原付二種以上のバイクなら、基本的には二人乗り(タンデム走行)ができます。
しかし、中にはホンダ「モンキー125」のように1人乗り専用モデルも存在しています。
道路交通法における条件や規定、排気量や二人乗り用の装備など車両側の条件など、二人乗りの可否については意外とややこしく、例外が多く存在するのも事実です。
そうした二人乗りの可否条件、注意点、コツなどについて説明します。

バイクで二人乗り(タンデム)ができる条件は?


二人乗りをするには道路交通法や道路運送車両法で定められた条件に従う必要があります。
同乗者(パッセンジャー)に免許は必要なく子供ともタンデムできますが様々な注意が必要です。

バイクの条件

まず、バイクには二人乗りできるものとできないものがあります。単純に排気量的にOKなら二人乗りができるわけではありませんので、その点について紹介します。

バイクの排気量

バイクは排気量(ガソリンエンジンの場合)またはモーター定格出力(電動の場合)の大きさにより、二人乗りできるものとできないものに分かれます。

車両区分

(道路運送車両法)

排気量 電動(モーター定格出力) 二人乗り

の可否

道路交通法の区分
原付一種 50cc以下 0.6kW以下 × 原付
原付二種 乙 51~90cc 0.6kW超~1.0kW以下 普通二輪
原付二種 甲 91~125cc
軽二輪 126cc~250cc 1.0kW超~20kW以下
小型二輪 251~400cc
400cc超 20kW超 大型二輪

このように、原付一種以外のバイクは“排気量区分としては”二人乗りが可能ですが、排気量以外にも満たすべき条件があります。

バイクの装備

二人乗りができるバイクには、
①タンデムステップ
②タンデムシート(※同乗者シートとも)
③タンデムベルト(またはグラブバー ※タンデムバーとも)

の3つが装備されている必要があります。

二人乗りができるバイクには当然これらの装備が最初からついていますが、ホンダ「CT125・ハンターカブ(下写真)」「クロスカブ110」のように、リヤキャリア部(グラブバーも有り)に座っても法律的には問題ないものの、長時間座るためには別売りのタンデムシートを装着したほうがよいというモデルもあります。

CT125・ハンターカブ
リアキャリア部

装備に不安な場合は、用品販売店やオートバイ販売店のスタッフに確認することをおすすめします。

登録証の表記

登録証に記載されている乗車定員が2名になっていることも条件のひとつです。
一部のオフロードモデルやスーパースポーツモデルには定員1名とされているものがあります。

こうした車体にタンデムステップやタンデムシート、タンデムベルトをつけたとしても、つけただけでは二人乗りをしてはいけません。

その場合は、陸運局(運輸局)などで搭乗者の構造変更申請をして書類上の定員を2名としなければ認められませんので注意してください。
道路運送車両の保安基準 第20条(乗車装置)の基準に適合するステップ・シート・ベルト(またはグラブバー)であれば認められます。

年数の条件

普通二輪免許にしろ大型二輪免許にしろ交付日から1年後に二人乗りができるようになります。
初心運転者期間とは関係ありませんので注意してください。ちょっとややこしいのでケースごとに解説します。

基本:免許取得後経過年数

一般道では、自動二輪免許を免許センターで交付してもらった日から1年以上経過していることが二人乗りができるようになる条件です。
道路交通法第七十一条の四の5に規定があります。※ここで言う1年というのは初心運転者期間を指しているものではないので注意が必要です。

普通二輪から大型二輪と、立て続けに免許を取った場合

普通二輪免許取得後、1年以内に続けて大型二輪免許を取った場合でも、一般道で二人乗りができるようになるのは普通二輪免許交付日から1年後です。
ただし、初心運転者期間は大型二輪免許交付後から1年間発生します。※初心運転者期間=二人乗りの可否ではないので注意してください。

普通二輪取得後1年以上経ってから大型二輪免許が交付された場合

普通二輪免許取得後に1年以上経過してから大型二輪免許が交付された場合は、すでに二人乗りの条件は満たしているので、大型二輪免許の交付日から大型バイクで二人乗りが可能です。

ただし、初心運転者期間は大型二輪免許交付日から新たに1年間発生します。期間中、違反により合計点数が3点以上になると初心運転者講習を受けることになりますので注意してください。

高速道路での二人乗り

運転者の年齢が20歳以上で、普通二輪または大型二輪免許の取得後、3年間以上経過していることが条件です。

なお、東京都内の都心環状線(C1)と、そこから放射状に延びる首都高速道路各線の一部ではバイクの二人乗りが通行禁止となっている区間があります(下図)。
標識も小さく走行中はわかりづらいため、事前に走行ルートをチェックするなど注意が必要です。

