バイク選びって意外とハードルが高いですよね。
乗りたいバイクは決まっているのに周りの先輩ライダーがあれこれ言ってきたり。
でも、彼らも自分の経験に基づいてアドバイスしてくれているんです。
買ったばかりのバイクを立ちゴケさせたなんて失敗談もあるかもしれませんね。

今回は、なるべくスムーズにバイクライフを始めるために、初めてのバイク選びで知っておきたいこと、抑えておきたいポイントについてご紹介します。

関連記事

初めてでも乗りやすい!初心者におすすめの人気バイクを紹介!

始めてのバイクはどうやって選ぶ?

バイクの免許は一般ユーザーにとってはクルマ以上に複雑です。
その中で乗れるバイクをどう選んだらよいのか。
乗りやすさや快適性に影響するエンジンタイプなども踏まえて説明します。

バイクの免許

バイクは所持している運転免許の種類によって乗れる排気量が変わります。
自分が乗りたいバイクの排気量に合わせて免許を取るか、または自分の免許で乗れる排気量からバイクを選ぶ必要があります。

バイクの免許はAT限定免許も含めると7種類あり、上位免許を持っていれば下位免許のバイクにも乗れる仕組みですが、AT限定免許の場合は原付バイクを除き下位免許でもAT車にしか乗れません。

なお、高速道路を走れるのは126cc以上のバイクなので、普通二輪免許以上の免許が必要です。
また、二人乗り(タンデム)をするためには小型免許以上の免許が必要です(※免許取得1年後から二人乗りが可能)。

下表では、下に向かうほど上位免許となります。
小型免許は普通二輪免許の中に設定された排気量限定区分で、小型限定普通二輪免許とも呼ばれます。

バイクの免許 7つの種類と運転可能な排気量 ※AT限定免許ではAT車のみ運転可

             総排気量

免許の種類

50cc 50cc超

125cc以下

125cc超

400cc以下

400cc超
①原付免許      
②普通二輪免許 ③AT限定 小型免許    
④小型免許  
⑤AT限定 普通二輪免許  
⑥大型二輪免許 ⑦AT限定 大型二輪免許

バイクのAT限定免許について

AT(シフト操作のないオートマチックトランスミッション搭載車)限定免許の場合は、下位免許でもAT車にしか乗れないので注意が必要です。
MT(シフト操作のあるマニュアルトランスミッション搭載車)車に乗りたい場合は、AT限定免許を解除しMT免許を取得する必要があります。
教習所で教実技講習(学科がある場合も)を受け、卒業検定に合格した後、試験場で免許の更新手続きを行います。

ホンダ CRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES Dual Clutch Transmission

なお、ホンダは、マニュアル車ながらエンストの心配のないデュアルクラッチトランスミッション(DCT)車もラインナップしています。
DCT車ではギヤチェンジを楽しめますが、クラッチレバーもシフトペダルもありません。シフトアップ・ダウンは手元のボタンで行います。
上写真のCRF1100L Africa Twin Adventure Sports ES Dual Clutch TransmissionにもAT限定大型二輪免許で乗ることができます。

また、YCC-S(ヤマハ電子制御シフト)を装備したヤマハの大型ツアラーFJR1300AS(下写真)も同様で、クラッチレバーはなくシフトペダルとレバー操作でシフトチェンジを行う機構でAT限定大型二輪免許で乗れます。

ヤマハ FJR1300AS

電動バイクの場合でも、スクータータイプだけでなく、シフトチェンジが設定されたスポーツタイプでもクラッチレバー操作のないものならばAT限定免許で乗ることができます。
今後登場するハイブリッドバイクも含め、AT限定免許でもシフトチェンジが楽しめるバイクは今後ますます増えていくでしょう。

原付バイクに乗れる免許

ホンダ タクト

原付バイク(50ccクラス)だけは、クルマの普通自動車免許などバイク以外の運転免許でも運転できます。
しかし、小型特殊免許(農耕トラクターなどの免許)については、この免許だけでは原付バイクを運転できません。

251cc超のバイクには車検がある

251cc以上のバイクには車検があります。新車購入時は3年後で、以降2年ごとに車検を受けて合格しなければ乗り続けられません。
カスタムをする場合も、パーツによっては「車検対応品」を装着する必要があるので注意しましょう。

特に、マフラーなどはノーブランドの安価なものをネットで買ってしまうと車検に合格しないことがあるので、必ず政府認証規格であるJMCA認定マフラーを装着してください。

