バイクの車検とは?費用や検査項目について解説!
公開日:2025.01.28 / 最終更新日:2025.04.07

バイク選びの際に欲しい車種が明確なユーザーにとっては大きな問題ではないかもしれませんが、いくつかの候補がある場合には「車検の有無」が判断基準になることがあるかもしれません。
バイクの車検は排気量250ccが境界となり有無が決まりますが、そもそもなぜ251cc以上のバイクには車検が必要なのでしょうか?
逆に、同じバイクでも250cc以下のバイクに車検がないのはどうしてなのでしょう?
本記事ではバイクにおける車検の目的、車検時の検査内容や必要な費用に関して解説します。
道路運送車両法が定めるバイクの車検とは

バイクの車検とは道路運送車両法が定めた保安基準に適合しているかを確認する制度で、国土交通省が行う自動車検査登録制度の一種です。
一般的に「車検」と呼ばれている継続検査とは自動車やバイクに定められた検査項目のひとつで、自動車検査証の有効期限満了後も継続して使用する際に受けなくてはならない検査となります。
道路運送車両法におけるバイクはエンジンの総排気量が125cc以下の「原動機付自転車」、125~250cc以下の「二輪の軽自動車(軽二輪)」、251cc以上の「二輪の小型自動車(小型二輪)」の三つに分類されており、このうち小型二輪には車検が必要です。
250cc以下の軽二輪は道路運送車両法によって「検査対象外軽自動車」と規定されているため車検の必要はなく、原動機付自転車に関しても道路運送車両法が定める自動車に該当しないため車検はありません。
ただ、排気量250cc以下の軽二輪や原付も走行距離が増えることで各部が摩耗し、経年劣化は進行します。
その上で各部の機能が正しく作動し、安全に走行できる状態を維持継続して保安基準に適合させるためには、車検はなくとも点検整備は必要です。
道路運送車両法でも、走行距離や運転時の状態から判断して実施する日常点検整備や定期的に行う必要のある点検内容を定めた定期点検整備は使用者の義務として定められています。
251cc以上の小型二輪は日常点検整備や定期点検整備を行った上で、2年に一度の車検があると認識しておくのが良いでしょう。
重要なのは、車検は「検査時に保安基準に適合しているかを確認」する検査であって、検査後2年間を担保するものではないということです。
車検時にタイヤの溝の残りが基準値ないであっても、その後1年間でスリップサインが出るかもしれません。
その場合、当然ですが次の車検を待たずにタイヤ交換を行わなくてはなりません。
車検はあくまで検査時点の状態を確認するもので、重要なのは定期的な整備であることを理解しておくことが必要です。
バイクの車検は何年ごと?
バイクの車検は新車購入(初度登録)後の初回継続時は3年後、それ以降は2年ごとに行います。
かつては初回車検も初度登録から2年後に実施されていましたが、平成19年4月の改正道路運送車両法施行により3年となっています。
これは新車購入時からの摩耗や消耗を考慮すれば有効期間を延長しても不具合が増えることは少ないとの判断に基づくものですが、ここでカギとなるのは「初度登録」というフレーズです。
バイクメーカーから出荷されたばかりの新車はもちろんですが、日本で一度も登録されたことのない輸入車(新車・絶版車を問わない)にもこの条件は当てはまります。
例えば1970年代に製造された900ccの輸出モデルを2025年2月に日本に逆輸入して登録した場合、車検証上の初度登録年月は令和7年2月となり、初回の継続車検は令和10年2月となります。
逆に、令和2年に初度登録された車検切れの車両を購入した場合、1970年代の逆輸入車より年式は遙かに新しいものの、初度登録から3年を過ぎているため、中古新規登録後の車検は2年ごとになります。
車検を受けるタイミング
2年に一度(初度登録後1度目は3年後)の継続検査(車検)は、現在「有効期間満了日の1か月前から満了日までの間」に受験すれば旧車検証の有効期限から2年間とすることができます。
例えば令和7年3月15日に有効期間が満了する車両は、令和7年2月15日から3月15日までの間に車検に合格すれば、新たな車検証の有効期限は令和9年3月15日となります。
しかしユーザー自身のスケジュールや自動車検査登録事務所の予約の都合で受検日が令和7年2月5日になった場合、新車検証の有効期間満了日は令和9年2月5日になってしまい、旧車検証の有効期間が10日間分失われることになります。
一見すると大きな問題ではないように思えるかもしれませんが、多くの車両の有効期間満了日が集中する時期には整備や車検の予約が取りづらくなる問題が生じることがあります。
国土交通省が公表している月別車検台数データよれば、2019年から2023年までの5年間の月間平均が約281万台なのに対して、3月は約389万台と突出して多いそうです。
これはバイクも自動車も年度末にあたる3月に新規登録を行うことが多く、車検の時期も3月に集中してしまうためです。
そこで国土交通省は令和7年4月1日より「有効期間満了日の2ヶ月前から満了日までの間」に受検しても残存する有効期間が失われないよう道路運送車両法施行規則を改正しました。
これによって、旧車検証の有効期限ギリギリになって慌てずにすむようになり、ユーザー車検の予約やバイクショップへの車検以来のスケジュールも余裕を持って対応できるようになります。
バイクの車検が切れている状態で公道を走るとどうなる?
