バイクのヘルメットの種類は?選び方と合わせて解説!
公開日:2023.10.12 / 最終更新日:2023.10.12
排気量に関わらず、バイクで公道を走行する際には必ず装着しなければならないのがヘルメットです。
道路交通法第71条の4の第1~2項で定められており、第8項にはバイクのヘルメットの基準は内閣府令で定めることも記載されています。
ヘルメットは、万が一の転倒や事故の際に頭部を守ってくれる最も重要な装備品なので安全性能を重視すべきですが、様々な種類があって迷ってしまいますよね。
ここでは、種類ごとの用途や特徴、選ぶ際のポイントや注意点について紹介します。
バイクのヘルメットにも様々な形状やデザインのものがあります。
安全性や機能性も考えながら、自分のお気に入りのヘルメットを選ぶのがよいでしょう。
フルフェイスヘルメットの特徴
頭部全体をすっぽりと包みこむのがフルフェイスタイプです。
国内外のロードレース運営者によりフルフェイスヘルメットの着用が規約に定められているように、バイク用ヘルメットの中では最も安全性の高い種類になります。
機能面でも他の種類より多機能であることが多く、防風・防寒・防雨性能のほか、走行風の吸入やヘルメット内部からの排気にも優れる製品が多いため、高速道路走行時や長距離走行時の快適性も高められています。
フルフェイスヘルメットのメリット
安全性が高い
頭部全体が保護されているため、転倒・事故時の安全性が高く、走行中の飛び石による衝撃からも守ってくれます。
快適性が高い
フルフェイスは比較的多機能であることが多く、ベンチレーション(吸気・排気)機能により内部が快適に保てたり、曇り止め機構を持つピンロックシールド対応のシールドが装着されていたり、高速走行時の風切り音が少ないなど快適性が高められています。
メンテナンス性が高い
内装が外せて洗濯できたり、シールドベースなどの交換パーツが用意されていることが多く、メンテナンス性に優れています。
フルフェイスヘルメットのデメリット
すっぽりと被る必要があるため視野を狭く感じたり、圧迫感を感じる人もいるようです。
メガネをしている場合などは着脱がおっくうに感じたりすることもあるでしょう。
また、ヘルメットの中では比較的重く、価格も高めになります。
ジェットヘルメットの特徴
ジェットタイプは、あご(チン)の部分がないヘルメットで、その形状からオープンフェイスヘルメットとも呼ばれることがあります。
上下に開閉できる大きなシールドが装備されたものと、シールドがないクラシックタイプなどがあります。
シールドのないクラシックタイプでも、シールドやバイザーなどを後付けするためのホック(スナップボタン)を装備しているものが多いので安心です。
ジェットヘルメットのメリット
視界が広く開放感がある
視界を狭める要因にもなるあご部がないため、前方下部の視界がとてもよく開放感があります。
ヘルメットを下に向けなくても視線を動かすだけでメーターを確認することもでき、ハンドルにマウントしたスマホなども見やすくなります。
着脱がしやすい
あご部がなく、内装の底部を広げやすいため、スムーズに着脱できます。ヘルメットを脱ぐことがおっくうに感じにくくなり、精神的にラクになります。
首や肩が疲れにくい
フルフェイスやシステムタイプなどに比べて軽量・コンパクトなので、高速走行や長時間走行をした後でも首や肩に疲れがたまりにくいです。
ジェットヘルメットのデメリット
シールドの下部から風を巻き込むため、高速走行時に風切り音が大きくなったり、あごの辺りが雨に濡れることもあります。飛び石や虫などが顔にあたるリスクも増えますし、転倒時にはあご部をけがする可能性もあります。
なお、シールドがないモデルは風や雨から目や顔を守るために、シールドを装着するかライディング用のアイグラスをかけると安全性が高まります。
システムヘルメットの特徴
フルフェイスタイプとジェットタイプのイイとこ取りなのがシステムヘルメットです。
あご部が上下に可動するのが特徴で、あご部を下げてロックさせている時にはフルフェイスの安全性と安心感が得られ、ロックを解除してあご部を上方にはねあげている時にはジェットタイプの解放感が得られます。
システムヘルメットのメリット
かぶったままで飲食できる
システムヘルメットの大きなメリットがあご部をはねあげている時に飲食や喫煙ができることです。
真夏の暑い日にヘルメットを脱がなくても水分補給や顔の汗を拭いたりできるのは助かります。ちょっとした休憩時にいろいろと便利です。
メガネの着脱がしやすい
あご部をはねあげている状態でラクにかぶり、メガネをしてからあご部を下ろすという所作がとても便利です。
システムヘルメットのデメリット