4ストロークのバイクを選んだ方が良い

ホンダCBR250RRの水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 249ccエンジン

バイクのエンジンにも様々な種類や形状がありますが、エンジンを内部構造で大きく分けると、2ストロークと4ストロークの2つがあります。
吸入・圧縮・爆発・排気というエンジンの作動サイクルのことですが、現在は一般向けのバイクの大半は4ストロークエンジンです。

2ストロークエンジンは燃焼工程が少ないぶんダイレクトでパワフルな加速などに魅力がありますが、扱いが独特で整備・維持にもノウハウが必要です。
2ストロークエンジンを採用したバイクは2000年代以前の古いバイクかレースなどで使われる競技専用車です。
街乗りに向いていない特性のエンジンもありますし、基幹部品も手に入りづらく修理するのに苦労することもあります。
特に理由がなければ、4ストロークエンジンを搭載したバイクを選ぶことをお勧めします。

インジェクションモデルのバイクを選んだ方が良い

スズキKATANAに採用されている10ホールフューエルインジェクターCG図(緑色部)

ガソリンを燃料タンクからエンジンに送る際の供給方式には、アナログで機械式のキャブレターとコンピュータによる電子制御式のフューエルインジェクション(FI)の2種類があります。
どちらにもメリット・デメリットがあるのですが、排ガス規制への対応の過程などで、より緻密に燃料噴射を制御できるFIに切り替わっていきました。

キャブレターは機械式なので外気温や標高(酸素濃度)などに影響を受け、冬場やエンジンが冷えている時にはチョークレバーを引いて燃料を濃くしてやらないとエンジンが始動できないこともあります。
対してFIの場合は電子制御と内蔵したオートチョーク機構によって、冬場で安定始動させられます。
近年のバイクの大半はFI搭載車ですので、特に理由がなければインジェクションモデルがお勧めです。

自分に合った車種を選ぶ

バイクは人車一体となって運転する乗り物です。クルマに比べてバイクの運転が難しいとされるのは、手足だけでなく体全体を使って操作する必要があるからです。
また、長時間運転時の疲労もバイクのほうが大きいため、停車時に安定して足をつくことができるか、取り回しが容易にできるかといったこともバイク選びの重要なポイントになります。

ですから、初めてのバイクは排気量や大きさ、重さが自分の心身にとって無理のないものを選びたいものです。
小さめの排気量、足のつくバイク、取り回しできるバイクから始めてステップアップしていくことが一番の理想です。

バイクの乗り換えには多額の費用が掛かりますから「好きなバイク」「乗りたいバイク」に乗ることは否定できません。
もし、欲しいバイクに少しでも不安を感じるなら、購入前にレンタルして、基本性能はもちろんのこと、運転や取り回しに問題がないか確認してみるのも良いでしょう。

初めてのバイクは新車と中古どちらが良い?

新車と中古車、初めてのバイクの場合どちらがいいのか迷いますよね。
メリットもデメリットもありますから、それぞれについて説明します。

新車を購入するメリット

所有欲を満たしてくれる

新車には「自分が最初のオーナーなんだ」という満足感や安心感があります。
まさに、自分のバイクという所有欲を満たしてくれます。これは新車でしか味わえない感覚です。

中古車と比較してトラブルのリスクが少ない

中古車の場合は経年によるパーツの劣化や転倒などによる傷がつきものです。
前オーナーが装着したパーツが原因で故障が起きるといったこともあります。
新車の場合はそうしたトラブルのリスクが少なく安心感があります。

新車を購入するデメリット

中古車と比較して価格が高い

車種にもよりますが、中古車と比べると新車は当然高くなります。
ただし、前年以前のモデルの在庫なら少し安く購入できる場合もありますので、現行モデルでなくてもよい場合は販売店に在庫確認をお願いするのも手です。

慣らし運転をする必要がある

車種にもよりますが、新車購入後は1000kmほどの慣らし運転が必要となる場合もあります。
エンジンの回転数を抑えるほか、タイヤも慣らしが終わる(ひげやワックスが落ちる)までは急な加減速や大きくバイクを寝かせるといった走り方は控えます。

中古車を購入するメリット

新車と比較して車両本体価格が安い事が多い

単純に年式が古いということだけでなく、走行距離や車体の傷の程度といった理由により、新車より車両本体価格が安いことが多いのも中古車のメリットです。
中古車にすることでバイク購入時の初期費用を抑え、浮いたぶんのお金をヘルメットやウェア、プロテクター、ガソリン代や任意保険代などに回してトータルでバイクライフのスタートを充実させることもできます。