バイクの二人乗り(タンデム)に関する罰則


二人乗りに関する交通違反と罰則は排気量別です。基本的なルールとなりますので覚えておきましょう。

道路交通法における二人乗りに関する交通違反は排気量別に以下の2つとなります。なお、違反や罰則が適用されるのは運転者のみで、同乗者に対しての罰則はありません。

定員外乗車違反

違反行為の種別 違反点数 反則金
定員外乗車違反(50cc以下) 1点 5,000円

原付一種のバイクで二人乗りをした場合には定員外乗車違反となります。

大型自動二輪車等乗車方法違反

違反行為の種別 違反点数 反則金
大型自動二輪車等乗車方法違反 2点 12,000円

下記に該当する場合は、大型自動二輪車等乗車方法違反となります。
①51cc以上の乗車定員1名のバイクに二人乗りをした場合
②免許取得後1年未満(高速道路なら3年未満)で二人乗りをした場合
③20歳未満で高速道路で二人乗りをした場合
④二人乗り禁止区間で二人乗りをした場合

二人乗りする際の注意点


二人乗りにはさまざまな危険も伴います。
そのため、乗降時の2人の合図を決めたり安全装具を用意するなど事前の準備をしっかり行いましょう。

二人乗りをする際には、法律はもちろんのこと、あらかじめ同乗者にタンデム走行時の状況や特徴を説明して理解してもらう、乗り降りの時の合図を決める、安全な服装を心がけてもらうといったことで協力をお願いしておきましょう。

具体例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

「大型自動二輪車及び普通自動二輪車で二人乗り通行禁止」の標識に注意


この標識を見つけたら、その先の道路では二人乗りが禁止であることを示しています。
前述した首都高速道路の料金所やスロープの前、通行禁止区間に至る前に次の出口で降りられるくらいの位置に掲示されています。

同乗者への説明

バイクに乗ったことがない方、乗り慣れていない方やお子さんと二人乗りをする場合はあらかじめ走行時の状況や特徴、同乗者(同乗者)がどう対応すべきかを説明しておきましょう。

同乗者が二人乗りに慣れていないうちは、なるべくライダー(運転者)の背中と腰に密着しておくと安心です。

また、走行中のバイクには危険な部位もあります。

「熱を持ったマフラーに接触しないよう注意する」
「チェーンやタイヤに巻き込まれないように足をブラブラさせない」

といった点もしっかり教えてあげましょう。

同乗者の協力

走行中はライダーの挙動に合わせて体を動かしてもらうなど同乗者の協力が必要です。
よくあるのは、左カーブで旋回している時にバイクが左に傾くのが怖くて、同乗者が体を起こしてしまうことです。
この状態だとバイクは曲がりにくくなり危険です。

「旋回中はライダーと同じ方向に少し体を倒してもらうこと」
「しっかりグラブバーやタンデムベルトを握ってもらうこと」
「ニーグリップでライダーの腰を軽く挟むこと」
「ブレーキ時にはステップ上の足の裏で踏ん張ってもらうこと」

などを伝えておきましょう。

同乗者の服装

万が一の転倒などに備えて、同乗者の服装や装具にも気を使いましょう。
肌の露出は抑え、胸部プロテクター、グローブ、長袖長ズボン、くるぶしが隠れる靴など、なるべくライダーと同じように安全性の高い服装を着てもらえれば安心です。

街中では、かかとの高い靴(ハイヒールなど)で後席に乗っている女性も見かけますが、乗降時の時点から相当危険なので、タウンライドの場合は特に注意するようにしてください。

二人乗りをする時は、同乗者もヘルメットをかぶる必要があります。バイクの排気量や走行状況・シーンを考えて、安全性と快適性に優れたヘルメットを選ぶとよいでしょう。

大型バイクに乗っているのに同乗者のヘルメットが「125cc以下専用」なんてことにならないようにヘルメット選びには注意してください。

最も転倒リスクが高いのは乗り降りをする際

二人乗りで気を付けることのひとつに同乗者の乗り降りがあります。
この際にバランスを崩して転倒しないように以下の対策を行うとよいでしょう。

同乗者乗降時の手順

乗る時は運転者から、降りる時は同乗者からが基本です。

①必ず運転者が先にまたがっておく
※小さなお子さんを乗せる時には、先にタンデムシートに座らせます。
②サイドスタンドはかけたままにしておく
③乗り降りの前には、同乗者から運転者に声をかける
 ※同乗者が運転者の肩を叩くなど、乗り降り時の合図を決めておくのも有効です。
④発進前にはフロントブレーキをかけた状態でサイドスタンドを払う
⑤発進・停止時には運転者から同乗者に必ず声掛け、または合図を出す

タンデム時は早めに余裕のあるブレーキングを心がける

二人乗りの時には、同乗者の分だけ重くなるためバイクの動きに違いが出ます。
特に減速時には制動距離が伸びて止まりにくくなりますから、車間距離をいつも以上に十分に取り、早めに余裕のあるブレーキをかけましょう。

可能であればインカムで通話可能な状態に

二人乗りの時には、運転者と同乗者が密着しているように見えますが、お互いの声は意外なほどに聞き取りづらくなります。可能ならば、互いのヘルメットにインカムを装着して通話可能な状態にし、走行中でも円滑なコミュニケーションが取れる状態にしておくことが大切です。

タンデム時は気を使うことが多いため、お互いの疲労も考えて、いつもよりこまめに休憩を取りましょう。

特に高速道路走行時には「疲れた」「眠い」「暑い・寒い」「お腹がすいた」「トイレに行きたい」などのコミュニケーションがうまく取れずに、サービスエリア・パーキングエリアをひとつ飛ばしてしまうだけでも、同乗者にとってはかなりつらい状況になってしまいます。

