「形ある物はいつか壊れる」というようにバイクにも寿命はあります。
ただし生き物と違って機械ですから寿命の迎え方が違います。「エンジンがかからない=寿命」ではありません。
エンジンがかからないのには機械としての理由がちゃんとあり、修理できれば動くことがほとんどです。
ガス欠やキルスイッチが原因で整備の必要もなくエンジンがかかるケースもあります。
不調だからと言ってすぐに売ったり廃車にするのではなく、まずはバイク販売店などに相談してみましょう。

バイクの寿命とは


「バイクが寿命を迎えた」とはどういうことを意味するのでしょうか。様々な不調や故障、トラブルなどを原因として判断することになります。

バイクの寿命を大きく左右するエンジン

バイクの寿命を判断するのに最も大きな要素となるのがエンジンです。
一般的には走行距離を指標とすることが多く、2ストロークエンジンなら5万km、4ストロークエンジンなら10万kmなどと言われることがあります。
またエンジンに関しては次のように言われることが一般的です。

4ストロークより2ストロークのほうが寿命が短い


2ストロークエンジンはシリンダー内でエンジンオイルを燃やすためカーボンやスラッジなどによりエンジン内部が汚れやすく各部のメンテナンス間隔が短めになります。

多気筒よりも単気筒のほうが寿命が短い

単気筒エンジンのほうが発進・巡行時の回転数が高くなり振動も大きくなる傾向にあります。
空冷エンジンの場合はオイルも減りやすく、水冷エンジン以上にまめな管理が必要です。

大排気量より小排気量のほうが寿命が短い


排気量が大きいほうが走行時の回転数を低く抑えられ、エンジン各部への負担も少なくなります。
小排気量だと高回転まで使うことが多くエンジン内部の負担が大きくなる傾向にあります。

とはいえ、これらもひとつの目安にすぎません。
2ストロークエンジンでもまめに分解清掃をする、単気筒・小排気量エンジンでもオイルなどの消耗品を早めに交換していれば総走行距離が10万kmや20万kmに達することも夢ではありません。

「バイクの寿命」と判断するのはどんな時?

「もう寿命だな…」と自分自身を納得させた時がそのバイクの寿命と言えるでしょう。そう判断する時とはどんなときでしょうか。

修理費用が高額となる場合


バイクの故障や不具合を修理しようとしたら、エンジンのオーバーホール(シリンダーやクランクケース内部の分解清掃)といった“重整備”が必要となり高額な修理費用がかかるといった場合です。
一例を挙げると、「交換部品代と工賃を合わせて10万円以上かかるようなら新しいバイクの乗り換え費用にまわしたほうがよい」といったような判断です。

バイクの主要部品が損傷してしまった場合


転倒や事故によりバイクの基幹部品がダメージを受けてしまった場合です。
特にフレームナンバー(車台番号)が刻印されているメインフレームが折れたり曲がったりした場合は仮に修正・交換したとしても“修復歴あり”や“事故車”などの経歴が残ってしまうため、売買価格にも影響がでる可能性があります。

バイクが故障し、修理ができない状態

古い年式の絶版車や輸入車などでよくあるのが、故障個所の修理に必要な部品が手に入らずに直せないというものです。
なお、メーカーや車種によって異なりますが、部品の保持期間は生産終了後約7年間と言われています。
ただし部品によっては数十年後でも注文することができ、すべての部品がある日を境に一斉になくなるわけではありません。

転倒や事故などで破損しやすいカウルやガソリンタンク、デカール類といった外装パーツは保管在庫が早めになくなることで知られています。
希少なモデルのオーナーは純正部品やパーツメーカーが製作するアフターパーツを複数ストックしておくなどして修理不能で乗れなくなることを防いでいます。
近年では3Dプリンターを活用して樹脂パーツなどを自作する方も増えています。

不調や故障が相次ぐ場合

製造年から長い年数が経過したり走行距離が増えていくと車体の各部に消耗や劣化の影響が表れ、様々な不調が感じられるようになります。
加速が悪くなるといった症状やエンジンがたまにかからないといったトラブルも徐々に増えるようになり、修理に出す期間が長くなったり修理費用が高額になることもあります。
直しても他の箇所が次々に故障するなどして乗れない期間も増えたとき、これをバイクの寿命と判断して新しいバイクに乗り換える場合もあります。

バイクの寿命を延ばすコツは?


