「映える(ばえる)」写真と言えば、SNS「インスタグラム」での見栄えが良く感動的な写真を表していますが、映えるバイク写真とはどういうものでしょうか。今回は映える撮り方やスポットについてご紹介します。

1.映える写真とはどんな写真?その定義とは?


「映える」はインスタグラム・ユーザーから生まれた言葉ですから、映える写真の定義とは、インスタグラムの中で見栄えが良かったり、フォトジェニックと感じられる写真ということです。また、映えには流行的なものもあって、いまもてはやされている写真の撮り方や加工の仕方というものも存在します。映えを意識するならそうした流行に乗るのも手です。なお、近年は「88」と書いて映えを略記することもあります。

映える写真では、以前はキラキラとした彩度の高い写真が好まれていましたが、現在の流行りはナチュラル志向で、彩度を落としたダルトーン(くすんだ色彩)などもレトロでオシャレな感じとして人気です。
また、日本の場合は、人や景色、お店や飲食物などがもてはやされていますが、海外だと映えはイコール人物写真という認識です。国が変われば、アプリやツールの使い方、価値観も違うというのは面白いですね。

2.インスタの代表格「 #バイク女子」は良いお手本


インスタグラムでバイクの写真を検索すると、検索数の多いハッシュタグは以下になります。なお、ハッシュタグとは投稿する際に、後で検索しやすいように、「#(キーボードの3にある記号)」の後ろにつけるキーワードのことです。

【バイク関連ハッシュタグ】※国内インスタグラム、2022年1月時点
①バイクと女性の写真:#バイク女子(投稿数84.3万件)
②バイクと風景の写真:#バイクのある風景(投稿数184.5万件)
           #バイクのある景色(投稿数27.3万件)
③ツーリング中の写真:#バイクツーリング(投稿数21.1万件)
           #バイク旅(投稿数13.4万件) 
④汎用的なバイク写真:#バイクのある生活(投稿数100.4万件)
           #バイク写真部(投稿数50.2万件)

インスタグラムは10~20代の若年層、特に女性が多く利用しているSNSです。バイク写真の映えに関する価値観や定義も女性ライダーが築いてきました。著名な女性モトブロガー(YouTubeなどで情報発信するライダー)も必ずと言っていいほどインスタグラムを活用しています。

彼女らの写真は、人物+背景+バイクという点でとても良いお手本です。映えるバイク写真とはこういうものだと理解できるでしょう。インスタグラム独特の正方形(スクエア)写真における構図の取り方も斬新なものが多く印象的です。

3.最大ハッシュタグ「#バイクのある風景」とは?


「#バイク(投稿数338.3万件)」に続いて投稿数184.5万件と多いのが「#バイクのある風景」です。このハッシュタグからは、バイクユーザーの様々な日常が見えてきます。バイク通勤、カフェでの食事、ガレージでのカスタム、ツーリング風景まで様々です。「#バイクツーリング」などツーリングや旅に寄ったハッシュタグと違うところは、撮影場所や装備、荷物の有無などでしょうか。

「#バイクツーリング」では、ツーリング先でユーザーが目にしたり体験した楽しそうなコトが見えてきますが、「#バイクのある風景」ではバイクというモノのかっこよさなどオーナーのバイクに対する情や価値観が見えてきます。

なお、バイクというハッシュタグだと、ロードバイクのような自転車も検索されてしまうので、ハッシュタグの文言はある程度具体的にした方が伝わりやすいでしょう。

4.三脚にリモコン? 自撮り(自分撮り)のススメ


バイク関連のハッシュタグを見ていると、あることに気づきます。それは自撮り(自分撮り)が少ないということ。圧倒的に車両だけという写真が多いんです。ツーリング風景などではもう少し自撮りがあってもいいのではないでしょうか。


ここでは、自撮りでツーリング記事まで作っている筆者からのちょっとしたノウハウをご紹介したいと思います。スマホや一眼レフ、ミラーレスなどカメラの種類によらない概念的な内容ですが、1人でも自分+景色+バイクを撮れる簡単なテクニックです。

①三脚+スマホ用ホルダー

三脚は、自撮りをするのに必要なものです。ハンディサイズのものでもいいのですが、伸ばした時に全長1m50cmくらいあると様々な構図が作れます。また、三脚の雲台に装着できるスマホ用ホルダーがあれば、スマホを縦・横に固定でき便利です。

