バイクに乗る時の服装は?選び方のコツを解説!
公開日:2023.10.03 / 最終更新日:2023.10.03
義務化されているヘルメットの装着を除けば、バイクに乗る時の服装に取り決めはありません。
長袖、長ズボン、くるぶしの出ない靴、グローブに加えて、胸部プロテクターを装着しましょうというのが昨今のトレンドです。
インナープロテクターの普及により普段着のようなオシャレな服装でも安心してライディングを楽しむこともできます。
各アイテムの魅力やメリット、機能性を踏まえた季節ごとの選び方、ノウハウについても説明します。ぜひ参考にしてください。
バイクの服装の基本
バイクに乗る際の服装の基本は肌を露出しないことです。
長袖・長ズボンという組み合わせは一年を通して変わりません。
さらには、関節や胸部をプロテクターで守ることが重要です。
一番重視すべきは転倒や交通事故に備えた安全性だからです。
そんなウェア類の基本について解説します。
ヘルメット
ヘルメットは、道路交通法第71条により、公道を走行する場合は着用が義務付けられています。
頭部全体を覆っているフルフェイス(上写真)、顎や顔がシールドとなるジェット(下写真)、半球状の半キャップ(ハーフキャップ)などの形状・タイプがありますが、一般的には用途別に選ばれています。
スポーツ走行をするなら頭部全体を保護する効果の高いフルフェイスタイプ、ツーリングなら解放感と快適性、使い勝手の高いジェットタイプ、原付バイクなどでの気軽な街乗りがメインなら半キャップ(下写真・ワイズギア製)といった具合です。
また、あご部の外装を頭部まではねあげられるシステムタイプや額のあたりにバイザーを備えたオフロードタイプ(下写真・ワイズギア製)などの特殊な形状・タイプもあります。
近年は、海外からの安価な輸入品も増えていますが、保護性能の低さが問題とされることもあります。
頭部をしっかり守るためにもPSC(消費生活用製品安全法)、JIS(産業標準化法)、SG(製品安全協会)といった日本国内の安全基準を満たしたヘルメットを選びましょう。
これらの国内基準を満たしたヘルメットにはPSCマークやJISマーク、SGマークのステッカーが貼られているので、購入前に確認してください。
ヘルメット選びに迷ってしまった場合は、Arai(株式会社アライヘルメット)・SHOEI(株式会社SHOEI)・Kabuto(株式会社オージーケーカブト)といった国内大手3メーカーのフルフェイスヘルメットなら用途を問わずに安心できます。
また、国内メーカーの多くは推奨交換時期を3年としているなど、ヘルメットには使用期限があるので、安いからと言って安易に中古品を購入することはお勧めできません。
二輪車死亡重傷事故では、約30%でヘルメットが脱落しており、25年間も同水準で推移しています。Dリング式でもラチェット式でも、ヘルメットのあご紐はしっかり締めましょう。
グローブ
スリップなど転倒時には路面に手をつくことが多いためグローブは必ずつけるべきです。
また、グローブをつけることで車体の振動や走行風から手を守り、手指の疲労を軽減することもできます。
グローブに規格などはありませんが、軍手や手袋よりもバイク用のしっかりした作りのものを選びましょう。
安全面を考えれば、ナックル部や指の関節部などにプロテクターを装備したものがお勧めです。
季節ごとに言えば、3シーズン(春・夏・秋)用グローブと冬用のウインターグローブがあれば十分ですが、さらに、真夏でも涼しいメッシュグローブや、雨の日用の防水レイングローブがあると快適です。
近年は、グローブをはめたままでもスマホが操作できるタッチパネル対応機能を持ったグローブも増えていて、ツーリングを快適にしてくれますよ
胸部プロテクター
二輪車死亡事故での死亡損傷主部位は、頭部損傷(43.3%)に次いで胸部損傷(26.6%)の割合が高いというデータ(ITARDAデータ・2011~2020年合計)が出ています。
つまり、二輪車事故での被害を軽減させるためには胸部プロテクターを装着しておくことが大切です。
ライディングジャケットには、胸部プロテクターを標準装備しているもの、胸部プロテクターを後付けできるスペースのあるものなどがありますが、そうでないジャケットや普段着にも装着できるベルト付き胸部プロテクター(下写真)も販売されています。
