勝手に指標

  • 秘境感
    ★★★★★
  • 天空感
    ★☆☆☆☆
  • 潮風感
    ★☆☆☆☆
  • 爽快感
    ★★★☆☆
  • 根性感
    ★★★☆☆
  • 開放感
    ★★☆☆☆

相棒は日本最後の清流
心に沁みる原風景の旅へ

 四国ツーリングのハイライトの一つが四万十川沿線の旅。“日本一の清流”とも言われている川沿いを走るリバーサイドロードのツーリングだ。四国の川の代名詞とも言える全国的知名度もトップクラスの川。日本の原風景を代表する風光明媚な景観と、秘境感漂う幽玄な雰囲気が大人気の定番ルートの一つである。
 総延約200kmにもなる四万十川は、山の間を縫うように蛇行しつつ太平洋に注ぐ。途中にはもちろん集落は点在しているが、工業地帯や大規模なダムは皆無。主に山間部を流れており水質の良い支流が多いため“日本最後の清流”とも呼ばれている。
 また、四万十川を代表する景観の一つが沈下橋。これは増水時には水面下に沈み、流失・破損を防ぐ橋の事だが、四万十川にはこの形状の橋が非常に多い。現在本流には22本、支流を含めると47本にものぼる。高さは水面上2~3m。欄干の無い独特の景観が特徴的で、高知県ではこの沈下橋を伝統的景観遺産として保護している。
 主に国道381号・441号が四万十川沿線に沿ってトレースしているが、このルートが今回のメインルート。とは言え山間部のルートのため、展望はほぼ開けないと言っていいだろう。つまり、ステレオタイプの“絶景”は望めないルートなのだ。では、なぜこのルートが“絶景ロード”なのか?
 その答えの鍵が四万十川なのだ。光る水面と共に深山の麓を縫って走るこの道は、川の美しさを実感できる。源流付近のせせらぎより始まり、ダイナミックな中流域へ。そして雄大に流れる下流域を経て辿り着く終点の太平洋。自分が水になり海へ注ぐまでの疑似冒険をしている気分になれるのだ。風景変化の様々な局面が全て感動的に。谷合の流れや雄大な蛇行とその変化は非常に多彩だ。その多彩な変化の数が感動の数となるのだ。開けた風景は全く無いながら、感動の数では中庸なスカイロードの比ではない。自らが大自然と溶け合い、川と共に旅をするのだ。ソロツーリングでありながら、相棒と共に時を過ごす錯覚すら覚えるルートなのである。
 四万十川沿線はまさに秘境地帯。だが、世に秘境は無数にあるものの、大自然が旅の相棒となる不思議な感覚を体験できる秘境は多くない。そう、このリバーサイドロードはワンダーロードなのだ。目で見るより心で見る風景。もちろん、人工物が無い訳ではない。沿線には町が点在し、生活感も豊富。流域全てが川と共に生きる生活の場なのである。だが、この景観こそが伝統であり遺産とも言える。独断ながら。絶景とは感動熱量の大きな景観と捉えている。この川流域は清涼かつ涼し気ながら、その熱量は非常に高い。
 絶景とは心の中にある。そしてこのルートは国内トップクラスの“絶景ロード”と自信を持って断言できるバイクロードなのである。


四万十川の風景が特に美しいスポットとして人気の岩間沈下橋。驚くべき事に、このルートも旧国道だったのだ。道幅は狭め。走行には十分な注意を。


“カワガキ”と呼ばれている地元の子供達。夏場の沈下橋界隈では定番の風景。四万十川と共に暮らす伝統風景の一つだ。深く激流のため、要注意!


四万十川の支流、梼原川にかかる名橋。昭和19年竣工の林鉄橋だ。現在は道路橋として供与されており、バイク通行も可能!国道439号の名スポット。


愛媛県境付近の深山中に湧く、四万十川源流。ここより高知県内を大きくS字に横断。山間を蛇行しつつ太平洋まで約200kmの旅が始まる。


四万十川沿線の町、大正町は一時期大ブームになった栗焼酎、あの“ダバダ火振”の蔵元がある。特産の栗で仕込まれる焼酎の甘い香りが堪らない。


四万十川沿線には数々の山村が点在。沿線を走る旅もまた山村を継いでゆく。決して大展望ではないが、里山の田園は心に沁みる日本の原風景だ。

マップ

  • 33.213108, 132.805133
  • 12
  • 16
  • 5
  • 36.814725, 137.042106
  • 35.951204, 137.385788

大きい地図はこちら

  • in-out
  • ビューポイント
  • スポット(レストラン、道の駅、温泉、etc.)

ロードデータ

交通量

国内有数の知名度を誇る清流沿線のルートながら、意外と交通量は少な目。とはいえ、観光車両も散見され地元車以外も多く、注意深い走行を心掛けよう。

路面

現在は概ね2車線の高規格舗装路。清流を横目に走る爽快リバーサイドロード。舗装状態は申し分なく、初心者でも気軽に四国の秘境を楽しめる。

筆者プロフィール

神田 英俊

内外出版社発行、隔月刊ツーリング雑誌“MOTOツーリング”誌のコンセプター兼編集長。“旅人による旅人の為の雑誌”を基本コンセプトに、全国のDEEPな旅ネタを更に深く掘り下げて取材・掲載している。個人的なバイク趣向はオフロード。季節を問わず、主にキャンプを基軸とした旅が中心。冬季北海道ツーリングの常連でもある。バイクと共に温泉もこよなく愛しており、温泉ソムリエの資格を持つ秘湯巡礼ライダーでもある。