バイクの寿命を延ばすには日常点検や定期点検のほか、適度に乗ること、乗ったら洗車と拭き上げをしっかり行うことが最上です。

日常的なメンテナンスが大切


新車時のような良い状態を維持するためには日常点検と定期点検をしっかり行い、必要ならばメンテナンスすることが重要です。
走行距離が数十万kmという車両でもミッションオイル(4ストロークでいうエンジンオイル)など消耗品の交換をしっかり行っていれば新車のように走らせることができます。

エンジンオイルの定期的な交換が最も重要

前述したようにバイクの寿命という判断を最も大きく左右するのがエンジンです。
4ストロークエンジンであればミッションオイルを定期的に交換することが最も重要です。
オイル交換をした日付・量・オイルの名称やグレード・粘度を記録しておき、メーカーが定めた期間または走行距離ごとにしっかり交換しておけば、それだけでバイクの寿命を延ばすことができます。

もちろんエアフィルター(下写真)や点火プラグなど、エンジン内部の正常な燃焼に必要な「良い混合気、良い圧縮、良い火花」に関わる部品の点検・交換も必要です。
しかし何よりも重視すべきは多くの役割を与えられたエンジンオイルの状態を良好に保つことです。

特に、構造上どうしてもオイルが減りやすい空冷エンジンのバイクは、オイルの量や色に特に気を付けましょう。早めの点検・補充・交換がとても重要です。

関連記事

バイクのオイル交換の目安は?走行距離や頻度、オイルの色で判断しよう!

保管方法に注意する


バイクの寿命を延ばすには保管方法も重要です。
クルマとは違い、屋根のない屋外に雨ざらしで置いておくとあっという間に各部にサビが出たり太陽光の紫外線を浴びて樹脂・ゴム類が色あせて硬化していきます。
これだけでみすぼらしい外観のバイクになってしまい「長く乗ろう」という愛着が失せてしまいます。バイクの寿命の延長に最も重要なものは、愛着なんです。

ですから、屋内保管ができないとしても、バイクカバーを毎日ちゃんとかけて、さらには盗難防止用ロックもしっかりかけましょう。
盗難やいたずらにあってしまうとそれもまた愛着を失う原因になってしまいます。

走り方に注意する

バイクの寿命を延ばそうと考えれば、日々の走り方にも気を使いましょう。
サーキット走行を趣味とするような場合はレッドゾーンまで回転数を上げて走ることが多くなり、エンジンや各部に大きな負担がかかります。
このように使ったバイクと一般道でのツーリングのみで使われたバイクだと各部の消耗や劣化には大きな差が出ることになります。

ただし、レーシングマシン(公道走行不可)がそうであるように、サーキット走行が趣味といった場合にはエンジンオイルのほか、チェーン、スプロケット、タイヤ、サスペンション、油脂類などの点検・調整や交換がツーリングのみのバイクよりも頻繁に行われることが常ですので一概には言えません。

では逆にエンジンの回転数は低ければいいのかと言えば、低~中回転ばかりで走っていると不完全燃焼によりエンジン内部の燃焼室にカーボンやスラッジが堆積してしまいます。
フューエルインジェクション(FI)採用車両ではエンジン内部の汚れを落とすためのデポジットクリーナー(上写真)の定期注入を必須としている場合もあります。

放置しない

あまり乗らないバイクなら悪くならないのかと言えばそれも違います。
長期保管状態にあるような車両でも各部にダメージは蓄積します。
冬期保管の注意点でもありますが、バッテリーを外してトリクル充電状態で保管する、センタースタンドを立ててハンドルは真っすぐに、センタースタンドがない場合はたまにハンドルを逆側に切る、タイヤの空気圧は毎月点検する、月に一度はエンジンを始動する、バイクカバーをかけて雨風やほこりを触れさせないといったことも重要です。

バイクにとっては長期放置となる状態が最も各部に悪影響を与えやすくなります。
特に屋外で雨ざらしになるような環境だとあっという間に各部がダメになります。
複数台バイクを持っている場合はなるべく順番に乗ってあげることが大切です。

乗れば汚れてしまうから乗らないのではなく、乗ったら洗車してしっかり拭き上げ、サビは落として磨いておくということを習慣としましょう。
あまり乗らないバイクほど日々の劣化に目を配る必要がありますよ。

バイクに寿命を感じたら早めに買取・販売店に相談を

「バイクの寿命」と判断するような様々なケース、寿命を延ばすコツについて紹介しました。
車両の不調はエンジンのかかりが悪くなったなど明らかな症状が出ないと気づきにくいものですが、不調を確認したらなるべく早くバイク販売店などに相談するのがよいでしょう。

プロの整備士に見てもらえばその症状の原因がわかるケースがほとんどです。
直すために重整備が必要となり多額の修理費用がかかるのであれば、そこで寿命と判断して新しいバイクへの乗り換えを検討するタイミングかもしれませんね。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。