新車にはないラインナップを選べる

生産終了(カタログ落ち)したモデルも選べるため、車種やカラーリングの選択肢が広がります。
特に近年ラインナップが減っているオフロード(デュアルパーパス)モデルやアメリカン(クルーザー)モデル、ツアラーモデルには魅力的な中古車が多いと言えるでしょう。

慣らし運転の必要が無い

中古車を購入した場合、多くは1000km以上を走行しているものですから、新車購入時に行う慣らし運転が必要ありません。
購入直後から高速道路を使ったロングツーリングも楽しめますよ。

カスタム済の車両

中古車は前オーナーがカスタムしていることも多く、購入時のカスタム費用を抑えることができる場合があります。特にありがたいのは、高速道路の料金所で止まる必要のないETC車載器(下写真)やスマホなどの充電に仕えるUSB電源ソケットを装着した車両です。

関連記事

カスタムするならこれがオススメ!バイクライフを豊かにする便利グッズ10選!

立ちゴケした際の心理的負担が少ない

中古車には傷や修復跡があることは珍しいことではありません。
車両購入時は傷があることに悩んでしまうこともありますが、まだバイクに慣れていないライダーならば、立ちゴケなどのリスクは新車・中古車を問わずに決して低いとは言えないものです。
予め傷のある中古車ならばバイクを倒してしまってもメンタルダメージが少なくて済むというのも正直なところです。

中古車を購入するデメリット

新車と比較して車両の状態は落ち、個体差がある

中古車の場合、同じ車種でも状態は様々で、大きな個体差があることも珍しくありません。
年式が古いモデルは保管の仕方・場所にも影響を受けるので、走行距離や外観だけで状態を判断することは難しいと言えるでしょう。

前オーナーがどのような乗り方をしていたのかが分からない

特にスーパースポーツモデルやオフロードモデルに顕著なのが、前オーナーの乗り方です。
場合によってはレースに使っていたなんて個体もありますから、なるべく前オーナーの整備履歴などを教えてもらえるような販売店で購入することをお勧めします。

バイク初心者におすすめのバイクは?


日本の免許制度や二輪免許種別の新規取得者数(普通二輪が20万人台で50%超 ※2021年)も鑑みると、一般的に初めての方にお勧めの排気量は250ccクラスか400ccクラスということになります。

軽二輪区分のうちの150~250cc、小型二輪区分のうちの350~400ccといった排気量のバイクが該当します。

150ccであればタンデムで高速道路を走ることもできますし、300cc以上なら250ccに少しパワー不足を感じているユーザーにも最適な排気量となります。自分の使い方、バイクライフに合った排気量を選びましょう。

なお、バイクの種類としてはオーソドックスなネイキッドタイプや足つきの良いアメリカン(クルーザー)タイプ(下写真)は、取り回しがしやすく足つきも良いため、初心者向きのバイクと言えるでしょう。

関連記事

250ccネイキッドバイクのおすすめ人気車種を紹介!

250ccアメリカンバイクのおすすめ人気車種を紹介!

バイクの種類はどのようなものがある?ジャンルごとの特徴を解説!

シート高・幅などが影響する足つき性や乗車姿勢に影響するハンドル幅・位置などの確認は、販売店で実車(展示車両)にまたがってみることで確認できます。
なお、展示車両にまたがる場合は、スタッフにひと声かけることをお忘れなく。

バイクの初心者にはレッスン参加もお勧め

HondaGO BIKE LESSONの様子

新車と中古車のメリット・デメリット、最適な免許と排気量など初心者にお勧めのバイク選びのポイントについて紹介しました。

究極的には「乗りたいバイクに乗ってほしい」というのが正直なところですが、文中にもあったように、バイクは体で乗るものです。
「慣れてしまえば」「走り出してしまえば」なんてアドバイスもよくありますが、立ちゴケひとつでバイクが嫌になってしまったり、そのままバイクを降りてしまう方もいらっしゃいます。

なので、初心者の方にお勧めしたいのが、メーカーや販売会社、販売店、二輪業界団体、各地の警察署などが実施しているバイクレッスンや安全運転講習会に参加することです。
免許を取ってバイクも買ったけど公道走行に不安がある、バイクの取り回しがうまくできない、立ちゴケしてしまった… などバイクの悩み事についてのアドバイスを受けることもできますよ。

ちゃんと教わってちゃんと練習すれば、誰でも上手になります。
YouTubeや本から学ぶのもよいですが、ぜひ対面講習の素晴らしさを体感してみてください。
きっと、あなたのバイクライフに自信と安心をもたらしてくれますよ。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。