高速道路が走れるようになると、ツーリングやバイクライフが一変します。
より遠くの目的地までスムーズに、速く、ラクに行けるようになるからです。

ETCを装備していれば、料金所で停まる必要もありません。
ただし、高速道路の走行は教習所では体験できませんから、何もかもが初めてのことにとまどうことも多いと思います。

そこで今回は、高速道路をバイクで走るにあたっての注意点やポイントについて詳細に説明します!

バイクで高速道路を走る際の条件は?

高速道路を走るには126cc以上のバイクとそれに見合った免許が必要です。
また、高速道路でバイクの二人乗りをする場合には二輪免許取得から3年以上が経過していないと高速道路を走ってはいけません。
さらに、100km/hという速度規制もあります。
なお、ETCを装備すれば料金所でも停まる必要がなくスムーズに走れます。

排気量が125cc以下の原付バイクは高速道路を走れない

高速道路(高速自動車国道)を走れるバイクは、道路運送車両法第2条第2項により「自動車」のみと定められています。

道路運送車両法で自動車に該当するバイクは、126cc以上(125cc超)の「軽二輪(二輪の軽自動車)」と251cc以上(250cc超)の「小型二輪(二輪の小型自動車)」ですから、125cc以下の原付一種・二種のバイクは高速道路を走ることができません。

そのため、高速道路を走るためには、道路交通法の免許区分である「普通自動二輪(普通二輪)」または「大型自動二輪(大型二輪)の免許を取得していることが条件となります。

なお、125cc以下のバイクで高速道路に進入・走行した場合は通行禁止違反となります。

通行禁止違反の罰則

違反行為の種別 車両区分 違反点数 反則金
通行禁止違反 原付一種 2点 5,000円
原付二種 2点 6,000円

原付バイクで間違えて高速道路に入ってしまった場合は?


近年、高速道路への誤進入が増えています。
要因のひとつには、マップアプリのナビ機能やナビ専用アプリの中にも、原付一種・二種の走行可能道路に対応していないものが多いことが挙げられます。
アプリが道案内を間違えて、案内されるままにスロープを上がったら高速道路や地域高規格道路(自動車専用道路)だったという事例です。

そこで気づけばよいのですが、すでに高速道路を走行中だった場合は、路肩や非常駐車帯などにバイクを停め、ガードレールの外など安全な場所に避難してから、高速道路会社の道路管理者(#9910 ※道路緊急ダイヤルで全国共通)または警察(110番)に電話をして指示を仰ぎましょう。

すぐ近くにあるようなら、非常電話(1kmおきに設置)での連絡も可能です。

絶対にしてはいけないのは、逆走して戻ろうという行為です。
気が動転してしまい、「まだそんなに走っていないからインターまで戻ろう」と逆走することは事故の要因となり危険です。

まずは「安全にバイクを停めて連絡する」ということを覚えておいてください。

規制速度を守る

高速道路の走行速度は、道路交通法施行令第27条により最高速度は100km/h、最低速度は第27条第3項により50km/hと規定されています。
最高速度と最低速度の範囲を1km/hでも超えた場合はスピード違反(速度超過違反)となります。
なお、超過速度により一般道とは異なってくるので注意してください。

  高速道 一般道
超過速度
(km/h)
点数 反則金 点数 反則金
1~14 1点 9,000円 1点 9,000円
15~19 1点 12,000円 1点 12,000円
20~24 2点 15,000円 2点 15,000円
25~29 3点 18,000円 3点 18,000円
30~34 3点 25,000円 6 6ヵ月以下の懲役

または10万円以下の罰金

35~39 3点 35,000円
40~49 6 6ヵ月以下の懲役

または10万円以下の罰金

50 12 12

上の表の通り、高速道路では40km/hオーバーで取締りを受けると、赤色キップ(告知書の色が赤い)で一発免停(免許停止処分)となります。
過去3年以内に前歴がなくても免停30日、12点なら90日の免停となります。前科としての記録も残ってしまうので速度超過には注意しましょう。

なお、最高速度については、80km/h(沖縄自動車道路)や120km/h(新東名高速道路などの一部区間)に指定された路線・区間もあります。
また、東京都心の首都高速道路など名称に高速道路がついていても制限速度が一般道と同じ50km/hになっている場合もあります。
都市部の高速道路を走る際には規制標識・標示や電光掲示板(道路標示板)を見逃さないようにしましょう。

タンデム(二人乗り)は20歳以上かつ二輪免許取得から3年

高速道路をバイクで走るための条件には、前述したように126cc以上というバイクの排気量がありますが、タンデム(二人乗り)する際には、さらに条件が加わります。

高速道路でのタンデム条件

運転者の年齢 普通二輪または大型二輪免許取得からの経過年数
20歳以上 3年以上

なお、首都高速道路の一部区間など、タンデム走行が禁止されている路線もあるので注意が必要です。
マップ・ナビアプリでは対応していないものも多いので、道路標識などを見逃さないようにしましょう。

高速道路を走るのにETCは必要?