排気量が251cc以上の小型二輪車で公道を走行するには、継続検査に合格していなくてはなりません。
車検証に記載されている有効期間満了日を1日でも過ぎれば、その車両は保安基準に適合していないことになり、走行することはできません。
実際のところ、うっかり車検切れした翌日に突然ブレーキが利かなくなったりヘッドライトが点灯しなくなるようなことはないかもしれません。
しかし、免許証の更新を怠れば無免許運転になるのと同様に車検が切れた状態で公道を走行すれば無車検運行となり、違反点数6点の一発免停(欠格期間30日)と6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
車検を継続する際は同時に自賠責保険にも加入しています。
自賠責保険は強制保険とも呼ばれる保険で、交通事故を起こした際に被害者の損害賠償等の救済のためすべての自動車やバイクが加入しています。
この自賠責保険は車検の有効期間と保険期間が一致することが多いため、一般的に車検切れ=自賠責保険切れとなっている可能性が高くなります。
もしこの状態で対人事故を起こせば被害者救済の重大な支障となるため、違反点数6点の免停処分(欠格期間30日)と1年以下の懲役または50万円以下の罰金処分が下されます。
無車検かつ無保険で走行した場合には両者の罰則が加算されるため、違反点数は12点で免許停止90日となり1年6ヶ月以下の懲役または80万円以下となります。
こうした事態を避けるには、車検の有効期間満了日をしっかり覚えておくことが重要です。
もっとも簡単な確認方法はナンバープレートに貼付してあるステッカーを見ることです。
また愛車をバイクショップで購入した場合、車検満了日が近くなるとショップからメールやハガキなどで通知が来ることがあるので、見落とさないようにしましょう。
さらに2023年1月にスタートした電子車検証には、スマートフォンにインストールした専用アプリを通じて車検有効期間の満了を知らせるメッセージ機能があるので、そうした機能を活用しても良いでしょう。
いずれにしても、車検が切れた状態では絶対に走行してはいけません。
ちなみに車検切れに気づいたバイクの継続検査を行う際は、トランスポーターに積載して車検場に運搬するか、市町村役所で取得した仮ナンバーを装着して自走します。
仮ナンバーの申請を行う際は事前に自賠責保険に加入して保険証を提出する必要があるため、無保険状態は回避されます。
車検の受け方は大きく分けて2種類
道路運送車両法に定められた保安基準に適合しているか否かを確かめる継続検査(車検)にはオーナー自身で受検するユーザー車検と、バイク販売店や整備工場に依頼する方法があります。
日常的に愛車のメンテナンスを自ら行い、バイクいじりにも自信があるならユーザー車検にチャレンジするのが良いでしょう。
一方、ツーリングやスポーツ走行は大好きだけどメカは苦手で平日に時間が取れないようなら、ショップにお任せするのが無難です。
ユーザー車検

ユーザー自身が愛車の継続検査を行う場合、全国各地の運輸支局または自動車検査登録事務所(両者を合わせて検査場と呼ぶことも多い)にバイクを持ち込んで受検することになります。
プロメカニックが来場者の大半を占めていたかつての検査場は、アマチュアには敷居の高さを感じさせる面がありましたが、現在はユーザー車検に対する門戸は大きく開かれており、書類提出に関するアドバイスも手厚く初めて受検する受検者が事前に検査ラインを予習できるよう見学コースを用意している車検場も少なくありません。
継続検査は愛車のナンバーを管轄する自動車検査登録事務所だけでなく、全国どこの検査場でも受検できます。
また検査の予約も独立行政法人自動車技術総合機構のホームページ(https://www.naltec.go.jp/)の予約システムを通じて行えます。
この予約システムではおよそ3週間先の日付まで予約が可能となっており、1日4ラウンドの検査時間の空き具合も表示されているため、自分の都合に合わせて日時を選択できます。