また、インナーシャツやインナーパンツにプロテクターを組み込んだインナープロテクターも増えてきました。
インナープロテクターを着ていれば、アウタージャケットに防御性能を求める必要がないので、オシャレの選択肢も広げることができますよ。
ライディングジャケット
バイク乗車時の専用ウェアがライディングジャケットです。
運転姿勢に合わせてデザイン・裁断されているので動きやすく疲れにくいほか、転倒・事故時に備えたプロテクターや防風・防水性能、夜間に安心な反射材(リフレクター)を備えたものもあります。
基本的には、春夏用と秋冬用の2タイプが用意されており、さらに、真夏の快適性を高めたメッシュジャケットも定番です。
この他、オールシーズンジャケットというものもあり、夏場に必要なベンチレーション機能、冬場に対応した脱着インナーを備えています。
生地の素材には引き裂きに強いナイロン・ポリエステルといったものが使われています。
また、アメリカン・クルーザーといったバイクであれば、車両の雰囲気に合わせてレザージャケット(革ジャン)を選ぶのもよいでしょう。革製品もまた、引き裂きや摩擦に強い素材です。
革ジャンの中にも真夏に対応したパンチング(小さな穴がたくさん開いている)レザーや、冬場に対応した保温インナーの脱着ができるものもあります。
通勤や街乗りがメインならバイクを降りた時も違和感のないカジュアル系デザインのジャケットを選ぶとよいでしょう。
バイク用パンツ
ジャケットと同じようにバイク専用にデザインされたライディングパンツがあります。
乗車姿勢や乗車中の動きに合わせた作りになっていて、一般的なズボンよりも丈が長くなっていたり、膝を守るためのプロテクターが備わっていたり、生地そのものが摩擦や引き裂きに強く破けにくくなっているといった特徴があります。
近年は、伸縮性のある生地を採用したものが増え、ライディング中のバタつきを防止するほか、膝関節などに負担をかけないものが増えています。
ライディングシューズ
バイク乗車用の靴がライディングシューズです。
つま先やくるぶし、かかと部分にプロテクターを内蔵していたり、シフトペダルが当たる部分が丈夫に作られています。
また、オイルなどで滑りにくいように靴底に耐油性ラバーソールを採用するものもあります。
万が一の転倒に備えて、くるぶしを保護するというのが大きな特徴なので、ライディングシューズの基本的なスタイルはハイカットです。
ライディングブーツも同様のスタイルなので、脱ぎ履きがしやすいようにサイドファスナーを採用するモデルが多くなっています。
なお、シューズやブーツの靴ひもがシフト・ブレーキペダルに引っかかって転倒ということも考えられるため、近年はBOAシステムなどのダイヤル調整式ワイヤーを採用するタイプも増えています。
生地については、防水性があれば突然の雨にも安心ですが、内部がムレやすくなる傾向があります。
高価にはなりますが、透湿防水性能を持った生地を採用したものだとベストです。
近年は、ファッション性に優れたライディングシューズも数多くラインナップしています。
夏のバイクの服装
夏場のライディングでは暑さ対策が重要です。
通気性のよいメッシュ素材を使ったジャケットやグローブのほか、ウェアの各部にベンチレーション機能を設けることで服内部の熱気を排出し蒸れにくくしているものが多いです。冷感インナーと組み合わせると効果的です。
夏場のライディングを快適にするアイテム
エアインテーク
袖口から走行風を取り入れることができるアイテムです。
山間部や高速道路などでも大きな効果を感じることができます。
※写真はVENTZ(ベンツ)/エアインテーク
インナーキャップ
インナーキャップを頭にかぶっておくとヘルメットの走行風導入および内部エアー排出機能により頭部の汗と熱を蒸散して、ヘルメット内部が蒸れにくいといった効果があります。
夏場はメンテナンスも大切
夏場はとにかく汗をかきます。冷感(冷却)スプレーなどで体温の上昇や発汗を抑えることもできますが、その効果はせいぜい半日程度です。
特に、ライディングジャケットとヘルメットの内装は汗をよく吸収するので、ツーリングから帰ってきたら都度洗濯することが理想です。
