バイクのアフターファイヤーは異常の知らせ?症状が起こる仕組みと原因を解説!
公開日:2023.03.20 / 最終更新日:2023.03.20
マフラーから爆発音がしたり、火が出るアフターファイヤーという現象があります。
レースなどでは良く見られるのですが、ストリートバイクでは基本的にアフターファイヤーは発生しないように作られています。
つまりアフターファイヤーは、バイクが正常でない状態に陥ったというサイン。
原因を究明して対策し、正常な状態に戻す必要があります。
アフターファイヤーとは?
アフターファイヤーはマフラーから爆発音や火がでる現象のことです。
アフターファイヤーが発生するのはほとんどが減速時です(大きな異常がある場合は、加速時やスロットルオンでも発生することがあります)。
キャブレター式のバイクでは、減速時もガソリンが吸い出されています。
回転が上がっているのにスロットルをオフにしていると空気の通路が狭くなって空燃比が変化してしまうので混合気を完全に燃焼させることができず、燃えやすい状態の未燃焼ガスがマフラー内に溜まっていきます。
そして燃焼しやすい空燃比になった時、高温になっているマフラーの熱によって爆発(燃焼)することで「パンッ」といった爆発音がしたり、火が出たりするのです。
2ストは燃えやすい未燃焼ガスが排気ガスに多く含まれているのに、アフターファイヤーがほとんど発生しません。
これは4ストに比べて排気温度が低くて着火しにくいことに加え、吸入負圧が4ストほど高くないので減速時の混合気吸い込み量が少ないからです。
4ストロークでもインジェクションのマシンの場合は、減速時にガソリンをカットするのでアフターファイヤーは発生しにくくなっています。
ただし、レース用のバイクなど(一部スポーツバイクをトラックモードなどで乗る場合も含む)では、良くアフターファイヤーが発生しています。
これはスロットルを開けた瞬間のレスポンスと減速時のフィーリングを重視して、スロットルオフの時でも燃料を完全にカットせず、噴射し続けているからです。
アフターファイヤーは時々バックファイヤーと混同されることがありますが、まったく別の現象です。
アフターファイヤーがマフラー内での爆発なのに対し、バックファイヤーはエンジンの中で燃焼しきれなかった混合気が爆発を起こし、吸気側に逆流するという違いがあります。
アフターファイヤーを放置すると故障の原因になる?
アフターファイヤーは放置したままにしておくと故障につながる可能性もあります。
どんなリスクがあるのかを説明することにしましょう。
エンジンにダメージが蓄積して故障の原因になる
故障につながるかもしれないのは、アフターファイヤーだけでなく、症状を引き起こしている要因がエンジンに悪影響を与える可能性があるからです。
例えば混合気が薄い状態では燃焼温度が高くなるので、そのまま走りつづければ焼付きやオーバーヒートを引き起こす可能性がありますし、点火が正常でない状態が続けば異常燃焼などでピストンやバルブなどがダメージを受けることもあります。
また、アフターファイヤーがひどい場合は、最悪の場合、火災の原因になることも考えられます。
マフラーを痛める
マフラーの内部には、排ガス対策の触媒が取り付けられています。
アフターファイヤーによる衝撃や高温が加わると、触媒を痛めてしまうこともあります。
アフターファイヤーが発生する原因は?
では、なぜアフターファイヤーが発生してしまうのでしょう?
未燃焼ガスがマフラー内部で爆発する原因には次のようなものが考えられます。
プラグの状態が悪い
アフターファイヤーの原因として時々見られるのがプラグの不良です。
上手く点火されないと未燃焼のガスが発生し、マフラー内で発火してアフターファイヤーを起こすことがあります。
こういった場合は、プラグの着火性能が低下していたり、燃料やオイルによってプラグがかぶっていることが考えられます。
また、古いバイクであればハイテンションコードやプラグキャップの劣化、ハーネスの接触不良で着火性能が低下していることも多く見られます。
燃調が取れていない
キャブレータのマシンではセッティングもアフターファイヤーに影響します。
混合気が濃すぎて不完全燃焼が起き、残った未燃焼ガスがマフラーへ排気されてアフターファイヤーを引き起こす可能性もありますが、4ストのキャブレター車に関していえば、セッティングが薄くて(特にスロー系)アフターファイヤーが発生しているケースの方が多いようです。
基本的にマフラー内部の未燃焼ガスが爆発しないようにするには、未燃焼ガス中のガソリン量を濃くするか、薄くするかして、燃焼しにくい状態を作り出さなければなりません。
ところがマフラー内の未燃焼ガスの空燃比は常に大きく変動していて、薄い方向にしても少し濃くなれば燃焼しやすい状態になってしまいます。
対して大きく濃くする方向であれば、多少の変動があっても燃焼可能な状態にはなりにくいわけです。
燃調が濃くても薄くても混合気には燃え残りができますが、薄いほうがよりアフターファイヤーは発生しやすくなると言えます。
これはノーマルのキャブレターを見てみると良く理解することができます。
減速時に燃料を濃くしてアフターファイヤーを防止するエアカットバルブなどが装備されているのです。
マフラーやエアクリーナーの交換
エアクリーナーやマフラーを社外パーツへ交換すると、スタンダードの状態よりも吸排気効率が良くなります。
このことによって混合気が薄くなり、アフターファイヤーを引き起こすことがあります。
コンピュータ(ECU)やセンサーの不具合
インジェクションのバイクではスロットルオフでガソリンをカットするので、基本的にアフターファイヤーは発生しにくいのですが、コンピュータやセンサーなどに不具合が発生すると点火のタイミングがずれたり、燃調のバランスが崩れてアフターファイヤーを引き起こすことがあります。
アフターファイヤーの対策方法・直し方は?