ただし、予約した日時に検査場にバイクに乗って行かなくてはなりません。また継続検査のための整備も自分で行うなら、そのための作業時間も必要です。
そうした手間は掛かりますが、ショップなどに依頼するより費用を抑えられるのは確かです。とはいえ整備や部品交換の知識や経験が少ないまま、安く済ませることだけを目的にユーザー車検を選択することはおすすめできません。
検査日にライン検査をパスしたからといって、先述の通りその後2年間の安全性が担保されたわけではないからです。
バイク販売店やバイク用品店に代行を依頼する方法

検査場が稼働しているのは月曜日から金曜日の午前9時から午後4時までで、土日や祝祭日に検査を受けることはできません。
そのため平日は時間が取れないライダーの多くは、車両販売店やバイク用品店に車検を依頼するのが一般的なのではないでしょうか。
バイク販売店やバイク用品店は日常的にバイクの整備を行っており、タイヤやブレーキパッドやドライブチェーンなどの交換が必要な場合でも即座に対応できる強みがあります。
また、バイク販売店やバイク用品店で車検だけでなく整備全般を任せることで、バイクいじりが苦手なライダーにとっては安心感を得ることもできます。
バイクの車検にかかる費用
250cc以下の軽二輪のバイクを所有するライダーが車検付きの小型二輪を選択しなかった理由として「車検費用が高いから」という声があります。
果たしてそれは真実でしょうか?
250cc用のバイアスタイヤと1000cc用のラジアルハイグリップタイヤでは後者の方が高価で、単気筒より4気筒エンジンの方がスパークプラグの4倍必要です。
ただそれらは整備に掛かるコストであり、車検時にすべて必要というわけではありません。
車検時に交換しなければならない部品が多ければ車検時に掛かる費用もかさみますが、250ccのバイクでも2年に一度、消耗部品を一気に交換すれば多額の部品代が必要となります。
消耗品類を順番に定期的に交換した結果、車検時にはパーツ交換が何も必要なく、なおかつユーザー車検で自ら検査場に出向くのなら、2万円でおつりが来ることもあります。
ここでは車検時に必ず掛かる費用と、バイクショップに車検を依頼した際に必要な費用を分けて紹介します。
車検時に必ずかかる費用(法定費用)
自賠責保険
先に解説したように、自賠責保険はすべての自動車やバイクが加入を義務づけられている強制保険です。
自賠責保険の保険料は事故件数や被害者への支払い実績に応じて算出され、損害保険会社によらず同一料金でとなっており、2025年1月現在の料金は以下の通りです(継続検査時の加入を前提に24ヶ月で比較します)。
原動機付自転車 (125cc以下) |
8,560円 |
---|---|
軽二輪 (125cc超~250cc以下) |
8,920円 |
小型自動二輪車 (250cc以上) |
8,760円 |
これを見れば明らかなように、小型二輪が車検時に多額の自賠責保険料を支払わなければならないということはありません。
重量税
軽二輪(125cc超~250cc以下)の重量税は届出時にのみ4900円となり、その後は課税されません。
それに対して車検付きの小型二輪自動車(251cc以上)は、2年ごとの継続検査時に下記の重量税の負担が生じます。
なお重量税は初度登録からの経過年数に応じて変動します。
初年度登録からの年数 | 税額(2年分) |
---|---|
登録後12年未満 | 3,800円 |
登録後13年~17年 | 4,600円 |
登録後18年以降 | 5,000円 |
検査手数料
印紙等の費用として1,800円の費用がかかります。
上記のとおり、自賠責保険料は軽二輪も小型二輪自動車もほぼ同額(厳密に言えば小型二輪自動車の方が160円安い)なので、重量税と検査手数料分だけ小型二輪自動車の方が余分に掛かることになります。
ただしこれらは2年に一度検査時に支払う金額なので、1年あたりにすれば2,800円(初度登録後12年未満)~3,400円(初度登録後18年以降)の差になります。
バイク販売店やバイク用品店に代行依頼した場合にかかる費用