なお、宿泊ツーリングの際には消臭剤などを携帯するとよいでしょう。
ウェアやヘルメット内装が吸収した汗を一晩放置しておくと翌朝臭うことがありますが、消臭剤を吹いておけば安心です。
ちなみに、ヘルメットやグローブの乾燥機も販売されています。プラズマイオンと大風量で消臭・乾燥するものです。
アンモニアや硫化水素を消臭でき、カビも抑制できるなど高機能で安心です。
半袖・短パンは危険
夏は暑いからと、半袖・短パンでバイクを運転することには様々なリスクがあります。
事故時のリスク
半袖・短パンでバイクに乗っても違反にはなりませんが、危険な行為です。
転倒した際には肌と地面がこすれることで大けがを負う可能性があります。
立ちゴケの際にも、熱くなったアスファルトやマフラー熱などでやけどを負うこともあるので、綿の生地1枚でもいいので長袖・長ズボンを着るようにしましょう。
運転操作に影響が出るリスク
真夏は直射日光の熱により、バイクの各部が高温になります。
そのため、短パンでニーグリップをするとタンクやフレームに触れた膝がやけどをする恐れがあります。
熱くてニーグリップができないなんてことになると運転にも支障が出てしまい危険です。
熱中症のリスクが高まる
半袖・短パンだと走行中でも露出部がどんどん日焼けをしていきます。
やけどと同じ状態になり体内の水分が奪われて脱水症状や熱中症になる恐れがあります。
夏でも長袖長ズボンを
なお、この他にも、飛んできた虫が当たってきたり、飛び石によってケガをする恐れもあります。
ナイロン製メッシュジャケットやメッシュ生地の化繊インナーウェアを着ていれば、走行風と汗(水分)による気化熱効果でTシャツ1枚よりも体の表面温度を効率的に下げ、汗を乾かすことができます。
汗がベタつくような蒸し暑い日ほど、気化熱を意識した長袖・長ズボンを着用してください。
サンダルでバイクを運転すると違反になることも
夏場にサンダルでバイクに乗っている方を見かけますが、各自治体の公安委員会によっては違反となる可能性があります。
サンダルや下駄で運転した場合
違反行為の種別 | 車両区分 | 違反点数 | 反則金 |
公安委員会遵守事項条例違反 | 原付一種 | なし | 5,000円 |
自動二輪 | なし | 6,000円 | |
安全運転義務違反 | 原付一種 | 2点 | 6,000円 |
自動二輪 | 2点 | 7,000円 |
例えば、鎌倉・湘南エリアに海水浴場が並んでいる神奈川県には、神奈川県道路交通法施行細則第11条(4)があり、『木製サンダル、スリッパ、下駄など運転を誤る恐れのある履物で車両を運転しないこと』という条例規定があります。
クロックスやハイヒールなどでも取締りを受ける恐れがありますし、そうした履物で事故を起こした場合は過失が高いとみなされ、示談交渉や裁判時に不利になるとされています。
詳細は、各自治体の道路交通規則や道路交通法施行細則を確認してください。
冬のバイクの服装
冬はバイク乗りにとって最も過酷な季節です。外気温が10度以下となる中、走行風によって体感温度が氷点下となることも珍しくありません。
ウインタージャケットなどを着ることで、防風・保温することが重要です。
重ね着
冬のライディングウェアの基本は、重ね着(レイヤード)です。
暑い寒いは人によって感覚が違うので、自身が経験を積みながら最適な重ね着を模索することになります。
なお、バイク用のウインタージャケットを着ていれば気温10度くらいの日中ならポカポカするくらいに暖かく感じますが、日没後の夜間走行や高速道路の走行中だとあっという間に体感温度は氷点下となります。
こうした中、冬の重ね着の一番難しいところは、汗をかかない乗車中と汗をかきやすい降車中のバランスを取ることです。
基本的には「バイクを降りたら都度ジャケットを脱ぐ」という方法を基本とし、観光地での散策や食事中にはなるべく汗をかかないように気をつけます。
降車中にかいた汗は走行中に体を冷やす原因になってしまうからです。
重ね着の考え方とポイント
上の写真は、左からインナーウェア、化繊混紡ニット、ジャケット付属の保温インナー、ジャケットとなっています。下着の上に左から順に重ね着をします。
