原付免許は学科試験だけで取得できるので、50ccの原付一種バイクはとても手軽で便利な乗り物となっていますが、メリットばかりではありません。
二段階右折や30km/h制限、2人乗りができないといったルールは時にデメリットと感じることもあるでしょう。中でも「どうやるのかわからない」「やったことがない」といった声も聞かれるのが3車線以上の交差点で行わなければならない2段階右折です。そのやり方や注意点について解説します。

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原付バイクの二段階右折とは


二段階右折とはどういうものなのか、バイクの中で原付一種だけ行う理由はなぜなのかについて解説します。
二段階右折禁止の交差点もありますよ。

二段階右折は道路交通法において原付一種バイクに義務付けられている交通ルールです。
3車線以上の大きな交差点で行う必要があり、交差点内を小回りせずに、交差点の側端(輪郭)に沿って進んで交差点内の待機スペースで向きを変えて曲がる方法です。

“3車線以上”というのが少しわかりづらいのですが、2車線の道路を走っている時に交差点の手前に右折レーンが現れる場合がありますが、この右折レーンを含めることで 3車線以上の交差点となります。
原付一種バイクに乗っていて、この交差点で右に曲がりたければ二段階右折をする必要があるのです。

また、3車線以上にならなくても「原動機付自転車の右折方法」の標識(下図)が出ている場合は車線の数に関係なく二段階右折をしなければなりません。

二段階右折が必要なのはなぜ?

二段階右折が必要な理由は、原付一種バイクに定められた30km/hという最高速度規制にあります。
周りのクルマよりも遅い速度で第一通行帯(一番左の車線)の左端を走る(キープレフト)ことが定められている原付一種が3車線以上の大きな交差点で小回り右折をしようとすると、周囲の速いクルマを避けながら右に2回も車線変更をしないといけません。

交通量の多い道路だと接触事故の要因になって危険だということで、車線変更をせずにそのまま直進し、交差点内の安全な待機スペースで進行方向を変えてくださいということなんです。
原付一種バイクと周囲のクルマの速度差から来る交通事故を防止することが目的というわけです。

二段階右折禁止の交差点もある

なお、交差点がT字路になっていたり、左方の交差道路が極端に狭かったり坂になっているなど原付バイクが安全に方向を変えられない、留まっておけないような交差点では、二段階右折禁止の標識によりクルマと同じように小回り右折ができることもあります。

二段階右折をするのはどんなバイク?

バイクの中で二段階右折をするのは50ccの原付一種クラスのバイクだけです。原付一種であれば電動バイクであっても行います。
逆に、原付バイク以外で行うと違反となります。

主に50ccクラスの原付バイクが対象

二段階右折が必要なのは50cc以下または定格出力0.6kW以下の第一種原動機付自転車が対象です。
ガソリンエンジンのバイクでも電動バイクでも上記に当てはまるものは原付一種バイクとして、3車線以上の交差点では二段階右折が必要になります。

なお、自転車やリヤカーといった原動機を持たない軽車両も二段階右折の対象車種となっています。

必要ない車種で二段階右折をすると違反

51cc以上(原付二種以上)のバイクは二段階右折が不要ですが、右折待ちの渋滞が動かないからこっそり二段階右折をしようなんてすると道路交通法第34条5項の交差点右左折方法違反に該当し取締りを受けてしまうので決してやらないようにしましょう。

二段階右折をするのはどんな時?


50ccの原付一種バイクが二段階右折をしなければいけないのは片側三車線以上の交差点です。
そのほか、標識のある交差点や警察官が交通整理をしている場合はそれに従います。

①右折レーンを含み車両通行帯が片側三車線以上の交差点
②「原動機付自転車の右折方法(二段階右折)」の標識のある交差点
③警察官が手信号で交通整理をしている場合

二段階右折の条件を満たさない片側二車線以下の交差点や、例外として二段階右折禁止の標識が出ている場合は小回り右折を行います。

二段階右折のやり方

二段階右折の方法を説明します。また、実際に二段階右折をしている動画もあるのでぜひ見てみてください。動画からでも注意点が見えてきますよ。

①左車線(第一通行帯)の左端に寄り、交差点の30m手前で右ウインカーを出す
②青信号に従って交差点の側端(輪郭)に沿って徐行で進入
※第一通行帯が左折専用レーンでも直進する
※赤信号でも直進の矢印信号が出ていれば交差点内に進入可能、
ただし赤信号に左折の矢印信号の場合は交差点内への進入不可
③待機スペース(左方道路の停止線の少し前)でバイクの向きを右に変えてウインカーを消して待機
④正面の信号機が青になったら進む

二段階右折をしている時の注意点

第一通行帯は、駐車車両が停まっていたり、バスや自転車が走っていたり、交差点手前では左折車による車列ができ、さらには、その中にも直進車が混ざっていたりとかなり複雑な状況となります。

急ぐあまりに左端をすり抜けしたり、早く交差点内に入ろうと無理な追越しや追抜きをしたりといった行動は交通事故の原因となります。

また、前にいる左折車両が左折を追えて、いよいよ交差点内で向きを変えようとしたら後ろから来ていた直進車にひっかけられて転倒といったケースもあります。

さらには、交差点の手前30mに来たからと右ウインカーを出したら、後続ドライバーが二段階右折の意味を知らずにけげんに思い、後ろから追越しをかけてくることもあります。

珍しいケースとしては、交差点内の待機スペースに進入しようとしたら、左方道路をすり抜けしてきて停止線の前に出ようとしていたバイクとバイク同士で衝突したという事例もあります。交差点内でも油断せず周囲をよく確認して行いましょう。

二段階右折の罰則

二段階右折すべき交差点でしないと交通違反となってしまいます。逆に、してはいけない交差点で二段階右折をした場合も違反です。
その場合は信号無視になる恐れもあります。

二段階右折を無視すると信号無視扱いになる?

二段階右折が必要な交差点で小回り右折を行うと、交差点右左折方法違反となり違反点数1点と反則金3,000円が科せられます。

また、二段階右折が不要な交差点で二段階右折をした場合も同様に、違反点数1点と反則金3,000円が科せられます。

なお、この場合は右折先の信号が赤信号となっているため、同時に2つの交通違反をしていることになります。その場合は最も重い罰則が適用されるため、信号無視として取り締まられ、違反点数2点と反則金6,000円が科せられる可能性もあります。

違反点数と反則金

道路交通法での違反区分 違反点数 反則金(原付一種の場合)
交差点右左折方法違反 1点 3,000円
信号無視違反(赤色等) 2点 6,000円

二段階右折をしっかりするには「車間距離」が重要

原付一種バイクは第一通行帯(一番左の車線)の左端をキープレフトで走ることが指定されています。
しかし、この状態で走っていると、近くの大型トラックやバスの影になって前方が見えにくいこともありますから、前車との車間距離はなるべく長めに取るようにしましょう。
そうすれば、二段階右折に関する標識も身落としにくいですし、右前方に右折レーンが現れた時も早めに気づくことができます。

なお、二段階右折にはリスクも伴いますし、何より面倒でわずらわしいと感じる人も多いでしょう。
そうした方には原付二種バイクへの乗り換えもお勧めです。クルマの免許を持っている方なら週末の2日間で原付二種バイク(スクーター)に乗るのに必要なAT小型限定免許を取得することができます。

そうすれば、二段階右折も30km/h制限もなく、2人乗りもできるようになります。ぜひ原付二種バイクへの乗り換えも検討してみてください。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。