中古バイクの中には、現在新車で購入することができない魅力的なバイクがあります。
その代表的なものが2ストロークバイクでしょう。

排出ガス規制によって新車のラインナップからは姿を消してしまいましたが、その刺激的な走りは4ストロークで味わうことはできません。
シンプルかつ軽量で高出力という2ストロークエンジンはバイクにとって非常に合理的で素晴らしいパワーユニット。

今回はそんな2ストロークの特徴とオススメしたい中古車について説明していくことにします。

2ストロークとは?

2ストロークエンジンは4ストロークエンジンと違ってバルブやカムなどを駆動しません。
シリンダーに開けられたポートがバルブとしての役割を果たします。

4ストロークが2回転に1回燃焼するのに対して2ストロークは毎回燃焼するというのが大きな違い。
そのため、同じ排気量でも大きなパワーを得ることができます。

また、機構が簡単なことから部品点数が少なく、シンプルかつ軽量。
バルブやカムを動かす必要がないので馬力の損失も少ないなどという特徴があります。
その反面燃費性能では4ストロークに劣り、オイルを燃料と一緒に燃やすことから排気数中のCOが多くなってしまいます(窒素酸化物は4ストロークより少ない)。

日本のメーカーは1960年代から1980年代にかけてロードレースやモトクロスに様々なレーシングマシンを投入して世界チャンピオンを獲得し、その技術をストリートバイクにフィードバックしてきました。
これが1980年代になるとレーサーレプリカとして人気になります。

特にヤマハとスズキは2ストロークに力を入れてきたメーカーとして知られています。

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2ストロークの人気車種

ここからは2ストロークの人気車種や注目したいモデルを紹介していくことにしましょう。
どのモデルも走りは刺激的。
そして日本のモーターサイクルの歴史においても大きな意味を持っているバイクばかりです。

YAMAHA RZ250

2ストロークの人気中古車で外すことができないのがRZ250でしょう。
1970年代の世界的なオイルショックなどで2ストローク人気が低迷していたころヤマハの技術者たちは「もしかしたらこれが最後になるかもしれないから、思い切り2ストロークらしいバイクを作ろう」
そんな風に考えてRZ250を投入しました。
結果的にRZ250は国内のみならず海外でも大ヒットとなって、そこから再び2ストローク人気が再燃したと言っても過言ではありません。

RZ250の魅力は、そのパワーフィーリングです。
低回転では頼りない面もありますが、パワーバンドに入ると猛然と加速していきます。
ラバーマウントで振動も少なく、高いところから飛び降りるような独特な加速感。
しなやかなフレームと細いタイヤが生み出す俊敏なハンドリングも今のバイクにはないものです。

HONDA MVX250F

2ストローク250ccのバイクで個性的なバイクに乗りたいのであればMVX250Fは面白い選択肢です。
250ccクラスでV型3気筒エンジンを搭載しているのはこのバイクだけ。
2気筒に比べると排気音やパワーフィーリングが明らかに違います。
エンジンの回り方はとてもスムーズ。
途中からパワーが盛り上がる感じではなく、滑らかに高回転まで回っていく感じは気持ちが良いですし、ストリートからワインディングまで乗りやすい性格です。

16インチのフロントホイールによるハンドリングはクィックですが、これもこの当時のホンダのバイクの味付け。
慣れるととても高いコーナーリング性能を発揮します。
発売当時はレプリカ度の高くなったライバルたちに押された結果、セールスはかんばしくありませんでしたが、性能では決して負けていません。

HONDA NSR250R

その走りやレースの成績などから最強の250ccと言われたのがNSR250Rです。
年式によって性格が若干異なりますが、サーキットでの速さを追求したマシン作りはスパルタンそのものです。

1987年に発売された型式名MC16はストリートでも比較的乗りやすい性格ですが、1988年に発売されたMC18は走りも性格も過激。
乗りこなすライダーを選ぶとまで言われていました。

1990年に発売されたMC21は完成度が高くなり、サーキットでもワインディングでも乗りやすいハンドリングが魅力。
1993年に発売されたMC28は、NSR250Rの最終モデルで、片持ち式のスイングアームとなり、キーが一般的なカギではなく、PGMカードキーを差し込む方式になっています。
NSR250Rはとても人気が高いので専門店もあり、リプロダクションパーツなども数多く販売されています。

NSR50/NSR80

12インチのミニサイズでありながら本格的な作りとデザインで高い人気を誇っているのがNSR50と兄弟モデルのNSR80です(基本的に車体は同じ)。
マニアの間では「Nチビ」の愛称で親しまれているこのバイクは、当時のワークスマシンNSR500を3/4にスケールダウンするというのがコンセプトでした。

NSR50は水冷の2ストロークエンジンで7.2psを発揮。
NSR80はNSR50のエンジンをベースに排気量を拡大して12psを発揮していました。
足回りの完成度も高かったためにその走りは、可愛い見た目からは想像もできないほど。
当時のレースでは上位をNSR50/80が独占するほどの速さを発揮しました。
現在も原付一種、原付二種では様々なバイクが販売されていますが、NSR50/80ほど刺激的なバイクは見当たりません。

KAWASAKI 750SS

1972年に登場し、当時量産されていた750ccとしては世界最軽量、最速だったのが750SSです。
海外でクレージーマッハなどと言われた500SSマッハⅢの排気量を750ccに拡大したエンジンは72psを発揮して最高速も200km/hを超えました。

「曲がらない・止まらない」というイメージが先行しているマッハシリーズですが、750SSのハンドリングは軽快で乗りにくさはありません。
更にリアサスを動きの良い近年のパーツに交換するだけでも操縦安定性が大きく向上します。

