンク容量 | 18L |
SPEC IIIではV-TECの熟成の他スタイリングも変更。テールカウルが非常にシャープな形状になり、タンクもより躍動感のあるスタイルに。
さらにシート高は5mm下げられ、シート形状やサイドカバーの形状の見直しにより足つき性をさらに向上させた。
加えてタンデムライダーのことも考慮しアルミのグラブレールを採用したほか、カラーオーダープランも導入し24通りのカラーの組み合わせを実現した。
また、2005年にはハーフカウルが付いた「スーパーボルドール」が追加されたのもトピックだ。充実を続ける高速道路網やETCの普及により、長距離ツーリングユースが増えたという背景もあり、より多くのニーズに応えた。
高速道路網の充実に対応する意味で、1300cc版と連動するようにハーフカウルが付いた「ボルドール」はスペックIII時代から設定されていた。防風効果の確保により更なる快適なロングランを提供し、後にはETCやグリップヒーターも標準装備する上級グレードも設定されていく。ヘッドライトにはいち早くLEDを採用。
SPEC IIIはスーパーフォアの歴史の中で一つの高みにあっただろう。
キャブレターを備える最後のモデルということもあり、熟成ここに極まれりという感じである。
2バルブから4バルブへの切り替えも、動力的な「段差」は全くと言って良いほどなくなり、切り替えがわからないほどスムーズに進化し、NC31時代の素直さに回帰した印象もある。さらに低くなったシートも好印象で老若男女問わず誰でも乗りやすく、かつ感動を味わえる奥行きも確かに備えていた。
中古車としてスーパーフォアを購入するなら是非とも候補に入れていただきたい、名車スーパーフォアの中でも光る、まさに「名車の中の名車」と言えるSPEC IIIである。
CB400SF NC39 SPECⅢ
2002年、2003年とHYPER V-TECを熟成させたスペックII、スペックIIIが立て続けに登場。ライダーの要望により寄り添う設定としながらも燃費や静寂性といった項目とのバランスをとっていった。スペックIIIがキャブレター吸気方式を採用した最後のモデル。
NC42 スーパーフォア最終章
インジェクション仕様となったNC42モデルは形式名だけでなくエンジン型式までNC42Eへと変更されたフルモデルチェンジと言える内容。
しかし中身はあくまで熟成で名車路線を堅持。パワーも自主規制の終焉と共に56馬力へとアップした。
変わらないオールラウンダー性を持ちつつ、重箱の隅をつついてもどこにも妥協のない作り込みを誇り、最後まで駆け抜けた
スーパーフォアの歴史も終盤である。2007年、インジェクション化したスーパーフォアは形式を新たにNC42と変えたが、それよりもエンジン形式が86年のCBR400Rから受け継がれてきたNC23Eから、新たにNC42Eへと変わったことがショッキングだった。
ボア×ストロークなど基本的な構成は引き継ぐものの、20年以上使われてきたエンジンを平成19年排ガス規制に対応させるために相当苦労したのだろう。
排ガス規制対応のため、触媒が入り重量を増したマフラーとバランスをとるためにエンジン搭載位置を左にずらす、といった苦労も見えたが、エンジンそのものは単体で2kgも軽量化に成功しているのだから妥協はない。
Revoと名付けられたV-TECの集大成は、インジェクション化されたことでさらに緻密な制御が可能になったのだろう、2バルブから4バルブへの切り替えが、1~5速では回転数6300~6750RPMの間でアクセル開度に応じてバリアブルになったのだ。
アクセル開度が少なく、ゆっくり走っているならば6750RPMまで切り替わらず、逆にアクセル開度が大きければアクティブな走りを検知して6300RPMで切り替わってくれるというわけである。
なお6速のみは従来通り6750RPM切り替えに設定されている。
切り替え時の音の変化はあるが、体感的なショックはほぼないという意味ではSPEC IIIと同じような味付けと言えるだろう。
NC42になってもカウル付のボルドールは継続販売され、またSF/SB共にコンバインドABSが備わるなど安全面でも進化を果たしている。
14年のマイナーチェンジではホイールデザインが変更され、カウルのないスーパーフォアの方は丸ミラーやクラシックな雰囲気の文字盤を持つメーターとなるなどクラシック路線へと舵を切った。スーパーボルドールの方はシャープな形状のカウルとなりLEDのヘッドライトを装備。
ETCとグリップヒーターが装着されたEパッケージが追加されたのもトピックで、ボルドールベースのEパッケージ仕様でスーパーフォアはついに100万円を超えるプライスタグが付いたが、それでも安定した人気を保ちつつ、19年の特別仕様が出るまで名車として熟成をし続けた。
CB400SF NC42 スペック | |
発売年 | 2007年 |
全長 | 2040mm |
全幅 | 725mm |
全高 | 1070mm |
ホイールベース | 1410mm |
シート高 | 755mm |
車両重量 | 194kg |
エンジン | 水冷並列DOHC4気筒 |
最大出力 | 53PS / 10500rpm |
最大トルク | 3.9kgf・m / 9500rpm |
燃料供給方式 | インジェクション |
燃料タンク容量 | 18L |
CB400SF NC42
CB400SF 人気カラー
スペンサーカラー
2000年代に入るとホンダはスーパーフォアに限らず、懐かしのカラーデザインを多くのモデルに展開する。
シルバーに2種のブルーのラインが入るのは定番のいわゆる「スペンサーカラー」。
CB400SF スペンサーカラー
CBXカラー
スペックIIIに設定された「CBXカラー」は空冷CBX400F(1型)のイメージで登場。
古くからのホンダファンを喜ばせると共に、既に名車となっていたスーパーフォアにホンダの伝統を感じさせる佇まいを実現した。
なおCBXカラーは写真のように完全なるCBXカラーでなくとも似たラインをイメージしたカラーリングも存在した。
CB400SF CBXカラー
無限カラー
無限カラーもまた人気となる珍しい配色。黒ベースにグラデーションが入り「無限 MUGEN」の文字でファンを沸かせる。
CB400SF 無限カラー
「名車」が幕を閉じる
ご存知のように、スーパーフォアの400はとうとうその長い歴史に幕を下ろし、絶版車の仲間入りをした。
30年以上、ベースとなったエンジンの歴史まで含めるとさらに長いライフを持ったモデルであり、ホンダの歴史の大切な1ページとなったのは間違いない。
名車と呼ばれる所以は万人向けの乗りやすさや、一歩先の興奮を求めるライダーにもしっかりと懐深く応える妥協なき作り込みであることは間違いない。しかしさらにモデル終盤になってくると、世の中は400ccクラスそのものの各社からのラインナップが少なくなり、かつバイクの趣味性が高まるほどに使い方を限定するようなモデルが増えたという背景もあるだろう。
そんな中スーパーフォアは一貫して「何にでも使える」というスタンスを守った。
ツーリングでもタンデムでも、重積載でもワインディングでも、はたまたサーキット走行に至るまで、あらゆる使い方で平均点以上の性能を確保し続け、そして何よりも「生産し続けた」のであり、これもまた「名車」となったポイントに思う。
現行車としては役目を終えたスーパーフォア400。しかし世に出た数は相当数になるため、中古車としてはまだまだこの名車と付き合うチャンスはある。
軽快で素直な初期のNC31、キャブ車の集大成NC39(SPEC III)、そして極まったNC42、どれを選んでも名車っぷりは堪能できることをお約束する。