ETC(Electronic Toll Collection System)があれば、高速道路に乗る時、降りる時の料金所で支払いをしなくてもよいので、素早くスムーズに料金所を通過できます。
支払いのためにグローブを脱いだりお金やクレジットカードを出したりする手間、それらが風に飛ばされるリスクがなくなり、とても気がラクになります。

もちろん、ETCが無くても高速道路は走れますが、近年はETC装備車両しか出入りできないスマートインターチェンジも増えています。
PAやSAの中に設置されているところも増え、目的地や自宅により早くつくためにスマートインターチェンジを利用できるなど高速道路上のルーティングに選択肢が増え、利便性を高めることができます。

また、通常の走行料金よりも安くなるETC割引が使える道路も多いですし、圏央道など、ETC2.0の装備により、さらにお安くなる道路も登場しています。

ツーリングプランや定率割引も利用可能

ETCを装備していれば、ETC二輪車限定の「ツーリングプラン(エリア限定)」や「二輪車定率割引(土日・祝日のみ)」といった割引プランを利用することもできます。高速道路の運営会社であるネクスコ各社のホームページから申し込んでください。どちらもオンシーズン・期間限定で実施されています。

【参考サイト】
ネクスコ中日本:【ETC二輪車限定】ツーリングプラン
ネクスコ中日本:【ETC二輪車限定】2023二輪車定率割引

バイクのETC車載器・装着費用はクルマより高額

バイク用のETC車載器には防水・防塵・耐振性能などが求められることもあり、ETCの導入費用はクルマ用より高額です。ネクスコ各社では「ETC車載器購入助成キャンペーン」を毎年のように展開していますので、該当期間内に購入・装着すれば1万円ほどお得になります。助成台数に限りがありますので、早めに申し込むことをお勧めします。

【参考サイト】
ネクスコ中日本:南関東・甲信・東海・北陸エリア  ETC/ETC2.0車載器購入助成キャンペーン2023

高速道路を走る際の注意点


高速道路には一般道と違うところが多くあります。
バイクへの負担も大きいため車両の状態に気を使うべきですし、万が一に備えてしっかりした服装も必要です。
運転操作についても、速度超過に注意する、車間距離を長めに取る、休憩はこまめに取るといった慎重さが求められます。

事前メンテナンスを必ず行う

高速道路での故障やトラブルは大事故につながる可能性もあるため、事前に車両の点検やメンテナンスをしておきましょう。

特に、高速走行で負担の掛かりやすい足回りの点検はしっかり行いましょう。タイヤの空気圧は適正か、クギなどが刺さっていないか、チェーンがたるんでいないかなどを確認し、必要があれば整備しておきましょう。

高速道路を走る際の服装


高速道路は走行速度が大きいため、転倒などの場合には体へのダメージが大きくなります。
自分の身は自分で守るためにも、長袖・長ズボンは当然ですが、各部にプロテクターが入ったウェアを着用し、靴についてもくるぶしの隠れるタイプを選びましょう。

走行中にウェアの各部がバタついていると疲労につながるため、ある程度タイトでしっかりとした素材のものを着用しましょう。
雨天の際にすぐに停まれないことを考えれば、撥水・防水性があると安心です。

ヘルメットも、フルフェイスヘルメットやジェットヘルメットなどサイズの合ったものをかぶり、あご紐をしっかり締めてください。
なお、虫や飛び石から目を守るためにシールドやゴーグルをしっかり使いましょう。

車間距離を十分にとる

高速道路では一般道よりも制動距離が大幅に伸びるので、車間距離を多めに取りましょう
。一般的には100km/h走行時には前走車との車間距離を100m以上は取るべきとされています。
道路上の白線が20m間隔で引かれているほか、時折、ガードレール上に車間距離確認用の標識が立っているので、目安にしましょう。

車間距離を長めに取ることは、追突事故のリスク回避だけでなく、落下物などにいち早く気づくためにも大切なポイントです。

横風に注意する


バイクで高速道路を走行する上で最も注意すべきなのが横風です。
車重が軽く車体面積が大きいバイクほど影響を受けやすいので、250ccオフロードバイクや150ccスクーターなどは特に注意してください。

横風の強さは天気アプリなどの「風速」で確認できるので、ルート上の風の様子を予め確認しておくと安心です。
目安としては、風速5m/s以上の予測であれば、場所により瞬間的に10m/s近くの風(吹き流しが90度立ち上がり、真横になるレベル)が吹く恐れがあります。
不安な場合は、一時的にでも高速道路を降りて下道で移動することをお勧めします。