高速道路で二人乗りする時には、インカムはぜひとも欲しい装備ですね。

子供と二人乗り(タンデム)する際の注意点


二人乗りをする時の同乗者に年齢制限はありませんが、一般的には小学校高学年以上が、タンデム時にもそれほど不安のない年齢と言われています。
なお、子供を乗せる場合の注意点には以下のものがあります。

タンデムステップに足が届いているか

おんぶや抱っこで乗せることはできません。タンデムステップに足がつかない場合は、ステップの高さを上げるためのパーツなどもありますので活用しましょう。

居眠り対策はOKか

小さな子供は高確率で居眠りをします。万が一の落下を防ぐためにもツーリングベルトやタンデムベルト(下写真)などを利用しましょう。
子どもに「つかまっていてね」「寝ちゃダメよ」は通用しません。お話ができるインカムやシーシーバーなどの背もたれもあるとよいでしょう。

二人乗り(タンデム)に向いているバイクは?


タンデム走行時はバイクの排気量やサイズが大きい方が基本的にラクです。
運転者と同乗者が腰や背中をずらす余裕があるくらいだと、いわゆる居住性が確保できます。

400㏄以上がオススメ

二人乗りをする場合、排気量とサイズが大きいバイクのほうが運転者も同乗者もラクになります。
同乗者の体重のぶんだけ重量が重くなるため、排気量が小さいといつもよりもアクセルを多く開ける、シフトチェンジをたくさんする、ブレーキも強めにかけるといったことで運転手の身体的、同乗者の精神的に疲れやすくなるのです。

特に、高速道路走行時のひとつの目安、境い目となる排気量が400ccと600ccです。
400ccだと、ゆるやかな上り坂でもギヤを1段下げないと速度が落ちてしまうことが多くなります。
これが600cc以上だと、ギヤを下げなくてもアクセルを少し開けて保つだけで上れるようになります。
エンジン出力特性やギヤ比にもよりますが、ひとつの目安だと考えてください。

400ccと600ccは、車検があること、税金や保険といった維持費に違いはありませんから、タンデムでよく高速道路を走るという方には600cc以上のバイクを選ぶことをオススメします。

また、タンデム走行が長時間に渡る場合は、運転者も同乗者も腰や背中に動ける(ずらせる)余裕がないと、肩や腰が凝ったりとかなり疲れてしまいます。
シートが小さい、2人が座れるスペースが狭いバイクの場合は、なるべくこまめに休憩し、バイクから降りる時間を多めに取りましょう。

タンデムシートが広く乗りやすいバイクがオススメ

タンデム走行時の同乗者の快適性は重要です。特にタンデムシートの幅や厚さ、柔らかさは快適性に直結します。
幅で言うならスクーター・ツアラー・ネイキッドなどの比較的シート幅が広い車種がオススメです。

スーパースポーツや一部のロードスポーツなどタンデムシートがとても小さい車種だと長時間乗車時に同乗者が辛くなってしまう恐れがあります。

なお、オフロード(デュアルパーパス)モデルの場合は、シート幅は狭いものの、座面がロングかつフラットな場合が多く、同乗者との密着性・一体感も保ちやすいため、運転者・同乗者ともに疲れにくい特性があって例外と言えるでしょう。

リヤサスペンションのプリロード調整でより快適に


大人同士で二人乗りをするとバイクのリヤ側が重くなります。
バイクによっては、サスペンションのストロークが確保できなくなってギャップを越える時にリヤタイヤがリヤフェンダーの裏側に当たったり、旋回時にオーバーステア気味になって曲がりにくくなったり(カーブの外側に膨らむような感じ)、同乗者の乗り心地が悪くなったりすることがあります。

リヤサスペンションのプリロード調整ができるバイクは、2人乗り時にプリロードを強める(スプリングを縮めてサスペンションの初期荷重を増やす)ことで上記の症状を改善することができます。

なお、一人で乗る場合は、乗り心地が硬く足つきも少し悪くなってしまうので、必ずプリロードを戻しておきましょう。

バイクの二人乗りはとにかく「慣れる」ことが重要

道路交通法などを含めた二人乗りの条件、タンデム時の注意点やコツについて説明しました。
いろいろと書き連ねましたが、二人乗りで重要なことは運転者も同乗者もタンデム走行に慣れることです。
一般道、渋滞、ワインディング、高速道路、ガソリンスタンドなど、とにかく場数を踏んで慣れてしまいましょう。

最後にひとつ、重ねての注意喚起になりますが、大人も子供も不思議なくらいにタンデムシートで寝てしまうことが多いので油断しないでください(同乗者の「大丈夫…」という声を過信しない)。

もし、同乗者がどうしても起きていられない、タンデムすることが辛いという場合には、無理をせずに休憩や宿泊といった選択をしてください。
安全運転は二人乗りでの最優先事項です。

では皆さん、バイクならではの二人乗りの世界をぜひ楽しんでください。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。