部品点数が多いので、フルフェイスよりも重量が重くなるものが多く、長時間かぶっていると首の負担を感じることもあります。
構造上、フルフェイスに比べると強度が下がる傾向にあり、乱暴な扱いをすると細かなパーツが壊れやすいので注意が必要です。
オフロードヘルメットの特徴
前頭部にバイザーと呼ばれるひさしのようなパーツがついているのが特徴です。
バイザーは前走車からの砂、石、泥や木の枝などから顔を守るために装備されています。
純粋なオフロードヘルメットにはシールドがなく、目を保護するゴーグルを装着することが前提となっているので、ヘルメット購入時には併せてゴーグルも購入しましょう。
オフロードヘルメットのメリット
軽量で取扱いがラク
オフロードタイプは、ダート(砂利や土、砂)走行やモトクロス・エンデューロレースなどの激しい動きを前提としているため、重量が軽く、脱着もしやすく、取扱いがラクです。
オフロード走行での安全性に特化
飛んでくる石や泥から顔を守るバイザーや、転倒時に顔を地面に強打しないためのとがったあご部(チンガード)などオフロード走行での安全性に特化した作りです。
オフロードヘルメットのデメリット
オフロード走行に特化しているので、街乗りやオンロードツーリングの場面では、チンガードとゴーグルの隙間から風や雨が浸入してきます。冬場は寒風にさらされて顔が痛くなるなんてこともあります。
また、チンガードが前方に張り出しているので、他の種類よりも少し大きくなります。
アドベンチャーヘルメットの特徴
オフロードヘルメットにシールドを装着したようなデザインで、ロングツーリング適性が高められています。
バイザーやシールドが脱着可能なモデルは、フルフェイス(オンロード)とオフロードにスタイルチェンジすることもできます。
オンロードとオフロードの性能を兼ね備えるため、デュアルパーパスヘルメットと呼ばれることもあります。
アドベンチャーヘルメットのメリット
ロングツーリング適性が高い
見た目はオフロードヘルメットのようですが、シールドや各部のベンチレーションを備え、長距離走行時やダート走行時の快適性を増しています。
アドベンチャーカテゴリーのバイクと相性が良い
オンロード走行にもオフロード性能にも対応できるヘルメットなので、アドベンチャーカテゴリーのバイクに最適なヘルメットです。
アドベンチャーヘルメットのデメリット
オンロード、オフロード共に本格的な走行をするのであれば、フルフェイスやオフロードのほうが適しています。
バランス追求・万能型で、あらゆるシーンを想定しているアドベンチャータイプですが、そのぶん専門性の高いヘルメットには性能は及びません。
ハーフヘルメットの特徴
お椀をひっくりかえしたようなデザインで、軽量・コンパクトなヘルメットです。帽体の小ささからもわかるように、強度や安全性ではジェットタイプやフルフェイスタイプには及びません。
「125cc以下用」とされていることも多く、原付バイク向けに設計されていることが多いので、購入時にはよく確認しましょう。
なお、ハーフキャップ、半キャップ、半キャ、半帽などと呼ばれることもあります。
ハーフヘルメットのメリット
軽量で原付のシート下にも収納できる
小さくて軽いので、取扱いがラクです。原付スクーターのシート下トランクにも余裕を持って収納できます。
脱着が気軽で開放感がある
頭にかぶせてあご紐を締めるだけなので脱着が容易で、解放感があります。耳周りを覆うイヤーカバーのついたものはフィット感が高まります。
価格が安い
1万円台で買えるものも多く、気軽に購入できます。
ハーフヘルメットのデメリット
帽体(シェル)が小さいのでフィット感が弱く、頭部全体を十分に保護できず、転倒・事故時に顔や耳、後頭部をケガする可能性があります。
ヘルメット選びの注意点
ヘルメットはきつすぎても緩すぎてもいけないものなので、なるべく店頭で試着してから購入しましょう。
安全第一の装具品ですので、JISなどの規格も確認し、中古品はできれば避けましょう。
サイズがあったものを選ぶ
ヘルメットのフィット具合はライディングに大きな影響を及ぼします。ゆるすぎては安全性が損なわれますし、キツすぎると頭部が圧迫されて痛くなってくることもあります。
ですから、ネット通販でいきなり購入することはお勧めできません。最寄りのバイク用品店などで頭部のサイズを測ってもらい、ヘルメットを実際にかぶってみることが重要です。バイク用品店ではフィッティングサービスを行っている店舗も多く、その場で内装サイズを調整してもらうこともできますよ。
実際にかぶってみると、サイズ以外にも視界・圧迫感・重量・通気性などヘルメットの特徴や性能を体感することができます。
