バイクのユーザー車検とは?手順や必要な費用、メリット・デメリットについて解説!
公開日:2025.01.28 / 最終更新日:2025.01.28

排気量が251cc以上の小型二輪車を公道で走行するには継続検査を受検し、これに合格しなければなりません。
継続検査=バイクの車検には、バイク販売店や整備工場に検査手続き等を依頼する「ディーラー車検」や「車検代行」と、ユーザー自身が全国各地の検査場にバイクを持ち込んで受検する「ユーザー車検」の二通り方法があります。
ここでは、メカニズムに関する多少の知識とバイクいじりの経験があり、平日に受検時間が確保できるユーザーにとっては金銭の節約にも役立つ場合もあるユーザー車検に関して解説していきます。
バイクのユーザー車検の費用
バイクの継続検査に掛かる費用は「法定費用」と「整備費用」に分類できます。
法定費用は特別な整備や交換部品が生じない場合でも必ず必要な費用で、ユーザー車検でも車検代行でも違いはありません。
これに対して車検前のバイクのコンディション、各部部品の消耗度によって大きな差が出ることがあるのが整備費用です。
タイヤやブレーキパッド、バッテリーやドライブチェーンといった消耗部品は、必ずしも車検時期と交換時期が一致するわけではありません。
車検が有効な2年間でそれらのパーツの交換タイミングが順番に訪れ、たまたま検査直前にひとつも部品交換する必要がなければ、整備費用は安価で済ませることができます。
逆に、運悪くあれもこれも交換時期が重なれば部品代だけでもかなりの出費となります。
それらの部品交換をディーラーや用品店に依頼すれば、交換工賃も発生します。
車検代行を依頼する場合、そのバイクが保安基準に適合しているか否かの確認を行い、消耗限度を超えた部品があれば交換するなどの作業が発生します。
また、バイクを検査場に持ち込む手間と時間も掛かります。
そのため、ユーザー車検で受検するよりも必然的にコストがかさみます。自ら行う作業を他人にやってもらうのですから費用が掛かるのは当然です。
ディーラー車検や車検代行を利用すれば、その費用は安くても5万円~が目安となるでしょう。
ユーザー車検では、整備費用を大幅に抑えられる可能性がある点が費用面でのメリットとなるでしょう。
ただし大前提として理解しておくべきなのは、ユーザー車検は「車検を安く通すためにあるのではない」ということです。
日頃から必要に応じてメンテナンスや部品交換を行い、保安基準に適合した安全な状態を保ったバイクを自ら検査場に持ち込むことで、結果的に低コストで車検をクリアできるという順序で考えるのがユーザー車検の正しい捉え方と言えるでしょう。
ユーザー車検に必要な費用(法定費用)は以下の通りです
自賠責保険
8,760円(24か月)
自賠責保険料は251ccの排気量のバイクは小型二輪車の区分で一律となっており、400ccでも1200ccでも同一です。
また、上記金額は2025年1月現在 離島を除く本土の価格を記載しています。
重量税
重量税は初年度登録からの年数に応じて金額が変わります。
登録後12年未満 3,800円(2年分)
登録後13~17年 4,600円(2年分)
登録後18年以降 5,000円(2年分)
印紙代
持ち込み検査 1,800円
費用例
上記3点の法定費用の例を紹介します。
東京都 初度登録年から5年経過のバイクの場合
自賠責保険 | 8,760円 |
---|---|
重量税 | 3,800円 |
印紙代 | 1,800円 |
合計 | 14,360円 |
ディーラー車検や車検代行の場合は上記法定費用に整備費用(部品交換が加わる場合もあり)が加算されるため、ユーザー車検とのコスト差が大きくなります。
バイクのユーザー車検の手順
ユーザー車検は全国各地の運輸支局または自動車検査登録事務所(検査場)にバイクを持ち込んで受検します。
この際、ナンバープレートを登録している管轄の検査場で受検する必要はありません。
自県より隣県の検査場の方が交通の便が良ければ、そちらで受検してもかまいません。
また、受検者が整備士資格を所有している必要はなく、検査のための整備を行う場所が認証工場でなければならないという決まりもありません。
つまりユーザー自身が露天で愛車の状態を確認し、保安基準に適合していると判断できた状態で受検して良いのです。
それを踏まえて、ユーザー車検に至る手順を段階ごとに解説します。
点検・整備

継続検査を受けるにあたり、必ず実施しなくてはならないのが検査項目の点検と整備です。
点検項目にはエンジン、動力伝達装置、ステアリング装置、ブレーキ装置、足周り、電気・保安装置等の項目があり、車検時に必要な24か月点検では54項目にのぼります。
この点検項目は道路運送車両法によって使用者の義務として定められており、本来はユーザー自身が実施すべき内容です。
点検項目については、運輸支局の窓口やインターネットで入手できる「定期点検記録簿」に従って確認します。
54項目というと膨大に感じるかも知れませんが、日常的にバイクいじりを行っているライダーにとっては特別に難しい内容ではありません。