法定費用と呼ばれる自賠責保険料と重量税と検査手数料は、手間と暇をオーナー自身が受け持つユーザー車検でも必ず必要な費用です。
一方でバイク販売店やバイク用品店に整備や継続検査の代行を依頼した場合、上記法定費用に加えて下記の料金が掛かります。
車検代行手数料
ユーザーに代わって検査場にバイクを輸送して検査を受けるための手数料です。
法定整備基本料金
道路運送車両法第48条、自動車点検基準第2条により、走行距離や運転時の状態から判断して実施する日常点検整備や定期的に行う必要のある点検内容を定めた定期点検整備は、使用者の義務として定められています。
点検項目はエンジン、動力伝達装置、ステアリング装置、ブレーキ装置、足周り、電気・保安装置等があり、さらに各項目が細分化されて12ヶ月点検で35項目、24ヶ月点検では54項目に及びます。
ショップに継続検査を依頼した場合、検査前にこうした点検整備を行うための基本料金が発生します。
車両整備費用
法定整備を行った上で、パーツ交換や調整が必要となった際に生じる部品代や技術料がここに含まれます。
日頃からのメンテナンスをさぼって、車検時にタイヤ、ブレーキパッド、ドライブチェーン、バッテリーなどの交換時期が重なると、一気に費用が嵩むこともあります。
車検代行を依頼する場合は上記の費用も必要になるため、安くても50,000円前後~を一つの目安にすると良いでしょう。
バイクの車検に必要な書類
ユーザー車検でも代行を依頼する場合でも、継続検査を行う際にはいくつかの書類を準備しておかなくてはなりません。
中でも注意が必要なのが納税証明書です。キャッシュレス決済が普及したことで、自動車やバイクの税金もスマホで支払いが可能になりましたが、バイクの継続検査では金融機関やコンビニエンスストアなどの「領収日付印」のある軽自動車税納税証明書が必要です。
バイクの継続検査に必要な書類は以下の通りです
車検証
検査場のデータベースと照合するため、車検受付時には旧車検証が必要です。
納税証明書
バイクの継続検査では領収印がスタンプされた軽自動車税納税証明書の原本が必要です。自動車の場合、自動車税の納税状況は国土交通省のデータベースで共有されているためキャッシュレスで決済した上に検査場に納税証明書を持参しなくても継続検査の受付ができます。
しかし、バイクの場合は納税通知書に記載されたバーコードを利用してスマホの決済アプリで軽自動車税を支払い領収印がないと継続検査の受付ができません。
この場合、車検証上の住所地の市区町村役所の税務課で納税証明書の再発行手続きを行い、改めて紙の納税証明書を提出することが必要です。
紛失したわけでもないのに再発行手続きを行わなくてはならないのは何とも理不尽ですが、検査場では市区町村税の納付状況を確認できないのが領収印が必要となる理由のようです。
そのため継続検査のある年の軽自動車税はキャッシュレス決済ではなく金融機関やコンビニエンスストアで支払いを行い、納税証明書を紛失しないよう保管しておくことが重要です。
自賠責証明書
車検の有無にかかわらず、すべての自動車やバイクが自賠責保険に加入しなくてはならないのは先述の通りです。
継続検査を受検して合格した際は、保険期間が新車検証の有効期間満了日以降の期日まで有効な自賠責保険に加入しておくことが必要です。
そのため、継続検査をユーザー車検で受検する場合、検査受付時にあらかじめ24ヶ月先までの自賠責保険に加入しておき保険証明書を提示します。
一方、継続検査の代行を依頼する場合、バイク販売店やバイク用品店は損害保険会社の代理店となっていることも多いので、依頼時に加入することができます。
排出ガス試験結果証明書(ガスレポ)
社外製マフラーのうち、1999年以降の車種で純正触媒を取り外して交換する製品には原則排出ガス試験結果証明書(ガスレポ)が付属します。
この場合、継続検査受検時にガスレポも提出しなくてはなりません。
該当するマフラーを新品で購入した場合には製品に付属しているので紛失しないように保管し、継続検査時に持参します。