まず、肌に直接触れるアンダーウェア(下着・肌着)を着用し、その上にインナーウェア(インナースーツ)を重ねますが、この時点で、ウェアには保温性と透湿性が求められます。保温性だけだと汗をかいてしまい、体を濡らして冷やしてしまうのです。
特に、アンダーウェアについては吸汗速乾性を重視しましょう。アンダーウェアが汗で濡れてしまうと中々乾かせないからです。
極端な話、アンダーウェアについては保温性のない3シーズン用でもかまいません。その場合はインナーウェアで保温性を確保します。
少し高価になりますが、インナーウェアには吸湿発熱素材を選ぶとよいでしょう。
インナーウエアから重ねる上半身アイテム
上半身では、デッドエアを蓄えられる化繊混紡のニット素材など保温性の高い服を着用し、最後にウインタージャケットを着るとよいです。
なお、ウインタージャケットには脱着可能な保温インナーを備えるものもあります。
インナーウエアから重ねる下半身アイテム
下半身では、インナーウェアの上に防風性の高いライディングパンツやデニムを履きましょう。
保温性だけを求めてしまうと生地が厚くなり腰から下の動きを妨げるほか、膝や股関節が疲れたり、股ぐらやひざ裏に汗をかいてしまいます。
外気温が氷点下など極寒環境で走る場合は、ライディングパンツの上に履くオーバーパンツに保温性や防水性を求めるのがよいでしょう。
ライディングパンツ・オーバーパンツはワンサイズ大き目を選び、裾が長めになるようにしておくと、くるぶし部からの走行風の浸入を防ぎやすくなります。
3つの首からの寒気の侵入を防ぐ
冬のライディング中に体を冷やさないためには、3つの首(首・手首・足首)に走行風を当てないことが重要です。
首には防風性の高いネックウォーマーなどを装着し、手首はロングカフのグローブで走行風の流入を防ぎ、足首はハイカットシューズにライディングパンツの裾をかぶせて密着させる(面ファスナーなどで絞る)ことで対応します。
電熱アイテムを使用する
発熱する電熱線や電熱パネルが埋め込まれた電熱アイテムも様々なものが販売されています。
グローブ、ベスト、ジャケット、パンツ、ネックウォーマーなど必要な部位で使用すれば、そのぶん重ね着の枚数を減らすこともできます。
電熱アイテムの電源は、バイクのバッテリーから直接取るもの、専用バッテリーを使うもの、汎用モバイルバッテリーを使うものなど様々ですが、バイクのバッテリーから給電する場合はバッテリーが上がらないように車体の発電容量と使用電量に注意しましょう。
ヘルメットシールドの曇り対策も
外気温の低い冬場は、シールドも曇りやすくなります。
最も効果的なのは、ヘルメットシールドの内側にピンロックシートを装着し、二重窓のようにすることです。
ただし、ヘルメットによってはピンロックシートを装着できないものもあります。
その場合は、ヘルメットシールド用の曇り止めスプレーを使いましょう。
ロングツーリングの場合は、スプレーを携行しておくと安心です。
レインウェアのサイズに注意
冬用のライディングウェアを着ると、どうしても着ぶくれ気味になりますが、ここで気をつけたいのが雨天時のレインウェアのサイズです。
ウインタージャケットの上にレインウェアを着る場合は2サイズくらい大き目でないと着れない恐れがあります。
特に通勤通学などで毎日バイクに乗る方は必要とあらば冬専用に大き目のレインウェアを買い足しておくとよいでしょう。
バイク乗車中の服装は安全かつ快適なものを
バイクに乗る時の服装で最も重視すべきは安全性です。肘、膝、背中(脊髄)、胸部にプロテクターが備わっているものを選んでください。
その上で、動きやすいか、涼しいか、温かいかなど季節に合わせたコーディネートを楽しみましょう。
プロテクターにしても、必ずCE規格適合品でなければいけないというのではなく、標準装備のソフトタイプでもよいので、とにかく必ず装着していてください。
バイクの場合、軽く転んだだけでも膝や肘、手に大きなケガをすることがあります。
こうした時にソフトプロテクターが備わっていれば、服が破けるだけで済むことも多いのです。
ぜひ、安全性重視の服装で、バイクライフを楽しんでください。
●用品協力メーカー(特に注記のないもの):ウェア/南海部品 ヘルメット/アライヘルメット