バイクの楽しみと言えばツーリングに出かけることですね。
でも、バイクで遠くに行くことについて不安もあると思います。
あらかじめやっておくべき準備、持ち物、注意点について紹介します。

ツーリングルートはどうやって決めたらいいの?

ツーリングルートの設定は、ツーリングの内容そのものです。行きたいスポット、走りたい道をつないでいきましょう。
ルートは予めスマホ等に記録しておき、インカムなどで音声案内が受けられるようにしておくと、走行中も安心です。

ルートの作成・記録はグーグルマップのマイマップ作成機能が一般的ですが、ツーリングに特化した地図・ルート作成アプリもあるので、いろいろと使ってみて、自分に合ったものを選びましょう。
バイク専用のアプリには、二輪車通行規制区間を避ける機能を持つものもあります

おすすめのツーリングルート設定アプリ

ツーリングサポーター:https://web.moto.touring.navitime.jp/
ナビタイムジャパンが無料で提供するPCブラウザ上でツーリングルートを作成・共有できるサイト。細道回避やタンデム規制まで考慮したルート検索にも対応しています。スマホ版(iOS・AndroidOS)もあります

ツーリングルート設定のポイント

さて、ルート設定時の注意点は「よくばらないこと」です。「物足りないかも」くらいが丁度いいのです。なぜなら、ツーリング中には想定外のいろいろなことが起きるからです。食事処で行列していた、展望台に行く前に良い景色に出会って思わず撮影、現地の人やライダーと出会って話しこむ、体調不良やマシントラブルが起こるなどです。

特に、滝や展望台など現地で歩く必要があるスポットにはかなりの時間を要しますし、体力も奪われます。こうした点を見積もっておかないと、当日のスケジュールが破たんしてしまいます。

ツーリング雑誌に携わってきた筆者の経験から言うと、下道でスポットを巡りながら走る場合の目安は100kmです。冬場は日没が早いので、さらに距離が短くなります。

出発までの天気予報はどう見るべき? 当日、現地では?


ツーリング中の天候は重要です。ロケーション、景色を作るもののすべては天気次第です。富士山を見に行っても雲で隠れていたらとても残念に思えます。
天気予報をどう見るかはとても奥深く専門知識が必要となるところなのですが、基本的にはこう考えましょう。

3日前の天気予報で判断


※図はYahoo!天気・災害(https://weather.yahoo.co.jp/weather/)より引用

天気予報は週間、あるいは2週間予報が一般的です。気象庁はもっと長いスパンで予測していますがツーリングには適しません。
そして、判断すべきタイミングが3日前です。ここで降水確率が40%以上であれば、現地で雨が降る可能性が高いでしょう。まったく濡れたくないならツーリング中止もアリです。

降水量

雨天ツーリングを不安なく行えるのは雨量で言うと3mm程度までです。これ以上は土砂降りとなり走っていても周りがまともに見えません。景色をまったく楽しめなくなるわけです。
この3mmというのはイベント開催・中止の目安として知られています。

風速


※図はYahoo!天気・災害(https://weather.yahoo.co.jp/weather/)より引用

実は、ツーリングで最も危険視すべきが風です。天気予報では風速と風向きが表示されています。
特に高速道路走行の予定がある場合は注視しておきましょう。目安は5m/sです。
「大したことないのでは?」と思われるでしょうが、波と一緒で風も一定ではありません。
予報で風速5mと出ていたら高速道路上の瞬間風速は10m/sを超えることも十分に考えられます。
バイクが横風にあおられ転倒の恐れがあるため、危険だと感じたら高速道路を下りて下道に切り替えましょう。

このように、最も危険なのは風です。特に北西の風が吹く冬場から春先にかけては、絶対に見逃してはいけません。

雨雲レーダー


※図はYahoo!天気・災害(https://weather.yahoo.co.jp/weather/)より引用
現地での天気情報は、雨雲レーダーが便利です。その場所でいつから雨がどれくらいの量で降ってくるのかが正確にわかります。
ルートを変更し雨雲を避けながら走れますし、高速道路などルート変更できない場合でも事前に降るとわかっていれば、レインウェアを着ておけばよいですし、心の準備ができてメンタル的にラクです。

バイクツーリングには何を持って行くべきなのか?