横風が強く吹く場所には、警告のための黄色い「横風注意」標識や「吹き流し」が設置されているので、その区間を通過する際は、ニーグリップを強めにし、ギヤを1段落として路面へのトルク(駆動力)を強めるなどして、横風を受けても車体が振られないように準備をしておきましょう。

また、不意に横風が吹きやすい場所としては、トンネルの前後、橋の上、山間部の谷沿い、海沿いなどです。
さらに、大型トラックからの風圧や乱流によりバイクの挙動に影響を受けることがありますので、大型車両の近くを走る場合は注意しましょう。

なお、横風が強い場合は、車体が風に押されて風下に移動します。
なるべく車線の中央をキープし、あまりに風が強い場合は上半身を風上に向けてバランスを取りましょう。
それでもどうにもならない場合は風の止んだ瞬間に路肩にバイクを停めて緊急避難し、転倒を防いでください。

なお、風速10m/s以上の場合は高速道路に速度規制が入り、20m/sでは通行止めとなりますが、バイクの場合は速度規制が入った時点でもうまともには走れません。下道移動に切り替えるなど安全第一で運転しましょう。

こまめに休憩を取る


高速道路を走り続けると、走行風を受けること、高速状態での緊張持続、体を動かさない(固定される)ことでの関節のコリなどにより、かなり疲れがたまることがあります。

肝心なのは疲労がたまる前に休憩を取ることで、一般的には100kmまたは1時間ごとにパーキングエリアやサービスエリアで休むのがよいとされています。
この際に、首や腰、肩や手指の関節をストレッチしておくと疲労が抜けやすくなります。
夏場は熱中症の危険が高まりますので、スポーツドリンクなどで水分補給もしっかりと行いましょう。

パーキングエリア(軽食・売店など)はおよそ15kmごと、サービスエリア(レストラン・コンビニ・ガソリンスタンドなど)は50kmごとを目安に設置されています。
特に複数人でマスツーリングをしている場合は、次の休憩エリアを決めてから走り出しましょう。

スピードの出し過ぎに注意

高速道路の走行中は周囲のクルマの流れに合わせがちですが、一般道よりもこまめにスピードメーターを確認し、速度超過になっていないか気をつけましょう。

また、高速道路を降りた後は、高速走行時の感覚でついついスピードを出しがちです。一般道に降りてからはスピード違反に十分に注意してください。

合流に注意

本戦に合流する際は、加速車線で十分にスピードを上げてから合流する必要があります。
ミラーや目視により、予めどのクルマの後ろに付くのかを決め、そのクルマの後ろに入るように合流すると良いでしょう。

また、合流の際に後ろのクルマが減速してくれた(ゆずってくれた)場合には、ハザードランプなどでお礼の挨拶(サンキューハザード)をしておくとトラブルの予防にもなります。自身の運転に余裕がある場合はお勧めします。

路側帯を走らない

渋滞時などに走行帯の左にある路側帯を走ることは道路交通法で禁止されており通行区分違反となります。
高速道路上の取締りの中でも厳しく行われるところなので、路側帯の走行は絶対にしてはいけません。

通行区分違反

※高速道路に特化した違反ではないため原付一種についても掲載

違反行為の種別 車両区分 違反点数 反則金
通行区分違反 原付一種 2点 6,000円
自動二輪 2点 7,000円

高速道路の路側帯は、救急車やパトカーなど緊急車両がスムーズに通行するため、あるいは故障車を停車させるための場所ですから、緊急事態等でなければ駐停車させることもできません。

また、路側帯には落下物も多く、タイヤのパンクなどトラブルにつながる危険性もあるので、やはり走るべきではありません。

悪天候時の高速道路は慎重に走る

雨天や霧の発生、強風時など悪天候時に高速道路を走る際には慎重な操作を心がけてください。
加・減速時のスロットルやシフトチェンジの操作、制動時のペダル・レバー操作などが“急な操作”にならないよう注意しましょう。

特に雨天時はスリップしやすく、転倒につながる恐れもあります。
雨天時には80km/hなどの速度規制が入ることが多いので、前走車との距離を長めに取り、道路のつなぎ目(金属製のジョイント部)などすべりやすい箇所にも気を配りましょう。

バイクにとって便利な高速道路だけど安全第一で!

目的地まで速くラクに行くことができる高速道路ですが、走行する上で最も大切なのは無理をしないことです。
悪天候時には雨や風に耐えて走らなければならないこともありますし、疲れている時は単調な景色も相まって眠気に襲われることもあります。

こういう時は早めにサービスエリアなどで休憩するか、いっそのこと高速道路を降りて、一般道に切り替えたほうが安全・安心です。

なお、初めて高速道路に乗るという場合は、できれば経験者と一緒に走ることをお勧めします。
走行ペースや車間距離、道路上の情報の取り方などを教えてもらえるでしょう。
安全第一で、便利で快適な高速道路走行を楽しんでください!

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。