ガスレポが必要になるのは純正触媒を取り外す社外マフラー、具体的にはフルエキゾーストタイプのマフラーが該当し、純正触媒を外ささず装着できるスリップオンタイプのマフラーやサイレンサーにおいてはガスレポは不要です。
社外マフラー付きの状態で中古車として購入したバイクの継続検査にガスレポが必要か否かはそのマフラーメーカーのホームページなどで確認でき、手元にない場合は有償で再発行してもらえる場合もあります。
車検時のチェック項目
バイクの車検では検査官に目視確認と自動化されたテスターを使用して検査を行います。
目視検査ではメーカーから出荷された状態を維持したノーマル車であればほぼ問題はありませんが、ハンドルやシート変更などによって車体寸法や乗車定員が変わるとそのままでは検査をパスできないこともあります。
そのため継続検査でどのような箇所を検査されるかを知っておくと良いでしょう。
外観の確認
検査を受けるバイクが車検証に記載された車体であるか、車台番号(フレームナンバー)やエンジン型式を照合します。
この際に、逆輸入された絶版車や旧車では車台番号の刻印に不正がないかも同時にチェックされます。
ハンドル交換などのカスタムによって車検証に記載された寸法や重量が変化した際は原則的に構造変更検査が必要となりますが、その際の変化が一定範囲以内であれば構造変更検査は不要です。
この場合の一定範囲とは長さ±3cm、幅±2cm、高さ±4cm、車両重量±50kgとなります。
全長や全高などのサイズ以外にもフェンダーレスキットの反射板(リフレクター)無し、乗車定員2名登録でシングルシートの装着、シートは2人乗り用でも純正のグラブバーやシートバンドを取り外した場合も検査には通りません(いずれかが装着されていればよい)。
スリップサインが露出しているタイヤはそもそも保安基準不適合となるため、当然検査に合格することはできません。
灯火類

外観確認と同時にヘッドライトやテールランプやブレーキランプ、ウインカーやナンバー灯やホーンなどが正常に作動することを確認します。
検査官の指示によってヘッドライトのハイ/ロー切り替えや左右ウインカーの作動、テールランプ点灯状態で前後ブレーキを別々に作動させた際にブレーキランプが点灯するかがチェックされます。
テールランプがナンバー灯を兼用する車種で電球タイプのテールランプを赤色LEDバルブに交換した際にナンバー灯が赤色で点灯したり、後部リフレクターを取り外しても保安基準不適合となり、立ちゴケ等の転倒の影響でウィンカーにヒビが入っていたり、貼りつけ式のウィンカーにカスタムし、貼りつけている場所が悪いと通らないこともあります。
また、ウィンカーは
・発光色は橙色
・光源のワット数は10W以上60W以下
・毎分60回~120回で一定の周期で発光
という決まりがあります。
排気ガス・騒音

バイクカスタムの定番メニューであるマフラー交換を行った車両では、排気騒音と排出ガス検査がネックとなることがあるかもしれません。
排気騒音については受検車両の騒音規制年度によって定められた規制値に基づき、騒音計を使用した近接排気騒音の測定により合否を判断します。自分の愛車の規制年度は車検証の備考欄に記載されています。
一方排気ガス中に含まれるCO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)量を測定する排出ガス検査は、マフラー端部からCO・HCテスタのプローブ(排出ガス採取部)を挿入して行います。規制値は年を追うごとに変更されており、愛車がどの規制値に該当するかは型式に付随する排出ガス識別記号や車検証の備考欄で確認できます。
社外製マフラーのうち、1999年以降の車種で純正触媒を取り外して交換する製品には排出ガス試験結果証明書(ガスレポ)が必要なことは、検査時に必要な書類の項目でも説明した通りですが、見た目はノーマルでも経年劣化で消音機能が低下していたり穴が空いている場合は検査に通らないこともあります。
スピードメーター

スピードメーター、ブレーキ、ヘッドライトの検査は自動化されたテスターで行います。