ツーリングの持ち物に三種の神器があるとすれば、レインウェア、カイロ、パンク修理剤です。
筆者のバイクには小さ目のシートバッグを装着していますが、その中に常に入っているものがこの3つです。

レインウェア

絶対に必要です。降水確率0%でも常備してください。特に山の天気は天気予報ではわかりません。日本は山だらけ、どこに行っても雨が降ると思いましょう。

カイロ

使い捨てカイロです。冬場は必需品ですが、体温が下がるという危険な状況は、山岳部の夜間など真夏でも起こり得ます。
2枚は持っておきましょう。なお、現地のコンビニで買うと1枚100円くらいして高いので、出発前にドラッグストアなどで購入しておきましょう。

パンク修理剤

これこそツーリングのお守りです。ツーリング先で小さなクギが刺さって走行不能になり、レッカーを呼ぶはめに…。
パンクは市街地でもワインディングでも起こります。チューブタイヤに対応したものもあるので1本持っておきましょう。

筆者がツーリングに必ず持って行くもの

・レインウェア
・カイロ
・パンク修理剤
・モバイルバッテリー+USBケーブル
・薬(風邪薬、胃腸薬、目薬、ばんそうこう、消毒薬)
・折り畳み傘(使用時直径60cmくらいの小型のもの)

この他にも、ラチェット式の工具(8・10・12・14mm)、帽子(防水ハット)、スタンドマット、大き目のカラビナ、Mサイズのツーリングネット、小さな魔法瓶タイプの水筒(250ml)などを持っていくことが多いですね。

ツーリング出発前の点検は重要

ツーリング出発前には運行前点検を行いましょう。「ネン(燃料)・オ(オイル量)・シャ(車輪)・チ(チェーン)・エ(エンジン)・ブ(ブレーキ)・ク(クラッチ)・トウ(灯火類)・バ(バッテリー)シメ(増し締め)」が理想ですが、最低でも「ブタ(ブレーキ・灯火類)と燃料」のチェックが重要です。

特にガソリン残量については、休日(土・日・祝)を定休日とするガソリンスタンドも増えていますので、出発する前の平日に満タンにしておきましょう。

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バイクの長距離運転のポイントとコツ


ツーリングでは1日に数百kmを走ることも珍しくありませんが、そうした長距離運転時のポイントやコツについて紹介します。

ライディングポジション

運転姿勢はバイクのタイプや車種によって異なりますが、長距離運転時は同じ姿勢を長く続けていることで疲れやコリが発生します。
ですから重要なことは、荷物を積んだ時に少しでもいいので乗車中に体を動かすことができる余裕(スペース)を作っておくことです。
良くある、シートバッグに圧迫されて全く腰がずらせないというのはマズイ状態です。

こまめな休憩とストレッチ

よく言われることですが、5分程度の小休憩がものすごく有効です。
筆者は高速道路を数百km走るときは、60kmごと(およそサービスエリア2か所分)に小休憩を取り、その際にアキレス腱を伸ばす、首・肩・手首を回すといったストレッチを欠かしません。
これだけで、長距離がラクに走りつなげるようになります。

眠気対策

長距離運転で注意すべき点と言えば、眠気です。
強力ミント系のガムやコーヒーなど対策は人それぞれですが、居眠り運転をする前に休憩しましょう。
百均にも打っている小さな折り畳みざぶとんがあると、どこにでも座れます。必要とあらば寝ることも大事です。

ツーリング先でトラブルが起きたら

ツーリング中のトラブルで起こりがちなものについて対処法と共に説明します。

ガス欠(1人で走行時)

高速道路でガス欠をした場合

高速道路上では、何もできないし(公式には)何もしてはいけないことになっています。ロードサービス等を呼び、給油をお願いします。
それまではガードレールの中の安全な所に退避して待ちます。法律で携帯が義務付けられている三角停止板などをバイクの後ろに置いておきましょう。

一般道でガス欠をした場合

一般道でガス欠を起こした時は、いくつか方法が取れますが、近くのガソリンスタンドまで行って事情を説明して携行缶にガソリンを入れてもらい、バイクに戻って給油。またガソリンスタンドに携行缶を返しに行くというやり方があります。この時、スタンドが遠ければタクシーを呼ぶのも手です。

エンジンがかからない

セルモーターが回っていなければ(キュルキュル言わなければ)、以下の点を確認します。
・キルスイッチ(エンジン停止スイッチ)がONになっていないか
・スタンドは完全に降りているか。スタンドスイッチの確認
・ギアは確実にニュートラル(Nの位置)に入っているか
・(メーカーや車種により)クラッチレバーを完全に握っているか

セルモーターは回るがエンジンがかからない

・ガソリンコックがあるなら「OFF」になっていないか。ONやPRI、またはRES(リザーブ)にする
・チョークレバーがあるなら引いてから始動してみる
・燃料は入っているか。タンクの中をのぞいたり車体を揺らして音で確認する
・バッテリーが上がっていないか。ヘッドライトが暗くないか

