勝手に指標

  • 秘境感
    ★★★☆☆
  • 天空感
    ★★☆☆☆
  • 潮風感
    ★★★★★
  • 爽快感
    ★★★☆☆
  • 根性感
    ★★★☆☆
  • 開放感
    ★★☆☆☆

忘れられた隔絶の絶景地域
原風景を感じる旅へ行こう

日本屈指のリアス式海岸が美しい三重県南部地域は、南伊勢とも呼ばれる風光明媚な情景が印象的だ。まさに中京圏屈指の絶景地帯と呼ぶに相応しい。しかし、伊勢神宮やパールロードといった、全国的に有名な観光名所も近隣にあるに関わらず、全国的知名度は決して高いとは言えない穴場的地域なのだ。
 実は、牛馬が交易の中心だった時代は陸路ルートが険しい地域だった事から“陸の孤島”とも呼ばれた地域でもあった。この穴場的雰囲気はその当時の名残を継承しているとも言えるだろう。この地域を縦貫しているルートが、今回ご紹介する国道260号線。点在する鄙びた漁村を繋ぐ情緒抜群の潮風ルートだ。現在は高規格道路が開通しており、数年前と比べるとアクセスは格段に向上。しかし、旧国道はそのまま保全されており、街路として現役で走行可能な旧街道的情緒抜群のルートだ。
 この地域特有の光景がリアス式海岸の複雑な海岸線。海岸まで急峻な山岳地帯が迫っている事が特徴の情景だが、南伊勢もその典型例の一つだ。海岸線は非常に複雑で、集落同士は山峰で分断、連絡する街道も山腹をトラバースする複雑な線形を描いている。
 実はこの地域には平家の落人達が開拓した集落が点在しており、その名残は“〇〇竈”という地名に残されている。壇ノ浦の戦い後、移住者としてこの地域に参入してきた落武者達はカマドを構築し、漁業ではなく製塩業にて生計を立てたと伝承されており、この地名がその名残と言われているのだ。
 つまり平家の落人達が新天地として選ぶ程、地形的にも険しく複雑な地域という事だ。必然的に“隔絶の地”となっていた訳である。しかしそれが故、この地域の風景は実に美しい。海の青と山の緑。空の蒼を含めれば、3色が織り成す素晴らしい色彩の楽園。まさに海と山が出会う絶景が堪能できる。
 この風景こそが南伊勢のメインディッシュ。周辺には多くの展望台が整備されており、場所ごとに大変個性的な展望が楽しめる。単に標高に頼った展望ではなく、複雑な海岸線と無数の入江が描く絶妙な絵画は、まさにここにしかない景色。これを見る為だけでも訪れる価値がある。
 全的的には展望が開けた絶景道!…という訳ではないが、断崖トラバースルートより時折り望む太平洋の展望は、パールロード顔負けの絶景感!かつては悪線形酷道としても有名なルートだったが、現在は高規格バイパスが貫通。移動も大変スピーディーだ。しかし、現在も生活道路として現存する旧街道は日本の原風景を思わせる旅情感抜群の旅路。伊勢の奥座敷と呼ぶに相応しい風光明媚な南伊勢。かつての隔絶の地には、旅人の心を擽る原風景旅情と隔絶の絶景が広がっているのだ。


国道260号線の高規格バイパス区間以外は市街地を縦貫する国道兼生活道路。旧線形の鄙びたルートが海岸沿いの集落を繋いで走っている。

高い防潮堤に囲まれた独特の風景が特徴的な南伊勢町の贄浦地区。あえて旧国道を辿るルートは、日本の原風景的な光景を楽しめる旅情感抜群の旅だ。

南伊勢町船越地区の高台からは、特徴的なリアス式海岸を一望できる。秘境感抜群のミカン畑沿いの農道だが、超穴場ポイント!

鵜倉園地にある見江島展望台は、太平洋の大展望とハート型の入江“かさらぎ池”を見下ろす穴場絶景ポイント。南伊勢には10ヶ所もの展望台が点在している。

英虞湾を望むリアス式海岸の展望では定番の横山展望台。南伊勢と共にぜひ訪れたい絶景ポイントだ。観光地化されており、気軽に楽しむ事が可能だ。

神宮観光と絡める場合の穴場ルートが県道12号伊勢南勢線。神宮の神域を縦貫し、途中の剣峠は離合不能な屈指の険道。神宮立社旧候補地とも言われる鏡岩も必見。

マップ

  • 34.286231, 136.574346
  • 13
  • 18
  • 11
  • 34.286231, 136.574346

    国道260号線南伊勢周遊道路

  • 34.28444, 136.57416

    中ノ磯展望台

大きい地図はこちら

  • in-out
  • ビューポイント
  • スポット(レストラン、道の駅、温泉、etc.)

ロードデータ

交通量

観光車両やマイカーは大変少なく、爽快な走行が楽しめる。ただし、地域住民の生活道路でもあり細心の注意が必要。市街地も多いがストレスは意外と少なく楽しめる。

路面

新造された高規格バイパスは幅広2車線の改装路。旧国道も舗装の荒れは少なく快適に走行可能だ。冬季も凍結の心配が少ないルートのため、冬ツーリングにもお勧めだ。

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筆者プロフィール

神田 英俊

内外出版社発行、隔月刊ツーリング雑誌“MOTOツーリング”誌のコンセプター兼編集長。“旅人による旅人の為の雑誌”を基本コンセプトに、全国のDEEPな旅ネタを更に深く掘り下げて取材・掲載している。個人的なバイク趣向はオフロード。季節を問わず、主にキャンプを基軸とした旅が中心。冬季北海道ツーリングの常連でもある。バイクと共に温泉もこよなく愛しており、温泉ソムリエの資格を持つ秘湯巡礼ライダーでもある。