アライ(Arai)、ショウエイ(SHOEI)、カブト(Kabuto)といった有名ヘルメットメーカーの製品は日本人の頭の形に合わせて設計されており、種類も豊富です。迷った場合は、この3つのメーカーから選べば失敗することはないでしょう。
安全規格に適合したものを選ぶ
バイク用ヘルメットには安全規格が定められています。工事現場等で使っているようなヘルメットはバイク乗車用ではないため、必ずバイク用ヘルメットを選びましょう。
PSC(ピーエスシー)マーク
国が定めた消費生活用製品安全法に適合したヘルメットにはPSCマークの貼付が義務付けられています。
日本国内でバイク乗車用として販売するためにはこの安全基準をクリアすることが必要です。
帽体の側面などに小さなステッカーが貼付されているので確認しましょう。
SG(エスジー)規格
一般財団法人製品安全協会が、その安全性を任意で認めた製品にはSGマークが付いています。SG認定製品は、製品の欠陥によって人身事故が起きた場合、被害者に対して最高1億円の損害賠償が支払われる仕組みです。任意なのでSGマークがなくても国内販売はできます。
JIS(ジス)規格
日本産業規格という任意の規格で、日本の国家標準のひとつです。
バイク用ヘルメットの場合、125cc以下のヘルメットにはJIS1種、それ以上の排気量(無制限)のものにはJIS2種が設定されていて、落下試験、貫通性能試験、あご紐試験などの性能試験を行っています。
任意なのでJISをクリアしていなくても国内販売はできますが、日本国内の一般的な品質基準であることは保証されません。
SNELL(スネル)規格
カーレース中の事故で亡くなった著名なレーサー、ピート・スネル氏の友人らが1957年に設立したスネル記念財団による規格。
常に最新の性能値に更新しながら、バイク以外にも乗馬用やスキー用など幅広くヘルメットの規格認定を行っています。
審査が厳しいことで知られ、帽体の耐久強度が重視されるため国際的な上位規格となっています。
Arai(アライ)規格
日本発の世界的なヘルメットメーカーであるアライヘルメットが独自に定めている規格です。
SNELL規格よりも厳しい独自の規格として知られています。
motoGPレーサーに提供している製品と市販製品の安全性が全く同じであることからもArai規格の信頼性の高さが伺えます。
DOT(ドット)規格
アメリカの合衆国運輸省が定めた企画で、日本のPSCやJISのようにアメリカ製ヘルメットの標準規格となっています。アメリカ国内ではDOTマークが表示されていないと販売できません。
この他にも国連欧州経済委員会によるECE規格(ECE基準)や、国内のMFJ公認レースに出場する際の規定にあるMFJ(財団法人日本モーターサイクル協会)規格などが知られています。
排気量にあったものを選ぶ
小排気量向けのハーフヘルメットはJIS1種の基準をクリアしているものが多いですが、JISは任意規格なので道路交通法とは関係がありません。なので、ハーフヘルメットで大型バイクに乗っていても捕まることはありません。
しかし、各種試験の設定数値にならえば、大型バイクの速度域で転倒・事故を起こした時にハーフヘルメットで安全性を担保できるかと言えば、できません。SGマークの損害賠償制度においても認められない可能性もあります。
やはり、ヘルメットは各種規格にならって排気量に合ったものを選ぶのが安心です。
中古ヘルメットには注意
近年はバイク関連パーツの中古品売買が盛り上がりを見せていますが、ヘルメットの場合はあまりお勧めできません。
ヘルメットには使用開始から3年程度といった交換の目安があり、前オーナーの使用状況が明確には把握しづらいですし、海外メーカーのものだと材質や品質が不明なものもあります。
それでも購入する場合は、製造年月のほか、外殻のシェルだけでなく、各部の動作が問題ないか、内部のライナー部に損傷がないかなども確認しましょう。
自分の用途に合ったヘルメットの種類を選び、快適で安全なバイクライフを!
ヘルメットを選ぶ際、外観やデザインで選ばれる方も多いと思います。
街中を走っている分にはそれで良いのですが、ロングツーリングに出ようとなれば、やはり用途にあったヘルメットの種類を選ぶべきです。
シールドのないジェットタイプであれば、後付けシールドやライディング用のアイグラスが必要ですし、北海道ツーリングなどでよく遭遇するダート路面をアドベンチャーバイクで走りたいとなればアドベンチャーヘルメットが最適です。
自分がどんな目的で、どんな環境でバイクに乗るのかをよく考えてヘルメットを選べば、きっと快適で安全なライディングが楽しめますよ!
※製品写真及びディティール写真は各社公式サイトより引用