空冷3気筒750ccエンジンの排気音と白煙、パワーバンドに入ると車体をビリビリ震わせる振動は大迫力。
500SSと共に刺激的な加速感では、他に比較するバイクがないほどです。
輸出モデルは後期に入って振動対策のためラバーマウントになり、タンクが短くなってポジションが改善。
ライダーの着座位置が前になったので不意にフロントが浮くようなことも少なくなりました。

YAMAHA TZR250

レーサーレプリカに乗りたいけれど、スパルタン過ぎるバイクはチョット・・・・
なんて考えているのであればTZR250が良いかもしれません。
レプリカとしては前傾姿勢がキツすぎるわけでもなく、ストリートで乗りやすい素直なハンドリングやエンジン特性だからです。

しかしライバルと比較して性能が劣っているわけではありません。
ヤマハが速さを追求した結果、乗りやすさがサーキットのタイムに直結すると考えた結果です。
事実、TZR250が登場した1985年は、あまりの性能差にTZR250でないとプロダクションレースでは勝てないと言われ、サーキットがTZR250で埋め尽くされたほどでした。

極太のデルタボックスフレームは頑強に見えますが、フレームと足回りはしなやか。
ストリートを走っただけでその乗りやすさが分かることでしょう。
並列2気筒ケースリードバルブエンジンは低回転から扱いやすく気持ちの良い吹け上がりで楽しませてくれます。

YAMAHA R1-Z

TZR250と同じ並列2気筒ケースリードバルブエンジンをX字型のパイプフレームに搭載したネイキッドがR1-Zです。
ミッションのレシオをストリート用に最適化して、低中速のレスポンスを考えたキャブレターが装着されています。

エンジン特性や足回りもサーキットではなくストリートを考えて開発されているので、ワインディングなどであれば過激すぎるレプリカよりも楽しめる性格になっています。
完成度も高いのでツーリングなどで使っても不満は出ませんず。

レプリカのような派手さはありませんが、各部の仕上げも手が込んでいるので所有する喜びも満足させて
くれるはず。
2ストロードスポーツを普段使いしてみたいと思うのであれば、注目したいバイクです。

SUZUKI RG-V250Γ SP

最も進化した2ストロークレプリカが欲しいのであればRGV250Γ SPです。
1990年代に入って2ストローク250レプリカの人気が急速に低下したことから各メーカーは本格的な2ストロークレプリカの開発をしなくなりますが、スズキだけは違いました。
1996年に車体からエンジンまで完全新設計のRGV250Γ SPを発表したのです。

乾式クラッチやカセット式ミッション(エンジンを分解しなくてもミッション交換が可能)を標準装備。
また2ストロークとしては珍しくセルモーターを装備していました。
RGV250Γ SPは生産が中止されるまで仕様変更は行われていませんが、レースで活躍したラッキーストライクカラーが限定で発売されました。
1960年代から2ストロークバイクに力を入れてきたスズキのプライドが結集したマシンだと言えます。

YAMAHA DT230 LANZA

ヤマハが最後に開発した2ストロークバイクがDT230 LANZAです。
1980年代から1990年代で2ストロークエンジンを搭載したオフロードバイクは、ほとんどがモトクロッサーレプリカともいうべき存在。
当時盛んだったエンデューロレースで勝つため過激なマシンになっていましたが、DT230LANZAはストリートや林道など普段の使いやすさを考えて設計されています。

そのためにオフロードバイクとしてはシート高もおさえられていて、オンロードでのハンドリングも良好。
エンジンも非常に扱いやすくなっています。
セルモーター装備なので始動も簡単。
サスペンションがよく動くのでオンロードのツーリングに使っても快適です。
それでいてパワーは40psを発揮しているので速さは十分すぎるほど。
最も気軽に乗ることができる2ストロークバイクだと言って良いかもしれません。

YAMAHA RZ125

80年代から90年代にかけて登場した125ccクラスの2ストロークスポーツバイクは、どれも非常に高い性能を発揮していて、今乗ってもとても刺激的。
「原付二種でこんなに速いの?」と驚くことでしょう。
どのバイクもポテンシャルは高いのですが、中でもマニアに人気なのはRZ125です。

スリム&コンパクトな車体にパワフルな2ストローク単気筒エンジンを搭載しているので、その加速性能は驚くほど。
カミソリのように鋭いコーナーリング性能で、1980年代に関東近郊のワインディングに集まる走り屋達の間では「ワインディング最速バイク」などと言われたほどです。
後期のモデルからは排気バルブのYPVSが装備されたので低中速からの扱いやすさが大きく向上しました。

SUZUKI RG500Γ

RG500Γは2ストロークレプリカの中でも別格的存在だと言ってよいでしょう。
2ストレプリカ最大排気量ということに加え、スクエア4というエンジンのレイアウトや細部の寸法までワークスマシンと同じに作られていました。

最大出力は輸出モデルで95ps(国内仕様は64ps)に到達。
レース用にチューニングされたバイクは、市販レーサーRGB500と対等以上のパワーを発揮したほどです。
その加速フィーリングは唯一無二。
振動がなくとても滑らかなのに、甲高いスクエア4の排気音と共に速度が凄い勢いで上がっていくような不思議な感覚です。

RG500Γは海外でも人気が高く、大排気量のレプリカとしては最も多くのバイクが生産されました。
現在もゴガンの愛称で親しまれています。

2ストロークバイクの魅力は色褪せない

4ストロークバイクの性能は年々向上していますが、2ストローク独特の加速感やパワーフィーリング、軽さといった魅力が色褪せてしまうことはありません。
実際に乗ってみると現在のマシンとはまったく違った強烈な個性があることがわかるはずです。

もしも気になっているようであれば、是非一度2ストロークバイクに乗ってみてください。

筆者プロフィール

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