NS400Rはホンダ2スト最大排気量のレーサーレプリカ
公開日:2023.02.20 / 最終更新日:2024.11.06
NS400Rは、バイクブームの真っ只中である1984年に誕生したレーサーレプリカ。
ホンダの2ストロークストリートバイクとしては最大排気量を誇ります。
いったいどんな特徴を持ったマシンだったのでしょう?
チャンピオンマシンNS500をイメージ
NS400Rが登場した背景には、ワークスマシンNS500の存在がありました。
世界ロードレース選手権の最高峰GP500クラスで、キングと呼ばれたヤマハのケニー・ロバーツを倒すために開発されたマシンです。
天才ライダー、フレディー・スペンサーのライディングにより、キング・ケニーとレース毎にデッドヒートを繰り広げ、1983年に見事チャンピオンの座を獲得。
この戦いは世界中のライダーを熱狂させ、翌1984年にレプリカであるNS400Rが登場することになるのです。
なぜ500ccではなかったのか?
教習所で大型免許が取得できる現在とは違い、試験場で限定解除していたライダーは多くありませんでした。
日本の市場で多くのライダーに乗ってもらうことを考え、排気量が400ccとされたのですが、これには賛否両論がありました。
ライバルのヤマハRZV500RやスズキRG500Γは、GP500レプリカとして排気量を500ccにしていたからです。
特に日本とは免許制度が異なる海外では「500ccにして欲しかった」という声も少なからずあったようです。
2ストV型3気筒エンジンの構造は?
NS400Rのエンジンは、NS500同様にピストンリードバルブ方式のV型3気筒です。
しかし構造はまったく違っています。
NS500では中央の1気筒が水平で、左右2気筒が直立していたのに対し、NS400Rは左右2気筒が水平で、中央の1気筒が直立しているのです。
レーサーのように左右のシリンダーを直立させてしまうと、チャンバーが2本後ろに伸びてしまうことになり、シート幅も広くなって補機類を装着する場所がなくなってしまうから。
ストリートバイクとしての扱いやすさや車体をコンパクトにするためのレイアウトで、先に市販されていた2ストV型3気筒のMVX250も同じシリンダー配列になっていました。
NS500の120度等間隔爆発と違い、NS400Rでは左右のシリンダーが同時に爆発するので爆発間隔はVツインと同じ。
ただし1気筒の爆発と2気筒同時爆発が交互におこることから、排気音は独特なものになりました。
エンジン出力は、当時の自主規制値のリミットである59馬力を発生。
輸出仕様では72馬力と、750並みのパワーを誇りました。
前傾した左右のシリンダーにはホンダ独自の排気バルブATACが装備され、低中速トルクを犠牲にすることなく高回転のパワーを引き出しています。
レプリカ度の高いパーツと高品位な仕上げ
NS400Rでは足回りやブレーキにレプリカ度が高く、高品質なパーツが奢られていました。
星型のコムスターホイールは、NS500などワークスマシンのデザインを忠実に再現。
アルミ角パイプを使ったフレームの形状もNS500と良く似ています。
フロントフォークには、ブレーキング時に姿勢を安定させるホンダ独自のアンチノーズダイブ機構TRACを装備。
アルミキャスティングによるスイングアームの造形も凝ったもので、リアサスペンションはホンダお得意のプロリンク。
外装のデザインも非常にスマート、かつスタイリッシュでした。
このように非常に力の入ったバイクでしたが、販売は決して好調ではありませんでした。
そのためにモデルチェンジが行われることもなく、ラインナップから姿を消すことになってしまうのです。
パワフルで乗りやすいマシン
NS400Rの走りは非常に刺激的で、高いレベルのスポーツライディングが可能です。
ライバルであるRG500ΓやRZV500Rに比べて車体がコンパクトであることから、運動性能が高く、ビック2ストとは思えないほど扱いやすいのが特徴。
サスペンションやシートもハード過ぎず、乗り心地も悪くありません。
2ストというと、ある回転から突然パワーが出てくるような特性をイメージする方もいるかもしれませんが、NS400Rはまったく違います。
1気筒あたりの排気量が大きいことから低中速でも力強く、スムーズでトルクの谷もありません。
もちろん全開にした時の迫力ある加速はビッグ2ストならでは。
ストリートでも扱いやすく、スポーティーな走りもできるバイクです。
ビッグ2ストの中では比較的維持が容易
これから維持していこうとする上でのポイントは、専門店からリプロダクションパーツが販売されていること。
80年代のレプリカは(特にビッグ2スト)、パーツの欠品で思うように整備することができずに苦労することもありますが、NS400Rは恵まれていると言えるでしょう。
NSR400Rは、数少ないビッグ2ストロークレプリカの1台であり、ホンダが市販したストリート用2ストマシンの中では最大排気量。
細部まで凝った作りがマニアの心をくすぐります。
もう二度と出てくることがない貴重なマシンなので、もしも興味があるのであれば、程度の良いマシンが出てきた時は見逃さないようにすることをオススメします。