カワサキZ1-Rはカフェレーサースタイルの先駆だった
公開日:2023.02.23 / 最終更新日:2023.02.20
カフェレーサースタイルで話題になったこのモデルは、どんな背景から生まれ、どんな特徴を持っているのでしょう?
Z1の成功でビックバイクをリードしたカワサキ
Z1の世界的な大ヒットで、ビックバイクにおけるカワサキの人気は不動のものとなりました。
しかしライバルメーカーも黙って見ていたわけではありません。
ホンダはCB750Fourを少しずつ進化させ、70年代中盤にはスズキGS750やヤマハGX750が登場するなど、750クラスを中心に日本製ビックバイクが増えていったのです。
新しい風を巻き起こしたカフェスタイル
カワサキはZ1をZ900、Z1000と進化させていきましたが、更に多くのニーズに対応することを考え、モデルのバリエーションを増やすことを考えます。
そしてZ1000をベースとし、欧米で人気のカフェレーサースタイルを取り入れたZ1-Rが開発されました。
コンチハンドルにビキニカウルを装着し、タンクはシャープなデザインを最優先した結果、13リットルという小さなものを採用。
マフラーは4in1タイプとなり、フロントタイヤはZ1000の19インチから18インチに小径化されていました。
それまでの丸みを帯びたカワサキのデザインとは正反対の直線を基調としたスタイルに対して「イメージがあまりに大きく変わりすぎる」という反対の声もあったといいますが、それでも発売されることになったのは、メインターゲットであるアメリカからの強い要望があったからでした。
結果として、このデザインは世界中で大きな話題となります。
Z1-Rは好調なセールスを記録し、Zの人気に再び火が付くことになったのです。
ビックバイクのライバルが続々誕生
時を同じくして、ヤマハXS1100、スズキGS1000など、リッターマシンのライバルが登場してきました。
Zを研究し尽くして登場してきたこれらのマシンが、性能的にZを上回っているのは当然です。
対するZ1-Rは、フロントホイールの18インチ化で高速での直進安定性が不足するという問題が露呈。
これがマイナスイメージになってセールスで徐々に苦戦するようになっていきます。
細部を対策したZ1R-Ⅱを投入
カワサキはすぐ対策に乗り出し、1年後にZ1-Rを改良したZ1R-Ⅱを投入します。
Z1R-Ⅱでは直進安定性の対策としてフロントホイールを19インチに変更し、容量が少なすぎるという声があったタンクを20リットルに拡大。
マフラーを左右2本出しとしました。
ところがここで立ちはだかったのが宿敵ホンダのCB。
DOHC16バルブエンジンを搭載したヨーロピアンスタイルのCB900Fが発売されるのです。
同時発表された6気筒マシン、CBX1000のインパクトも絶大でした。
対するZ1R-Ⅱのエンジンは排気量こそ大きくなっているものの基本はZ1です。
新型マシンに話題をさらわれる結果となり、Z1R-Ⅱは人気を取り戻すことができず、終わることになりました。
アメリカではターボモデルも登場
この人気低迷が思わぬ展開につながっていきます。
アメリカカワサキの重役アラン・マセックが、Z1-Rの売り上げを伸ばすため、二輪用ターボを装着して販売することを考えたのです。
Z1-R-TCと呼ばれたこのマシンは、カワサキが公式に認めたものではなく、マセックがスタートさせたTCC(ターボ・サイクル・コーポレーション)という会社のスペシャルモデルとして販売されました。
直線こそ猛烈に速かったものの乗りにくく、信頼性も高いとはいえませんでしたが、ドラッグレース好きが多かったアメリカでは中々の人気。
日本にも当時数台が上陸し、バイク雑誌のテストで凄まじい加速性能が紹介されたこともありました。
後々のモデルに引き継がれたZ1-Rのデザイン
Z1-Rはラインナップから姿を消すことになりますが、その後のマシンに大きな影響を残しました。
Z1000の後継となるZ1000Mk2にもZ1-Rの直線を基調としたデザインが採用され、その後も多くのカワサキのマシンに受け継がれていくことになったのです。
Z1-Rは生産された期間が長くありませんが、中古車を探すことは、さほど難しくありません。
また基本構造がZ系で頑丈ですし、維持や整備に関してもこの時代の旧車としては容易です。
当時は新型モデルの影に埋もれることになってしまったZ1-Rも現在の目で見ると、非常に個性的かつ魅力的。
もしも興味があるようでしたら、是非中古車を探して、現車をご自身の目で見てみてください。
世界のライダーを魅了してデザインが、現在でも色あせていないことが分かるはずです。