ただし排出ガス検査については排気ガス中に含まれるCO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)の測定に関して専用のテスタが必要になるため、自宅で整備する中で確認する方法はありません。
予約
ユーザー車検を始めて受検する場合、まずは検査場がどこにあるのかを確認しなくてはなりません。
ここで頼りになるのが独立行政法人自動車技術総合機構のホームページ(https://www.naltec.go.jp/)です。
ここには全国各地の運輸支局または自動車検査登録事務所の所在地が記載されているため、どこの検査場が便利か一目瞭然で分かります。
また、ホームページからユーザー車検予約システムへのリンクが張られており、ネット上で受検予約が可能です。
予約カレンダーには2週間先までの予約状況がリアルタイムに表示されており、1日の検査時間を4分割した「ラウンド」と呼ばれる受検時間ごとの空き枠台数も分かります。
継続車検は車検の有効期間が残っているうちに受検するのが大原則なので、受検予約は車検切れギリギリを狙いすぎないようにするのが無難です。
有効期間が切れたバイクで公道走行を行うことは道路交通法違反となるため絶対に行わないようにしましょう。
書類関連の準備
ユーザー車検を受検する際は以下の書類が必要です
車検証
ナンバープレートやフレームナンバーを照合するため、ユーザー車検受付時には車検証を提出します。
納税証明書

車検受付時に車検証と並んで重要なのが納税証明書です。
当該年度の自動車税を納税していない場合、継続車検を受けることができないからです。
ここで注意が必要なのは、バイクの自動車税はコンビニエンスストアや金融機関などで受領印を押された軽自動車納税証明書の原本でなければ無効という点です。
自宅宛に郵送されてくる軽自動車納税証明書にはスマホの決済アプリが使えるようになっているものもあり、自宅で簡単に納税することも可能です。
しかしこの場合、当然のことながら紙の軽自動車納税証明書には受領印は押されず、理不尽な話ですがこれでは車検の受付ができません。
そのため、継続検査がある年の軽自動車税はキャッシュレス決済ではなく、金融機関やコンビニで支払いを行った上で納税証明書を紛失しないよう保管しておくことが必要です。
排出ガス試験結果証明書(ガスレポ)
1999年以降の車種で純正触媒を取り外して交換する社外製マフラーに付属する排出ガス試験結果証明書は車検時に必要となります。
定期点検記録簿
点検・検査時にチェック項目を確認するために必要な定期点検記録簿は、点検内容を記載した上で車検受付時に提出します。
自賠責保険の更新
バイクで公道を走行する場合は、必ず自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に加入している必要があります。
継続車検を受検するのであれば、検査に合格してから2年間の有効期間をカバーできるだけの保険に加入しなくてはなりません。
そのため事前に24か月分の保険に加入しておき、ユーザー車検受付時に提出することが必要です。
必要書類の記入
ユーザー車検を受検する際は自宅などから持参する書類とは別に、検査場で記入する書類も存在します。
これらは検査場受付に用紙があり、記載例に従って記入することでスムーズに作成できます。
継続検査申請書
検査車両のナンバープレートや車台番号、継続検査申請者(ユーザー車検受検者)の氏名を記入します。
自動車検査票
検査ラインに入場して行う検査項目の合否を記入する票で、ユーザー名や車両情報を記入します。
自動車重量税納付書
運輸支局内にある自動車検査登録事務所で重量税相当の印紙を購入し納付書に貼付した上で提出します。
こうした書類作成が苦手な場合は検査場の周囲にあることが多い代書屋さんに依頼することもできます。
書類作成の費用が生じますが、代書屋は自賠責保険代理店を兼ねていることも多いので、事前の準備をワンストップで片付けられるメリットがあります。
検査を受ける

受付で書類の確認が終わったら、バイクと共に検査ラインに入場します。
最近ではユーザー車検初心者向けに検査ラインに見学コースを設けていたり、初心者マークを渡してくれる検査場もあります。
検査自体はプロの整備士もアマチュアのユーザー車検も同等に行われるので、検査場独特のムードに圧倒されそうであれば、あらかじめアピールしておいた方が絶対に得です。
ブレーキテストやスピードメーターテストなど、初めて訪れた検査場では必ずと言って良いほど扱い方に戸惑うものです。
あらかじめユーザー車検で不慣れなことを伝えておくだけで、検査官が付き添ってくれてテスターの使い方までアドバイスしてくれることも珍しくありません。
過剰に謙遜する必要はありませんが、知ったかぶりでドギマギするくらいなら検査官を味方に付けた方がリラックスして受検できます。
バイクのユーザー車検のメリット
シンプルに考えて、誰かに検査場にバイクを運んでもらうだけでコストが発生することは理解できるはず。
冒頭でも触れたとおり、ユーザー自身が動いて車検を行うことで車検に掛かる費用を抑えられるのは大きなメリットです。