アフターファイヤーを対策するにはいくつかの方法がありますが、確実に直すためには原因を突き止める必要があります。
二次エアを吸っていたり、点火タイミングが狂っているような状態でキャブレターのセッティングを変更しても意味がありません。
まずは基本整備を確実に行い、そこから原因を探っていくようにしてください。
二次エア吸い込みの確認
もしもノーマルなのに突然アフターファイヤーが発生するようになったとしたら、点火系かキャブレターなどにトラブルが発生している可能性があります。
キャブレターのマニホールドなどにクラックが入ったり、ボルトが緩んで2次エアを吸うと混合気が薄くなってしまっているかもしれません。
二次エアを吸っているとアフターファイヤーが発生するだけでなく、アイドリングが不安定になったり、加速時にスムーズさが失われたりすることがあるので、こういった症状が見られたら吸気系を確認してみてください。
二次エアを吸っている場合、アイドリング時にマニホールド周辺にパーツクリーナーなど可燃性の液体を吹き付けると回転が変化するので簡単に確認することができます。
ただし、クリーナーに含まれる溶剤がゴムを劣化させる可能性がありますので留意するようにしてください。
4ストのキャブレターで、アイドリングや加速時は問題がないのに減速時だけ、アフターファイヤーが発生するのであれば、キャブレターのエアカットバルブなどが固着、もしくは破損している可能性があります。
CVキャブのダイヤフラムが破れたり、穴が空いても似たような症状になることがあります。
キャブレターは、精密な部品ですし、内部のゴム部品は経年劣化で性能が低下したり破損したりしますので定期的な整備は必須。
もしも分解する場合は、フロートの油面高さなどのチェックやパーツの磨耗、変形なども確認し、必要な部品に関しては交換も行っておきたいものです。
セッティングの調整
吸排気系を変更したマシンでアフターファイヤーが発生しているのであれば、セッティングを変更する必要があります。
プラグの焼けは大雑把な判断にしかなりませんし、アクセルをオフにしたときの症状はプラグにはほとんどあらわれないので、セッティングするのであればA/F計を使用する方がベター。
大まかな傾向が掴めますし、プラグの焼けや勘に頼るよりも確実です。
難しいのはベストセッティングがアフターファイヤーを解消するとは限らないということ。
加速時に最も良い空燃比は、アフターファイヤーが発生しやすい空燃比になるかもしれないからです。
このあたりをキチンとセッティングするのであれば、最も確実なのはプロショップに依頼することでしょう。
ただし、基本的にノーマルのバイクであれば、アフターファイヤーの対策でセッティングの変更を行うべきではありません。
原因を突き止めて確実に修理する必要があります。
パーツを戻してみる
信頼できるパーツメーカーが専用に設計されたストリート用マフラーなどは、アフターファイヤーなども対策されています。
しかし汎用品などを装着した場合は別。
マフラーやエアクリーナーを変更した後でアフターファイヤーを起こし、セッティングを変更しても収まらないのであれば、とりあえず純正に戻すのが確実です。
もし元に戻しても症状が治まらないとしたら、取り付け時のミスを疑ってみてください。
アフターファイヤーは快適なライディングをスポイルする
アフターファイヤーは、放置しておくとバイクにトラブルを発生させる可能性があるのですが、何よりも大きな音がして快適なライディングを阻害します。
快調な愛車で素晴らしいバイクライフを過ごすためにも、不快なアフターファイヤーが発生したら早めに対策するようにしておきたいものです。