普段あまり気にかけていないバイクの鍵ですが、鍵にまつわるトラブルは意外に多いものです。なくした、落とした、壊れたといったトラブルも、ちょっとした予備知識で防げますし、対処法も様々ですよ。

1.バイクの鍵にはどんな種類があるの?


まず、バイクの鍵には大きく分けて3つのタイプがあります。

①メカニカルキー(昔ながらのシリンダー錠)

住宅のドアなどにも使われているディスクシリンダー錠が主流ですが、最近は防犯性の高いウェーブ錠の採用も増えています。通常のディスクシリンダー錠なら街の鍵屋さんで複製できますが、複製された鍵の精度は落ちていくので注意が必要です。

②イモビライザーキー

通常のキーシリンダーの仕組みに加えて、キーの頭や柄に内蔵されているICチップからのIDコードが合致した場合のみエンジンがかかるようにしてある、防犯性の高いイモビライザーシステムに対応したキーです。下写真はホンダCB1100EXのもの。

③スマートキー

車両側にキーシリンダーを持たずに電波信号を読み取ることでエンジンスタートできるようになるキー。エンジンスタート時の操作は、プッシュボタンを押したりレバーやノブを回したりと様々です。アンサーバックやシートロックの解除などリモコン機能を持つものもあります。下写真はヤマハTMAX560のもの。なお、スマートキーはスペアが付属しないことが多いので、なくさないように注意。

2.バイクの鍵をなくした時にはどうしたらいいの?


バイクの鍵をなくした経験を持つ方は多いと思います。基本的には、予備キーを持っていなければエンジンがかかりませんから、現場にJAF等のロードサービスや鍵屋さんを呼んで、レッカーまたは鍵の複製をお願いすることになりますが、イモビライザーキーやスマートキーの場合は鍵屋さん次第となり、対応してもらえない場合は、その場からのレッカーを依頼するほかありません。

単純なメカニカルキーであれば、鍵屋さんに出張対応をお願いして、その場で合鍵を作ってもらえる可能性も高まりますが、クルマとは違って、バイクのイモビライザーキーやスマートキーの場合は対応業者も少ないのが実情です。

○イモビライザーキーの複製
基本的にはバイクを購入した販売店で注文します。販売店が鍵を取り寄せてからIDコードの整合等の作業が発生するため、納期に数週間を要することもあります。

○スマートキーの複製
基本的にはバイクを購入した販売店でスマートキーを注文し、IDと車両とのひも付けを行ないます。出張対応をしている鍵屋さんは、クルマ用のスマートキーは各メーカー用を保持していることが多いのですが、バイク用のスマートキーを保持している業者は少ないようです。

3.鍵に関する、よくあるトラブル


鍵を落とした、なくした以外にも鍵に関するトラブルは様々に起こります。基本的な対処法は車両の取扱説明書に書いてありますので、一度読んでおくと安心です。

①トランクなどに閉じ込めてしまった


鍵をシート下トランクなどに置いたまま、うっかりシートを閉めてロックされてしまったという場合なら、鍵屋さんを読んで開けてもらいましょう。特殊な鍵でない限り、すぐにシートを開けてくれるはずです。

ちなみに、自分でシートロックを開けようとシート周りをバラそうとしても、かなり難しいことになります。素直に鍵屋さんを呼んだほうが得策と言えるでしょう。

②鍵が引っかかって回らない時は?


キーシリンダーにゴミが入ったり、キーが摩耗したりといった原因で、鍵穴に鍵を刺しても鍵がひっかかって回らず、ハンドルロックが解除できない、エンジンを始動できないというトラブルも起こります。

この場合、まずは鍵穴専用スプレーを試してみましょう。たいていの場合は、これで鍵が回るようになるはずです。

とにかく、無理やり鍵を回さないでください。バイクの鍵は、意外と簡単に折れてしまうんです。

●デイトナ「鍵穴潤滑パウダースプレー」
鍵がキーシリンダーに引っかかって回らない、抜けない、挿していた鍵が回らなくなったといったトラブル時に鍵穴に吹き付けるタイプの潤滑剤です。白い粉のパウダータイプで摩擦係数が低く、耐熱温度が900℃と高いので熱を持つ部分にも使えます。浸透性と乾燥性に優れており、イグニッションスイッチのほかシートオープナーやU字ロックなどあらゆる鍵に使用できます。1本備えておけば安心です。



■DATA:
価 格:1,153円
容 量:70ml
URL:https://www.daytona.co.jp/products/single-72394-parts

なお、パーツクリーナーや潤滑スプレー、シリコンスプレーといったスプレーは絶対に鍵穴に噴射しないでください。かえって汚れを増やす原因にもなり、鍵穴の症状が悪化します。必ず鍵穴専用スプレーを使用してください。

③バイク貸し借り時のスマートキー

「ちょっとそのバイク乗らせてよ」と、友人からスマートキー採用のバイクを借りて、その場でエンジンを始動。走り出した後に「スマートキーを預かっていない」ことに気づいたなんてケースです。電気信号の範囲内(およそ2mくらい)で一度かけられたエンジンは、スマートキーから離れてもいきなり停止することはありませんが、いったん停止してしまうと、スマートキーを認識するまではエンジンを再始動できなくなります。

④スマートキーの電池切れ


多くのスマートキーには電池残量を示すLEDランプ等がついていますが、中にはそういったものがないキーもあります。ある日突然エンジンがかからない、始動ボタンが反応しないといった場合はスマートキーの電池を交換してみましょう。

なお、大抵のスマートキーにはボタン電池が採用されているので、普段から予備を購入・携帯しておきましょう。中古車の場合は特に注意してください。

また、スマートキーには、緊急用のメカニカルキーがついており、スマートキーの電池切れや車両のバッテリー切れの時でも、エンジンの始動やトランクの開閉などができるようになっています。

4.鍵のトラブルに備えておく


鍵をなくす、落とす(回収できない)といったトラブルは想像以上によくあることです。筆者は以下の点に気を付けています。

①ロングツーリングには予備キーを携帯する

ロングツーリングに出かけるときは、万が一に備えて予備(スペアキー)を携帯します。筆者は道路の側溝の隙間に鍵を落として回収できなくなったことがありましたが、これで事なきを得ました。

②鍵をなくさないためにキーホルダーをつける


鍵は細くて小さいので、落とした時に溝や隙間に落ちやすいです。これを防ぐために大き目のキーホルダーをつけておきます。とにかく、溝に鍵が落ちていかないための工夫です。上写真はヤマハのマリン(船)用の水に浮くキーホルダー(発泡ウレタン製)です。

いかがでしょうか。これを機に、ぜひ鍵に関するトラブル予防について考えてみてください。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。