また、車検に伴う点検や整備を自ら行うことで「そろそろ交換時期が近いけど、車検は現状でパスできるから作業は後日にしよう」というように、メンテナンスのタイミングを自分のペースで決められるという利点もあります。
車検代行と比較して費用を抑える事ができる。
車検代行はユーザー自身の作業を他人に代行してもらう行為であり、その対価として費用が発生するのは当然です。
その人件費や整備費用が浮くことは大きなメリットとなります。
バイクに関する知識が増える
車検には検査場という特別な空間でプロの整備士と検査官が対峙するようなイメージがあるかも知れませんが、実際に足を運んでみるとユーザー車検の受検者にも開かれた空間となっています。
定期点検に関しても、日常点検の延長戦でできる内容が多く、バイク好きなら比較的容易に感じることでしょう。
インターネットによる検査予約や書類作成に掛かる費用、自動車税や自賠責保険料といった細かい法定費用もつぶさに理解でき、車検付きバイクに対する知識やコスト感覚も自然と身につけることができます。
バイクのユーザー車検のデメリット
一度は経験して損はないと思われるユーザー車検ですが、メリットばかりではありません。
最も危険なのは、点検や整備を行って保安基準に適合していることを確認するのではなく、検査に通すことが目的となってしまうことです。
ブレーキパッドの残量が残り少ないのにそのまま検査を受けて合格し、それをすっかり忘れてブレーキローターがガリガリに削ってしまった……というユーザー車検にまつわる失敗例は数多くあります。
バイクいじりやメカニズムに対する理解が追いついていないと感じたら、潔くプロに依頼した方が賢明であることは理解しておくべきです。
整備に関する知識やスキルが必要
車検前の点検や整備は、
・ドライブチェーンのたわみを調整するにはどうすれば良い?
・摩耗したブレーキパッドはどうやって交換する?
・性能が低下したバッテリーの充電する際は充電器をどうつなぐ?
といったバイクいじりの基礎知識の上に成立します。
バイクに乗ることは好きだけどドライバーやレンチを握ったことがないといったライダーは、いきなり車検整備という高いハードルに挑むのではなく、日常点検からスタートした方が良いでしょう。
プロの点検・整備ではない
趣味でバイクいじりを行うライダーもしょせんはアマチュアであることを自認すべきでしょう。
趣味ゆえに「まあいいか」という甘えが生まれてしまうこともあるかもしれません。
これに対してバイク販売店やバイク用品店に車検の代行を依頼する場合、資格を持った整備士が対応し「こんなもんかな」といった中途半端な対応はありません。
日常的にDIY整備を行うユーザーほど、定期的に整備のプロ目で確認してもらうことがメリットになるかも知れません。
平日に陸運局まで行く必要がある
職業や仕事の内容によって、検査場が稼働している時間帯にどうしても時間を作ることができなければ、物理的にユーザー車検を受検するチャンスがない場合もあります。
代車がない
車検時に限らずDIYでメンテナンスを行うユーザーが部品交換を伴う整備を行う際に、部品待ちの間はアシが無くなるというデメリットもあります。
その他にもバイクや車を所有していれば不便を感じることはないでしょうが、移動手段が限られてしまうこともデメリットとなるでしょう。
バイクへの理解が深まるユーザー車検。実際に受検できなくても整備の重要性を理解することは重要
自分のバイクのメンテナンスや整備を自ら行い、その延長線上で継続検査も自ら受検するのがユーザー車検です。
バイクのディーラーや用品店に代行依頼するよりも費用面で大きなメリットがあるというのがユーザー車検に対する一般的な認識ですが、手間や時間をお金で買っていると考えると、ユーザー車検を実践するには自分自身の時間を捻出しなくてはなりません。
サラリーマンであれば平日に貴重な休暇を費やす見えないコストもあるでしょう。
また、「車検を代行依頼すると必要もない部品交換までされる」といった思い込みをしているユーザーも少なくないようですが、ディーラー車検や代行車検は目の前の継続検査をパスするのはもちろんですが、その後の整備や部品交換を見越してプランを立てることもあります。
例えばライニング残量が20%程度のブレーキパッド。目前の車検は通りますが半年後に交換時期が来るかもしれません。
このような場合、ブレーキ点検でキャリパーを取り外したついでにパッド交換をやっておけば、車検時にパッド代金が加算されますが半年後のパッド交換工賃は不要です。
こうした予防整備まで含めて考えると、バイクに乗り続けていくにはさまざまなコストが掛かり車検時のコストだけでユーザー車検を選択するのは必ずしも正解とは言えないかも知れません。
裏を返せば見かけ上のコストはユーザー車検より高く感じる代行車検も、プロの目が行き届くことで整備コストの平準化を図ることができ、車検のたびに大きなコスト負担の波に翻弄されることなく、自分好みの1台に乗り続けられるかも知れません。
ユーザー車検は良くも悪くもオウン・リスクです。
費用的な負担は軽くなるものの、安全や責任の点ではむしろ負担が増えることを理解した上で選択するようにしたいものです。