いずれにせよ、自分一人でダメそうなら、素直にロードサービスを呼びましょう。

ロングツーリングでも快適なおすすめバイク


ロングツーリングに最適なバイクを紹介します。選定のポイントは以下です。
①クイックシフターまたはDCT等装備車両
②ウインドスクリーン装備車両
③前傾が緩く足着きのよい車両
④収納力
⑤燃費・燃料タンク容量

※カスタムが入っていて純正オリジナルの状態と異なる画像があります。

BMW R1250GS


★選定ポイント該当【①②③⑤】
「大きく重くて足が着かない」と思われがちですが、シートは取り付け位置により2段階調整が可能で国内販売モデルは805~825mmと低めに設定されており安心です。

ホンダ NC750X DCT


★選定ポイント該当【①②③④⑤】
通常、燃料タンクとする場所を23Lのラゲッジスペースとしたユーティリティ性が魅力。
DCT装備で変速操作はシフトスイッチ又はペダル(オプション設定)のみで行えます。

ホンダ レブル1100DCT


★選定ポイント該当【①③⑤】
足着き性の良いモデルでDCTも装備するという快適クルーザー。
ステップは、前方に足を投げ出す位置ではなくシート下にあるのでスポーツ走行もかなり楽しめます。

カワサキ Ninja1000SX


★選定ポイント該当【①②⑤】
フルカウルのスポーツツアラーで、カワサキクイックシフター(KQS)のおかげでクラッチレバーを握らなくてもシフト操作できます。ウインドスクリーンも手動で上下できます。

ハーレーダビッドソン FLTRXS1750


★選定ポイント該当【①②③④⑤】
クラシックなツーリングスタイルで人気のバガーモデル。重量は300kg台後半ながらシート高が695mmと足着きが良く安心感の高さが魅力です。使い勝手のよいサイドケースも標準装備します。

ヤマハ NIKEN


★選定ポイント該当【①②③⑤】
QSS(クイック・シフト・システム)はシフトアップのみの対応ですが、3輪の安定性は他の大型バイクにはないものです。高速道路でも不整地でも不安なく走れます。

ホンダ CB1300 スーパーボルドール

★選定ポイント該当【①②③④⑤】
クイックシフターは純正オプションとなっていますが、ツーリングモデルとしてかなり優秀なバイクです。最新モデルは電子化が進み、走行モードやクルーズコントロールも装備します。

ヤマハ トレーサー9GT

★選定ポイント該当【①②③⑤】
シフトアップ・ダウンに対応したクイックシフターを装備。シート、フットレスト、ハンドルバーは2段階に調整でき、スクリーンも5mm単位で10段階に調整できるなど対応力の高い構成です。

スズキ Vストローム250

★選定ポイント該当【②③⑤】
スズキDRシリーズから受け継がれたクチバシデザインの250ccツアラー。アップライトなポジションでシート高800mmと足着き性もよく、リッター30km/hオーバーの実燃費も魅力です。

BMW G310GS


★選定ポイント該当【②③⑤】
ライド・バイ・ワイヤ、スリッパ―クラッチの採用など着実に進化を続けるアドベンチャーモデル。高速道路走行時に便利なETC2.0車載器も標準装備しています。

KTM 390アドベンチャー


★選定ポイント該当【②③⑤】
ダカール・ラリーのイメージを受け継ぐ373ccの単気筒アドベンチャーです。
アップ&ダウン対応のクイックシフターをオプション装備することもできます。

ヤマハ トリシティ300


★選定ポイント該当【②④⑤】※ATバイク
LMWシリーズのミドルモデル。シートに幅があるぶん足着き性はよくないと言われますが、約40mmダウンのローシートもオプション設定されています。

スズキ ジクサー250SF


★選定ポイント該当【②⑤】
フルカウルの油冷単気筒250ccエンジン搭載モデルでコンパクトな車体とリッター32k
Mと言われる実燃費が魅力。12Lタンクのおかげで航続距離は350kmオーバー!

ホンダ CT125・ハンターカブ


★選定ポイント該当【③⑤】※自動遠心クラッチ車

実燃費でリッター60kmオーバーという低燃費も魅力の人気モデル。タンク容量は5.3Lなので航続距離は300kmオーバーにもなります。変速は4速の自動遠心クラッチでクラッチレバー操作はありません。

ツーリングの注意点

不安だからと言って、何でもかんでも積んでしまうとバイクが重くなり、それはそれでツーリングが楽しめなくなってしまいます。よほどの山奥に行かない限りは現地で調達することもできます。

また、工具をいっぱい持っていっても正しく使えなければ意味がありません。バイク保険やロードサービスへの加入など、できることは出発前に済ませておいて、不安を取り除いておきましょう。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。