スピードメーター検査はローラーでタイヤを回転させ、スピードメーターの表示が40km/hを指した際に検査官に合図を送ります。
自動車のスピードメーター検査は自車で加速して速度を上昇させるのに対して、バイクはテスターのローラーでタイヤを回転させるのが特徴で、スピード検出を前輪で行うか後輪で行うかによって、ローラーに載せるタイヤが異なります。
足周りのカスタムでホイールを交換し、タイヤの回転数をスピードメーター表示が一致していない車両はメーター表示が変わってしまうこともあるので注意が必要です。
ブレーキ

回転するドラム上でタイヤが回転している状態から、テスターの指示でブレーキを掛けた際に生じる制動力によってブレーキ性能を判断します。
ブレーキテストは前後輪それぞれで行い、ブレーキを掛けた際に回転するドラムに生じる抵抗力の大きさを測定しています。
実際の検査では前後輪ともロック状態になれば充分な制動力が発生していると判断される場合が多いですが、タイヤに掛かる荷重が不足してローラー上でホッピングするような時は再検査となることもあります。
ブレーキパッドやブレーキシューの残量が少なくても、ローラーの回転を充分に抑える制動力を発揮できれば検査は合格しますが、検査後2年の安全性を担保されたわけではないことを理解しておくことが重要です。
光軸・光量

光量と光軸をテストするヘッドライト検査は、バイクの車検で最も難易度が高いと言われています。
検査はヘッドライトテスタに正対してハイビームを点灯して行いますが、ヘッドライトとテスタの距離、車体やハンドルの向き、フロントフォークのストローク具合によって計測値が変化することも少なくありません。
自分でハロゲン球をLEDバルブに交換したり、メンテナンスの際にヘッドライト本体やヘッドライトが取り付けられたフロントカウルを取り外した場合、光軸は十中八九ずれると思って間違いありません。
そのような場合、検査場の近隣にあることが多い民間の検査施設で、有償で光軸確認と調整を行っておくと良いでしょう。
日常点検整備や定期点検整備はバイクユーザーの義務。車検は2年に一度の定期テストだと解釈しよう。
道路運送車両法で定められた様々な検査項目のうち、車両が保安基準に適合しているかを確認するために定期的に受検しなくてはならないのが継続検査です。
バイクの場合、原動機付自転車や排気量250cc以下の軽二輪自動車には受検の義務はなく、251cc以上の小型自動二輪車だけが受検しなくてはならないこと、そして継続検査にはさまざまな書類や費用、何より検査場に行かなくてはならない(バイク販売店や用品店に代行依頼することもできます)ことも上記で説明した通りです。
車検という行為だけに注目すれば250cc以下のバイクに比べて手間が掛かって面倒な印象もあるでしょう。
しかし重要なのは2年に一度の検査そのものではなく、検査の間に行うべき日常点検整備や定期点検整備です。
走行距離や運転時の状態から判断して実施する日常点検整備や定期的に行う必要のある点検内容を定めた定期点検整備は、小型二輪自動車を無車検状態で走行した際のような罰則こそないものの、本来は道路運送車両法により250ccの軽二輪自動車にも原動機付自転車の使用者にも課せられた義務です。
250ccだからブレーキパッドやタイヤが減らない、エアークリーナーエレメントが汚れない、タイヤが減らない、ドライブチェーンが伸びないわけではありません。
また250ccだからサイレンサーを取り外したり対向車を幻惑するヘッドライトで走行して良いはずがないことも、ちょっと想像すれば分かるでしょう。
消耗部品の交換や車体各部のグリスアップは車検の有無に関係なく必要な作業です。
学校の授業に置き換えてみれば、日常点検や日常整備が小テストで車検は期末テストのようなものです。
普段の授業や小テストを適当にやり過ごせば、期末テストで手痛い目に遭うことは明白です。
費用や時間的な負担が増すのは事実ですが、普段の点検がある上で継続検査を行うと考えれば、実は車検そのものが高いハードルにはならないことが理解できるのではないでしょうか。