スマホは手軽かつ気軽に写真が撮れ、ダイナミックレンジ(白飛び・黒つぶれのないように階調を表現する性能)も広いので、画角の全体が明るく綺麗に写りますが、拡大(ズーム)やストロボが苦手な機種もあるので、撮影後は細部まで確認しましょう。

②ストロボとストロボ用スタンド

ストロボ(フラッシュ)があれば被写体の影を明るくしたり(起こしたり)、被写体の瞳にハイライトを入れたりできます。人物は生き生きとして、バイクの金属部分なども冷たく硬い質感を表現しやすくなります。

スマホにもストロボは内蔵されていますが、光量が少ない(ガイドナンバーが小さい)ので絵づくりを大きく変えるような使い方はできません。あくまでも暗くて見えない所を見えるようにするというものです。

自撮りをする場合は、ストロボ用スタンドがあれば、離れたところやいろいろな角度から光を当てられるので様々な光を演出できるようになります。

また、レフ板(れふばん)で光を反射させて明るくすることもできますが、スタンドを使っても風に弱いのが難点です。レフ板を使う場合は他の人に持ってもらったほうがいいでしょう。

③ワイヤレスシャッターリモコン

離れた所に設置したカメラで自分を撮影する場合は、カメラのセルフタイマー機能、インターバルタイマー機能のほか、ワイヤレスのシャッターリモコンが便利です。別途購入にはなりますがスマホ用のリモコンも発売されています。筆者はこのリモコンをベルクロテープでバイクの左グリップに固定して撮影ポイントに到達したら親指でシャッターボタンを押して自撮りしています。その際のカメラ(一眼レフ)は連射モードにしておきます。


なお、リモコンにもいくつか種類がありますが、電波や無線の種類には注意しましょう。赤外線のものは到達距離が数十mと短いですが、Bluetoothのものなら100m以上も電波が届くので、走行写真の自撮りも苦労なく撮れます。

5.出かけた先では、映える風景と光を見つけよう!


バイク写真の構成物は、背景、バイク、人物が基本です。インスタグラムのアプリでは1080×1080ピクセルといった正方形(スクエア)の写真が主流ですので、その場合の構図はかなり特殊です。撮影者のセンスを如実に反映するため、難しさでもあり工夫しがいのある所でもあります。

一眼レフなどで撮影後、簡単に正方形にトリミングまたは余白をつけてくれるアプリもたくさんありますが、撮影時に正方形の構図をあらかじめ意識しておいたほうが見栄え良く見せられるでしょう。

さて、インスタ映えするスポットは、街中から旅先まで数多くあります。誰もが通り過ぎるような日常の風景にバイクをからませるのもよいですし、ツーリングエリアの有名スポットで工夫するのもよいでしょう。他者とのちょっとした差が映えにつながります。

「#バイクツーリング」であれば、映え要素のひとつである絶景(背景)に出会うことも重要です。そのためには現地で足を使うこと。幹線道路を外れた一本なかの道や観光客が集まる展望台のさらに上(下写真左)といった所から景色を見てみることです。こうした広い絵は、いわゆる鳥の視点に近づけるということです。

その一方で、もっとミクロ的に、動物や虫のように視点を下げてみたり、小さなものを拡大したりというメリハリを出すことも効果的です。例えばバックミラーに止まった蝶をすかさず拡大撮影したり、カメラを地面に置いて撮ったりといった工夫です。

有名スポットや観光地でもこうした工夫をすることで他者とは違う新鮮な映えを演出することができます。肝心なのは「絵を作る」という演出の心です。そこにあるものを切り取るのも写真ですが、映えさせるためには演出が欠かせません。人物(自分)は演者だという気持ちでシャッターを切ってみてください。きっと映える写真が撮れるはずです。

また、撮影後に加工アプリで写真を編集することも重要ですが、やりすぎると逆に違和感ばかりが目立ってしまいます。ものとものとの輪郭や表面のざらつきなどに気を付けながら(逆に意図的に狙うのもアリですが)いろいろと試してみてください。

インスタグラムには写真の加工・フィルターにも毎年流行がありますから、加工アプリの機能などにも常に気を配っておくのもいいかもしれません。

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筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。